第4話 殿下への拝謁

二人はまだあのやりとりを続けているようだが、とりあえず皇子宮内に入ることはできた。


私が呼ばれた理由はこのエルデブルク皇国の皇太子であるスヴェン殿下が私に会いたがっていらっしゃるかららしい。


「俺はエミリアノ。気づいてたかもしれないけど、ロレンツォの兄だよ。」


いまだに赤面したままのロレンツォ様が私たちに対して会釈する。

そして俯きがちで小さく呟く。


「基本的に調子のいい奴だが、困った時は一応頼りになる筈だ。あと女好きだから騙されるな」

「人聞きの悪い、別に誰でも抱けるってわけじゃないんだけどな」


すかさずつっこむエミリアノ様はどこか愉しげだ。


それと、もう一つ気になっていることがある。

先程からアリシアの様子がおかしいのだ。


「アリシア、さっきからどうかして?」

「お嬢様!?いえ、なんでも…無くはありませんね。あの、お二人って何歳でいらっしゃるのでしょう?」


エミリアノ様が答える。


「俺が26歳でコイツが22歳だけど…」

「年の差…!!最高です…」

「年齢なんて気にして、変わった子だね」


我に返った風のアリシアが答える。


「あ、い、いえ…その…お嬢様よ!お嬢様との年齢差を考えておりました。えっとお嬢様は今年で19歳だから…丁度いいですね」


なんか今、出しに使われたような気がする。


それに地味に年齢を間違っている。

多分自分の年齢を言ってしまったのだろう。


若く見られて嬉しいが正しくは22歳だ。

まぁ23歳を目前に控えてはいるが。


「そっか。あ、着いたよ」


見ると、立派な真紅の扉が目の前にそびえ立つ様にしてあった。


「じゃ、俺はここで。あとは任せるよ、頑張ってね、ろっくん」

「分かった。兄貴は真面目に仕事をしろ」


エミリアノ様は爽やかな笑顔で去っていく。

弟に対する呼び方を変える気はないようだ。

対してロレンツォ様はそれを華麗に無視スルーして扉を叩く。


「殿下、ソフィア嬢をお呼びして参りました」


暫くして中からスヴェン殿下らしき声で入れと聞こえてくる。


深々と敬礼してから中に入っていくロレンツォ様に続き、私とアリシアもカーテシーをしなから扉に入る。



「わざわざ申し訳ないですね、聖女…いや、ソフィア令嬢」

「殿下こそお招き下さりありがとう存じますわ」


殿下に向けてカーテシーをしながら拝謁の許可を頂いたことに対してお礼を言うのが暗黙の了解だ。

たとえ相手の都合で呼ばれたとしても、だ。


「顔を上げよ」

「はい」


正直このしきたりに意味があるのかは不明だ。

面倒くさいだけではないかと私は思う。


「ロレンツォ卿もご苦労でしたね。さて、本題からお話しさせて頂きますと実は聖女の加護が必要な地域がありまして」


もしかしてだが、私にそこに行けと言う為だけに呼び寄せたのか。手紙でもいいはずなのに殿下は親切だ。


「殿下、一つ質問を。まさか女性のソフィア嬢に行かせるつもりなのですか」

「平たく言えばそう言うことになりますね。

まぁ護衛はしっかり付けるつもりですが」

「な…!?殿下、流石に酷すぎる。それにソフィア嬢は再びとは言え聖女の力を得たばかりでは…?」


殿下は困ったように笑いながら嗜めるように言った。


「ロレンツォ卿、君は困っている人がいる中で無視できるのですか?まあ聞いてくれ」


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