第25話 異世界で組む、初パーティ

「シスター!」

わたくしは剣を取ってきますから、シスターは丸薬がんやくを用意して、スズヤたちに飲ませてください!」


「はっ、はい。分かりました(汗)」

「神父(汗)」


 神父は、気迫の迫った表情でシスターに言い終えると、祭壇奥に向かって行く。

 シスターは焦った表情で返事をして、祭壇の方に向う。


「……///」


「…………(泣)」


「…………」


 子どもたちの方は、ゴブリンが市街地に侵入した事で、全員が意気消沈していた。

 その中で、一人の女子が声を上げ始める。


「みんな。そんな顔をするんじゃ無いよ!」

「先生たちが、僕たちを守ってくれるんだから!!」


(あの子……女子の癖に、僕と言ったな……異世界にも僕っ子が居るんだ!)


 僕っ子と言った子は、茶髪の天然パーマが少し掛かった女子だ。

 髪の長さはセミロングヘアーぐらいだ。


 その僕っ子は、ピンク色のカーデガンを着ている。

 背丈から見れば、アスと同年代か?


「だよね、メルコお姉ちゃん!」

「だって僕たちには、神父や先生たちが付いているもんね!♪」


「そうだよ!」

「僕たちには、先生たちが居る!♪」


 一人の男子がメルコに呼応する!

 その後。メルコは笑顔で男子に言う。


(僕っ子は……メルコと言うのか)

(元気で可愛い子だ!)


「スズヤ、リン、アス。祭壇に来てください!」


 シスターが祭壇の方から、表情は真面目だが強めの口調で呼ぶ。

 俺たち三人は祭壇にいる、シスターの方に向う。


 俺たち三人が祭壇に着くと、シスターは難しい表情をしながら、俺たち三人に向けて話し始める。


「スズヤ、リン、アス……あなたたちは今から、ゴブリンの征伐に出て貰います!」

「ですが、相手はかなり厄介な魔物です…」


「ですので、今から丸薬を授けます!」

「門外不出の秘薬です!!」


「一時的ですが、この丸薬を飲めば、リンとアスは魔力が上がり、スズヤは筋力(力)が上がります!」

「アスはブランド一発でゴブリンを焼き、リンのスイスイも粉砕骨折にも対応でき、スズヤも剣を、斧を振るう様に軽々扱えるでしょう!」


(粉砕骨折って……ゴブリンはそんなに強いのかよ!///)


 シスターは言葉を終えると、それぞれに丸薬を手渡す。

 リンとアスのは黒い丸薬で有り、俺のは黄色い丸薬で有った。


 それぞれがシスターが手渡した、丸薬を飲み始める。


「~~~///」


「~~~///」


 リンとアスが飲んだ丸薬は、苦い丸薬だったらしく顔を顰めている。

 でも、俺が飲んだ丸薬は苦くはなくて……少しレモンっぽい味がした。


 三人が丸薬を飲み終えたタイミングで、剣を持った神父が祭壇に戻って来て、俺に剣を手渡しながら、真剣な表情で話し始める。


「スズヤ。はがねの剣です!」

「メルメーサ王国では本来、兵士しか持てない剣です!!」


「この剣を、一時的にスズヤへ貸与します!」

「万が一。ゴブリンが攻撃してきた場合は、これでゴブリンを断ち切ってください!」


「……」


 神父の言葉の後。神父は鞘に収められた、鋼の剣を俺に差し出す。

 俺は無言で、鋼の剣を受け取る。


『ありがとうございます』とは、言えないからな……


(鋼の剣。思っていたより、軽いな……餅をつくきねよりかは軽い!)

(だが、俺はこれでゴブリンを、切る事が出来るのだろうか……)


 ……


 出撃前に、神父からお祈りの言葉を貰う。

 RPGの世界でも良く見るシーンだ。

 

「―――、神のご加護があらんことを」

「スズヤ、リン、アス。無事を祈ります……」


「……」


「……」


「……」


 俺たち三人は神妙な表情で有った。


「スズヤ先生。頑張って!」


「アス先生。絶対魔物を退治してね!」


「リン先生! 怪我はしないでね!」


「~~~」


「~~~」


「~~~」


 俺たち三人は、子どもたちに見送られながら礼拝堂から出るが、三人とも作り笑顔で手を振りながら出る。

 俺を含め、リンやアスだって、望んでゴブリン退治をしに行くのでは無いから……


『バタン!』


 屋外に出ると……人気は全く無い。

 王国民たちは、家などに避難しているのだろう。


『~~~』


『~~~』


 だが、遠くの方(P4ゲート方面)から……魔物の声と、人が喚く声が聞こえて来る。

 ゴブリンの群れと、王国軍の迎撃隊が交戦しているのだろう。


 声だけでは戦況が分からないが、どちらかが一方的に勝っている感じはしない?

 リンが目を細めながら、俺に話し掛けてくる。


「スズヤさん」

「どう動きます?」


「取り敢えず……裏手に行こうか」

「神父の言葉通りなら、ゴブリンはから現われると思うから…!」


「……」


『コクリ』


 俺は澄ました表情でリンに話す。

 アスは無言で頷く。


 俺が先頭、アスが真ん中、リンが後ろの縦一列で、教会正面から裏手に移動する。

 雰囲気だけで言えば、完全ゲームの世界だ。


 だが、武器を持っているのは俺だけで有って、後の二人は魔法が使えるが武器は持っていない。

 だが、リンの場合は攻撃魔法が無いので、非戦闘員となんら変わらない。


「……!」


 教会裏手に回ると……アスが行き成り、養護施設方向に目を向ける。

 養護施設建屋。正面左側開けており、普段は子どもたちの遊び場と成っている。


「……来ましたね!」

「神父の読み通りです!!」


 アスは目を細め、遊び場方向を注視しながら、低い口調で一人しゃべりをする。

 俺もアスの方向に目線を移すが……俺には何も見えない?


「!」


 だが、リンも何かの気配に気付き、低い口調で言い始めた!

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