第16話 魔法操りし少女、魔物操りし少年

塔の周りにはすでに魔物が溢れかえっている。


機械のような魔物が殴りかかってきた。

間一髪で避けれたが。


どうやらこの魔物は何かを認識すると馬鹿の一つ覚えのようになんでも殴りかかる仕組みのようだ。

そして、力はあまり強くない、と思う。

まあ塔の耐久性が高すぎるだけかも知れないが。


多分、鉄で出来ているので剣はダメになる。

拳でも骨折する可能性が高いので危ない。



撒いていけるなら別に倒す必要はないが…

何機かいるので流石に大変だろう。


水魔法なら破壊できそうだ。

ただ、結局魔法を使うには女神の助けが必要なので使えるかどうかは別ではあるが。

私は試しに魔法を使ってみる、がやはり駄目だった。


撒いていくルート考え始めたころ、6、7歳くらいの、リリィ様をそのまま幼くしたような容姿の少女に声をかけられた。

声も、夢に出ていらしたリリィ様そのものだ。


、そこをどいて」


私はまだ男装中だ。

仮に私の男装が下手なだけだったとしても、こんなにすぐに見分けられるのは多分、彼女がからだ。


水よ、暴れなさいヒュドール


幼い少女は易々と、習得の難しい水魔法を操りながら言う。


「ここは私にまかせて。お姉さんたちには他にやることがあるんでしょう?大丈夫、私は強いから」


彼女は水魔法を操りつつ慈愛のような、けれどどこか淋しげな笑みを浮かべて言う。

その瞬間、私は確信した。


「ありがとうございます、リ…」


女神リリィ様は悪戯っぽく微笑んで私を制す。


お言葉に甘えて私はそこを女神様に任せることにした。



✳︎ ✳︎ ✳︎



途中、魔物との戦いもあったが私たちは塔の最上階まで上りきった。


奥の小さな部屋から人の気配がする。

そこへ近づいていくと、15歳くらいの…もう少し上でもせいぜい17歳くらいの、あどけなさを残した少年が何やら板のようなものを操作しながら怒った様子でこちらに話しかけてくる。


「ねぇ、あのさ。僕の実験の邪魔しないでくれる?」

「実験…?なんのことかね」

「とぼけないで。折角狂わせたり生み出したりした魔物とかさ、倒してたよね」


実験の邪魔をしたのは悪いが、ならこんなところで危険な実験をするな、というのがこちらの言い分だ。


「すまぬ。だが君はなぜここで実験をしていたのだ?ここは国有地だろう。それに村も近い」


勝手に国有地で実験をする方が悪いと私は思うのだが…いかがなことか。


「君を見てると僕の目が腐っちゃいそうだよ…ワヨ」

「あ?今なんて言った?」


睨みをきかせながら少年は尋ねる。

その姿にもマイペースなボロボロさんは動じない。


「大きい声で言ったつもりだったけどな…まあいいや。ねえ僕?それ、魔物を狂わせて操る電波を流してるワヨネ」


少年はますます苛立ったような顔になる。


「何が言いたいの?」

「まあ落ち着いてワヨ。君のその“実験”は世界を壊すノヨ。そういうの、アタシは良くないと思うのワヨ」

「ふぅん…ならさ、戦って証明すればいいよね。僕とあんた、どっちが正しいのかを」


嫌な予感しかしない。

最初は頭脳派かと思ったが、この少年、実は脳筋のようだ。

このエルデブルク、実は変な人しかいないのかもしれない。




————————————————————



大変なことに気づいてしまったので書き直させていただきました。


リリィが使っているのは水魔法のはずなのに、下書きの段階で炎にしていたため「燃えよ」と言っていたのです……(泣)


余談ですが、一応この塔国有地なので、炎を使うと燃えてしまい、色々とまずいことになる可能性があるため水魔法に変更いたしました。


                byお茅

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