予兆

 そもそも予兆はあったのです。


 私は高齢の両親と同居していますが、他にもれず、持病じびょう既往症きおうしょうなければ年寄りのほうが元気です!


 父はコロナ禍の最中に軽度の胃がんの手術受けたのに。

 当時、今でも? お見舞いなんていけないときでした。

 それでも5類移行前、コロナ禍が収まったころから外に出まくっています。

 老人会など活動しまくり。


 元気なのはいいんですけど。


 心配はありました。

 どこへでもマスクしていくような人たちも、手を洗うことがおろそかになりがちなど、意識がどこへ向いているのか分からない。コロナ禍真っ最中から。


 12月。

 コロナ禍で延び延びになっていた旅行へ、やっとと。

 それは私も送り出したものですけど。

 一泊二日程度なら、2022年あたりからよく行っていました。

 老人会にもコロナにかかった人はいないようでしたから。

 今度は長い旅行でも大丈夫だろうと。


 と・こ・ろ・が。


 帰ってきたら、コホコホコホコホ激しく咳ですわ……。


 熱はなく、元気なものなので、私もすっかりコロナへの警戒は薄れていました。


 どちらにしても無遠慮に咳をされるのはいい気分ではありません。

 医者に行けといっても、めんどくさがって大丈夫と行かない。

 強く、何度も、毎日のように、言っていたんですけど。

 そのくせ下も向かず、口もおおわず、家の中での咳は激しく。

 そのたび顔をしかめて危機感あおっていたんですけど。


 全く聞きません。


 どこでも年寄りって、そんなものかもしれませんけど。


 私は感染予防に努めていました。

 高齢の両親がかかると大変と思えばこそ。


 ワクチンの副反応、かなり強く出ます。毎回それに苦しむがゆえに「絶対その後しばらく何も出来ない」ことを前提に接種の予定を組まなければいけないほど。それでも出来る限り接種欠かさなかったのは、自分のため、両親のため。


 両親も、ワクチン接種開始のかなり早い時期に予約取れて、そこからさて、もう何回目になるのかというほど、打っていました。


 それはそれで、役に立ったでしょう。

 これは間違いない。


 ワクチンあり、コロナにかかる(かかった)人も多くなり、自然抗体も出来ているはず。抗体をすり抜ける変種が出ているといっても、そろそろ人間もそれに耐えうるようになっている、はず。


 それならば、一度はかかっておいたほうがいいかもしれない。


 ちらっとは思っていましたよ。

 どこか気楽に。


 でも、実際に……。

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