第15話 はじめてのおつかい(宇宙規模)

「ド~レミ~ファ~ソ~ラシ~ド~♪」


 大勢のプレイヤーで賑わう町にて、何処か聞き覚えのある歌を口ずさみながら買い物をするプレイヤーが居た。

 友人からの頼みで代わりに買い出しをしているそのプレイヤーは、広場で開かれているフリーマーケットで売りに出されている品物を見定めていた。

 まあ、俺なんですけどね。


「ほう、新品か……。預かった資金を超えちゃうけど……まあ、いっか! あとで請求してやろうっと!」


 販売しているプレイヤーに話しかけ、直接お金と商品とのトレードを行う。


「どうも、ありがとう。……えっと、頼まれてたのはこれで最後かな?」


 ロイから事前に渡された指令書(ゲーム内チャット)を確認し、買い忘れが無いか一つ一つチェックしていく。

 そうして買い忘れが無いのを確認した後、別行動をしているロイとの合流場所へと足を向けた。その直後、先ほどトレードをしたプレイヤーの方角から一際大きな怒声が響いた。

 何事かとそちらを振り向いて見れば、先ほどのプレイヤーに対して、恐らく取引相手であろう複数のプレイヤーたちが食って掛かっていた。


「あぁ? 売り切れ? さっきまであっただろ!」

「売れたんだから、無いに決まってるだろ」

「はぁ? 俺はさっき他のも見て来るから待ってろって言ったよな?」

「何をキレてるんだよ……。買うかどうかも分からないあんたより、今すぐ買ってくれる奴に売るのは当たり前だろ?」

「何だ? てめぇ……。俺に口答えしてんじゃねぇよっ!」


 あー、やだやだ。ああいう自己中心的で横暴な態度の奴とは関わりたくないんだよなぁ。さっさとこの場を去った方が良いな。


「一体、どいつに売ったんだ!」

「あ、あのプレイヤーだよ。頼むから怒鳴らないでくれ……」


 静かに場を去ろうとした俺の背中に、言葉と共に指がさされた。

 嫌な予感はしていたけど……。チッ! 一足遅かったか……。

 心の中で悪態をついていると、後ろから近づいて来た足音がすぐ手前で止まった。それに合わせて俺の心臓が大きく跳ねた。


「おい……」

「なんでしょうか……?」

「さっき買ったやつ、俺に譲ってくれねぇか? 頼むっ!」


 予想外にも、横暴なプレイヤーは俺に対して土下座を行った。てっきり力尽くで奪いに来そうな雰囲気だったが、すんなりと躊躇いもせずに膝を折った。

 余程欲しいんだろうなぁ。でもこれは俺のじゃないし、買った金も俺のじゃない。自分のだったら譲っても良かったんだけど、生憎これはロイのだ。


「無理だ」

「どうか!」

「嫌だ」

「……そうか。よろしい、ならば―――」


 むくりと立ち上がった横暴なプレイヤーは、眉間に皺を寄せる。


「決闘だっ!!」



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