第15話 リヒトヒルズの村にて
ボロボロさん気絶騒動の後、私たちは彼に何事もなかったと分かると、昨日突如現れた地下への階段に行く準備を整え始める。
魔物がいる可能性が高いということで油断してはならない。
「アンベールさん、なんであの状態で寝ようと思ったのよ…」
準備を終えたエステルが苦笑しながら訊く。
「あけぼのを見たくて徹夜してたら眠気が溜まったみたいでね」
「それで、ご覧になれたのですか?」
「あはは…痛いところをつきますね。丁度あけぼのが見れるくらいの時間に睡魔が僕の体を弄んでしまったせいで、結局見れなかったなあ…まあそんな生き方もそれはそれで美しいね」
「起きていた意味って…皆無と言っていいほどね」
アホか!!と思いつつ、私も苦笑する。
✳︎ ✳︎ ✳︎
全員の準備が整い、今はあの階段を延々と上り下りしたり、迷路の様な狭い地下通路を這っていったり、というところだ。
私(恐らく皆んなも)の膝が痛み始めた頃、一筋の光が斜め上から差し込んでくる。
魔物の襲撃も何もなく、無事に最後の階段を上りきったところで村に出た。
ここは広場だろうか。
「おい、坊主。見ねえ顔だな。何しにきた?こんなとこ来たって何もないさ。帰っちまった方が得だぞ」
村人らしき強面の青年に話しかけられた。
「村に魔物が溢れるって話は本当かね」
今の私はボロボロさんと服を交換して男装中なので男性口調だ。
理由は聖女がどうのこうのとかで変な噂が流れると動きにくくなるためである。
「いやまあそうなんだがよオ、坊主は危ないから帰んな」
「塔はどこにある?教えたまえ」
「そうヨ!教えなさいワヨ!」
女装したボロボロさんが不自然な女性口調で後ろから出てくる。
彼の女装は、女性にしては若干ごつめだが、長身の女性と言えばまあ何とか通りそうなのに勿体ない。
「お前さんなあ…悪いこったあ言わねえよ、塔から凶暴化した魔物が出てくんだ。命が惜しけりゃ駄目だ」
「もお、悪い子ネ。アタシそういうの美しくないと思うワヨ? オ・シ・エ・テ♡」
黙っていればただの美人のボロボロさん…いや、今はアンが妖艶な笑みを浮かべながら彼の顎に手を当て、色目を使って頼み込む。
「お…おい…何するんだ…?」
「アタシね、あの塔に子供の頃死に別れた妹の骨が眠ってるのヨ、それでぇ、迎えに行ってあげたくてぇ…お兄さんお願いダワ」
うるうると涙ながらにアンは語る。嘘だろうが。
「アン、それくらいにしたまえ。彼が困ってしまわれているだろう」
「塔は…村の東さ。気イつけろよ。お嬢ちゃん、坊主」
アンの話にやられたのか、彼は渋々ながら塔の場所について教えてくれた。
「ありがとうダワ」
村を見渡しても、強面の彼以外には他に人はいなさそうだ。
「このまま向かうわ!」
「そうですね。お嬢様、アンベール先生と先程の方の…あれこそ美ですわ」
「東…と申しておられたな。行こう」
こうして私たちは塔を目指して歩いて行った。
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