第26話 ゴブリンとの戦い

「アスちゃん……私も察知しました!」

「どうやら、二体が接近していますね……」


「……」


 リンは目を細めながら、低い口調でアスに向けて言う。

 俺にはまだ視認が出来ていないが、リンやアスは野生の勘が冴えているのだろうか?


 アスは、リンの言葉を聞きながら臨戦態勢に入り、ゴブリン迎撃準備の為に一歩前へ出る!

 アスは真面目な表情で、俺とリンに向けて話し始める。


「スズヤさん、リンさん!」

「ゴブリンが攻撃を仕掛ける仕草を見せましたら、私は遠慮無しに攻撃を仕掛けます!!」


「ですが……私はまだ、連続で魔法を唱える事が出来ません!」

「私が一体を相手しますから、もう一体はスズヤさんがお願いします!!」


「!!」


(俺が一体相手しろか。アス!)

(アスは魔法で気楽だが、こっちは体力勝負だぞ!(汗))


(とは言えんよな……神父から剣を貸して貰った以上。この剣でゴブリンと戦わないと……)


 俺がそんな事を感じていると……俺の目線にも二体のゴブリン姿が見えた!

 魔物のゴブリンは、人間の男性身長ぐらいの高さで有るが、ややマッチョ系の体格をしており、やはりと言うか棍棒を持っている。


 分かりやすく言えば、マッチョチー牛が棍棒を持っている感じだ。

 冗談抜きで、そんな風に見えてしまう!///


 俺もマッチョで有ったなら、前世界ではゴブリン扱いされていたのだろうか!?

 DQNの棍棒バージョンよりは弱そうだけど、相手は人間では無く魔物だからな……


 ゴブリン二体の方も俺たち三人に気付き、魔物らしい声を上げ始める。


「グアァァーー」


「グアァァーー」


『ダッ、ダッ、―――』


「グアァァーー」


 二体のゴブリンが、同時に雄叫びを上げた後。

 一体のゴブリンが躊躇ためらいなくアスに向って、奇声を出しながら襲い掛かりに来た!


「…………」


 アスは女子で有るから、容易に襲えるとゴブリンは判断したのだろう。

 だが、それはアスが、黒魔法使いで無ければの話だ……


 アスは少し怒った表情をしながら、襲い掛かるゴブリンを見つめている?

 だが、ゴブリンがアスと距離に入ると、アスはその表情で右手を広げて、迫り来るゴブリンに向けて魔法を唱える!


「……ブランド!」


「!?」


『シュ、シュ、シュ―――ボン!』


 アスが放った火球魔法『ブランド』にゴブリンは驚き立ち止まるが、その状態で火球はゴブリンに命中する!


「ギャアァァーーー」

「グオォォォーーー」


「ギャ、ギャギャ!?」


 行き成り、火球に包まれたゴブリンを見た、後方に居るゴブリンは理解出来ない表情で喚いている。


「グオォォォーーー」


『ゴロ、ゴロ、―――』


「グオォォォーーー」


『ゴロ、ゴロ、―――』


 火を消そうと、火だるまにされたゴブリンは地面を転げ回っているが、火が消える気配は一向に見せない。

 アスが先日。大型コウモリに放った時の火球より、今回の方が大きく見えた。


(やはり……さっきの丸薬の影響かな?)

(この感じだと冗談抜きで、一発のブランドでゴブリンを倒せそうだな…)


「グアァァーー」


『……ダッ、ダッ、―――』


 後方に居たゴブリンは、仲間をやられた報復をするために、怒りを含ませた表情と雄叫びを上げながらアスに突進してくる!

 アスは連続魔法攻撃が出来ないから、今度は俺の出番だ!


『チャキーン☆』


『ダッ!』


『サッ!』


「…………」


 俺は腰に付けていた、鋼の剣を鞘から抜きだし、ゴブリンに向けて走り始める。

 アスは俺が前に出ると、直ぐに後方へ引き下がる。


 リンは心配した表情で、俺の行方を見守っている。

 突進してくるゴブリンに対し、俺は勇者に為りきった気分で、両手で剣を掴んで走りながら剣を振り上げる!


「うおぉぉーー」

「死ね~~、チー牛ゴブリン!」


『バシュ!』


『…サッ』


 俺は、振り上げた剣をゴブリン目掛けて振り下ろしたが、動きをゴブリンに読まれていて、振り下ろしたタイミングで一歩下がられてしまう///


「グアァァーー」


 ゴブリンは雄叫びを上げながら、俺に向けて棍棒を振り上げる!

 アスから俺に興味を移す事が出来たが、今度は俺がピンチだ!///


『ブン』


『ガツッ!!』


「ぐわあぁぁーーー」


 俺はとっさに剣身ブレイドで棍棒を受け止めるが、チー牛ゴブリンの癖に力強く、俺の両肩に激痛が走る!

 たった一発のゴブリンからの攻撃で、俺の両肩が大破した感じだ。


「ぐうぅぅーーー」


『グサッ!』


 ゴブリンからの攻撃には耐えたが、俺は剣を地面に突き刺してしまう。

 俺は苦痛の表情でゴブリンを見るが、ゴブリンは『この雑魚♪』と言いたそうな表情で見ていた。


(不味いな……ゴブリンの攻撃をもう一発喰らったら、俺の両肩は多分砕けるだろう……)

(その前に力負けして、どっち道死ぬか……)


「グアァァーー」


 ゴブリンが得意気の表情で、再度棍棒を振り上げた時……


『シュ、シュ、シュ―――ボン!』


「ギャアァァーーー」

「グオォォォーーー」


『~~~(汗)』


 アスの魔力が回復して、アスは再度『ブランド』を唱えて、もう一体のゴブリンを火球で焼き始めた。

 俺は剣を地面に突き刺したまま、その場から慌てて逃げ出す。


『ダッ、ダッ、―――///』


「~~~///」


 それと同時に、リンが血相を変えて俺の元に飛んで来た。

 俺の初陣はボロボロで有った……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る