第2閑話 気になるあの子は嫌われ者

 あたしの名前は星野ほしの 陽華はるか、十六歳。星野技研社長、星野 英介えいすけを父に持ち、俗に言う星野三姉妹の次女であるあたしは現在、自宅のリビングにあるソファーの上で悶々としていた。


「うー……。気になるぅ……」


 この悩みの種は、最近始めたゲームで知り合ったフレンドだった。

 先日、久しぶりにを見かけて近づこうとしたのは良いものの、どうやらは他のプレイヤーとの戦闘中だった為、すぐに話せる状況では無かった。

 の名はカズ。出会いは、あたしが【トラベラーズ・オブ・ギャラクシー】と言うゲームを初めてすぐの事だった。

 突然現れた人型の黒い何かによってもたらされた突然のピンチ。そこに突然現れたのがカズだった。何の脈絡も無く、突然続きの初対面だったカズとの出会いに、あたしはどう受け止めるべきかと悩んだ。

 後日、ゲーム内のカフェで考えを整理しているところに偶然、件の彼がやって来た。

 気持ちの整理はついてなかったけど、どうせなら彼と仲良くしたいと思っていたあたしは、勇気を振り絞って話しかけた。

 そこからはトントン拍子で仲良くなって、今では数少ない気を使わなくても良い仲になった。

 でも何でだろう……。彼の事が凄く気になる。


「うー……」


 先日、カズと戦っていた相手が戦闘後に言った【星喰い】と言う単語、カズの急激な成長、あたしと遊ばなくなった一か月間のうちに何があったのか。

 それだけじゃない。カズの立ち居振る舞いまでもが気になって仕方ない。


「お姉様に聞いても教えてくれないし……」


 あたしの姉、星野 美月みつきは、あたしよりも早くこのゲームを始めていて、割としっかりやり込んでいる。

 そのお姉様に【星喰い】の意味を聞いたけど、知らなくて良いの一点張りで結局、教えてくれなかった。

 だからこうしてクッションに顔をうずめて唸っているのだけど……やっぱり気が晴れない!


「よし! 調べよう!」


 そう思い立ったあたしは、自室へと向かう。

 私用のパソコンを起ち上げて検索エンジンに【ToG 星喰い】と打ち込む。

 結果として出て来た中からToGの攻略サイトを覗いてみるが、【星喰い】のページは白紙にされていた。

 引き続き調べてみると、とある掲示板にて【星喰い】についての書き込みを見つけた。


「星喰いの意味は書かれていないなぁ。でも……」


 その掲示板には、揃って【星喰い】と呼ばれている人たちに対しての誹謗や中傷が書かれていた。


「カズは、悪い人じゃないよね……?」


 彼と過ごした時間はそれほど長くない。でも、その中でも彼がどういう人間か、ある程度は分かっているつもり。

 彼がネットで悪口を叩かれるような存在だとは思えない。


「カズ……大丈夫かなぁ……?」


 この間のカズの逃げるような背中が、不安で、心配で……。でもどうやって声を掛ければ良いかなぁ……。

 何となくさっき開いた攻略サイトに戻って、惑星【アロゥ】についての攻略情報を流し見していると、スッと何かが降りて来た。


「これよ! この手があったわ!」


 思いついた策を実行する為、取り急ぎお姉様の許可を貰いに足を動かす。

 これでもっとカズの事が分かるかもしれない!

 そう思っていたあたしだけど、どうしてカズの事が知りたいのかまでは頭が回っていなかった。



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