素っ裸で生きていた昔の事を想像するのも、嫌いじゃねえ。

お日様が、人を黄金色のツバで染めていた昔の事を。

その頃の人は敏捷で、

ウソなんかつかねぇで、くったくなく、遊んで暮らしていた。

ニコニコ顔のお天道様は、人の背骨を撫ぜ撫ぜ。

こうして人は、ノー天気に鍛えられた。

大地は、あり余るほどの果実でみちて、

人を、やっかいとも、面倒とも思わなかった。

誰彼なく優しい、母オオカミの気分で、

褐色の乳房から、ミルクをビューって絞り出していた。

男は凛々しく、強くたくましく、

自分を王様とたたえる美女に、鼻高々。

女は女で、初心ななりして、

その引き締まった肌に、男が歯をたてるのを待っていた。―思っただけでセンズリこきてぇ。


だがようぉ、空想センズリだけじゃあ物足りねぇ、今の詩人が、

ストリップ小屋、エロ映画館、のぞき部屋、おっ! 出歯亀になるってかぁ!

まあいいさ、裸が見られるところに行ってもよぉ。

チンポ握って、覗いても、何だかつまんねぇ、ってよぉ

目の前のエロは、詩人のオツムにゃあ、ピンとこねぇって、

服を返してよ、と泣く女の、

ツラにふさわしいその身体は、 

だらしのねぇねぇ肌、瘦せっぽち、デブ、これが可笑しいのなんの、勃つものも勃ちゃしねぇ……。

常識を大事にする神様は、勘違いもいいとこで、

「可愛い我が子よ」と、男にブロンズのベビー服を着せ、ますますみっともなくさせる。

女は女で、蝋燭のように青白くなって、

ヤリマンの本性を隠す。っでだ、処女は、

DNAのプログラムに逆らわず、やっぱりヤルことをやらなきゃ気が済まなくなる。


だがよぉ、なにも昔がよかったって、言いてえ訳じゃねぇ。

今のオレらにも、昔の人間が知らねえいいところもある。

たとえばメンタルがいかれたヤツの、屈折した表情は、

疲れ果てた『美』そのものものだ。

メンタルのいかれたヤツが、

あれをヤリてぇーと思った時、

イカレタ『美』は、案外輝いたりするんだ。

とにかく、メンタルがイッてしまっているから、純情だ。十歳は若返ってみえる。

賢そうな額、清流の眼差し、何しろ、イッてしまっているからなぁ。

心、ここになし。ヤクでガンギメしたみてぇに、

晴れ渡った空の下、鳥の歌、花の香り、

そんなもの、どこにもねぇのに、耳に鼻に届いてうっとり顔。―金玉のシワがキュッとするぜ。

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