第5話 聖女の力の活用法
殿下は戸棚を漁って、何やら面倒くさそうな書類を出してきた。
そしてそれを私に差し出し、その聖女の力の活用法とやらを説明し始めた。
要するに、私はエルデブルクの最果てにあるリヒトヒルズの村に出てくる魔物を浄化もとい掃討しなければならないらしいのだ。
「護衛はロレンツォ卿にやって頂きたく思いますが、如何でしょう?」
軽くため息を吐いてからロレンツォ様は渋々、というように了承した。
「無理な願いを押し付けてしまい申し訳ありませんね、けれど報酬はしっかり用意していますので是非お楽しみに」
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皇子宮を出てから暫く黙っていたロレンツォ様がため息混じりに呟いた。
「また殿下は無理難題を…か弱き女性まで巻き込んで…」
「私は大丈夫よ…ロレンツォ様はよろしくって?」
私に独り言を聞かれていたことに気がついたロレンツォ様は一瞬、驚いたような
「俺の代わりは他にいるから平気だ。だがソフィア嬢まで巻き込むわけには…いや、リヒトヒルズの魔物は凶暴だ。気を付けろ」
「お嬢様は必ず私がお守りします」
二人が来てくれるなら安心だ、多分。
「言い忘れていたが、リヒトヒルズ村の件で俺は一旦ソフィア嬢の護衛になることになった。煮るなり焼くなり好きに使ってくれ」
その期間はロレンツォ様の過ごす場所はどうなるのだろうか。
うちには一応、余っている部屋は幾つかあったはずだ。
綺麗かは別としてだが。
「ロレンツォ様、お宿はどうなさって?」
「宿か…その辺に宿屋でもあるだろう」
「ならうちの屋敷に泊まって下さい、あまり綺麗とは言い難いですが」
流石に護衛をしてもらう身で何も提供しないのはどうかと思う。
宿問題は一先ず安心だ。
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屋敷に着くと、使用人たちとエリゼが待っていた。
「ねぇ、ソフィア姉さん。その人、何?見た目からしてさっきの騎士だけど…」
「そうよ、聖女の力を使わないと行けなくなったから護衛についてもらうことになったの」
「そっか…ねえ、その人とはどういう関係なの?」
しつこい。
エリゼは何故か色恋沙汰になると若干鬱陶しく感じる程に絡んでくる。
乙女か。
「別に、そんな関係ではないから」
私はそれ以前に居心地悪そうな様子のロレンツォ様の部屋を手配せねばならないのに。
「アリシア、今空いている部屋はあって?」
「すぐに確認して参ります。しばしお待ちくださいませ」
アリシアが去っていくと、後ろから声をかけられた。
私は妙に背後を取られることが多いようだ。
振り返ると、すっきりとしたボブヘアの令嬢が手を振っていた。
「ソフィア、お久しぶりね。エルーナちゃんのこと、大変だったでしょう?」
「エステル!?いつからそこに…」
「いつからって、ずーっと前から居たわよ」
エステルは私の親友であり、二つ年上の幼馴染だ。
「なんかいい関係の人ができたって聞いたけど…その美形のお方?お姉さんが略奪しちゃおうかしら」
略奪に関しては冗談で間違いないはずだ。
彼女はいつもノリがいい。
「多分、部屋の空きはもうないわ、私が全部借りておいたもの。二人で同じ部屋を使うといいわ」
「エステル、それって本当?かなりまずいわ、そんな関係ではないもの」
「うふふ、それはどうかしらねえ」
数分後、アリシアが戻って来た。
果たしてロレンツォ様と私の運命はどうなるのだろうか。
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