第13話 イフリート、貧乳、強いと思う


ギシッ。

ギシッ。


レイが帰ってきたのか床の軋む音で俺は廊下のほうを見た。


「ふたりして、どうして息荒いんですか?」


俺は答えた。


「あー、いや、なんでもない。それよりおかえり」


俺はマナに話しかけた。


するとマナはプラカードを取り出してきた。


【準備はできましたか?この先戻ってくることは出来ません。強敵が現れます】

→はい ・いいえ


※はいなら左を、いいえなら右をパイタッチしてください



(まじでゲームみたいな世界だなぁ)


俺は左をパイタッチした。


家を出てさっそくレイに乗ってヒンヌ火山に向かうことにした。


「今日はなんだかいつもより力が出る気がする♪♪」


レイは上機嫌ぽい。


ふとマナを見ると頭上にこんなウィンドウが出てた。



【ヒンヌの王が発動中】

効果:味方(貧乳)のステータスをアップ。

味方(巨乳)の獲得経験値ダウン。



(なるほど。貧乳パを組む時に使えってことか)


強いのかよく分からんスキルだなぁとか思ってたら。


「グオオォォォォォォォォォォォ!!!!!」


火山の方から声が聞こえた。


(火口の中からか?)


シュルルルルルルル。


ヌッ。


火口から魔神みたいなのが体を回転させながら姿を現した。

上半身だけ見えてる。


「ここを通りたければこの私、魔神を倒してみよっ!」


説明ありがとうっ!


「マナ。あの魔神を倒せば進めるらしいぞ」

「えぇ」


会話してると魔神が動き出す。


「私の攻撃手段は遠距離攻撃だぞ!ふん!【ファイアアロー】」


右手で火の矢を作り出すと俺たちに向けて投げてくる。

魔神が口を開く。


「危ないですよぉ!左に避けてください」

「はい!」


レイが魔神の言った通り左に避ける。


「中々いい動きをしますね。それではこれはどうですか?!」


2本の手両方に火の矢を作り出した魔神。


「【クロスアロー】」


ビュッ。


2本の矢は俺たちに向かって交差するように投げられた。


「それは動かなければ当たりませんよ!」

「はい!」


敵なのか味方なのかよく分からんなあの魔神。


「くっ!やりますね。この私の矢を避けるなんて」


俺はマナを見た。


「あの魔神なんなんだ?」

「親切なだけでしょう。敵にも良い奴と悪いやつくらいいますよ」


え?!その程度の反応?!


俺は前世でゲームやってたから分かるけどあんな親切なボスキャラいなかったけどなぁ。


「ではこういうのはどうです?」


魔神の背後に視界を埋めるくらいの矢が現れた。


「どこに逃げても当たると思います。頑張って避けてくださいね」


ビュッ!


いっせいに飛んできた。


(避けようがないな。これ)


俺は目の前に正拳突きを放った。


「筋肉魔法!ウィンド!」


風圧によって矢の動きが変わっていく。


それだけじゃ留まらなかった。


「くぅ!なんていい風だ!ぐあっ!諸君!さらばだ!私はもう現れることは無いぞ!はっはっは!」


火口から空の彼方へ魔神が吹き飛んでいった。


めちゃくちゃ爽やかな魔神である。


「ふぅ」


一件落着。



「よし、火口へ行こう」

「はぁい」


レイが火口に向かって降りていく。


マグマがそこかしこでプツプツと盛れているようだった。


そして、ところどころピュッとマグマが吹き出している。


「当たんなきゃいいけどなぁ、あのマグマ」

「そんな都合よく当たるわけないよぉ」


マナがそう言った時。


ピュッ!

彼女の足元からマグマが吹きでた。


「くっ!」


マナの反射神経が良かったお陰で当たらなかった。


しかし、本当にギリギリの回避。


「あぶない。紙一重のところで避けれた」


マナが話しかけてきた。


「イフリくん、やっぱ貧乳って強くない?今の私のおっぱいがBカップなら確実に当たってた」


俺は頷いた。


「インラーンたちじゃ当たってたな今の。おっぱいがでかいせいで。貧乳最強っ!」

「ひんにゅーさいきょー!」


俺たちは貧乳の強さを語り合いながらそのまま移動する。



俺たちは穴の方に近づいた。

ダンジョンの入口である。


「ここからダンジョンが始まります。準備はしておいて下さいね。何日かかるか分かりませんから」


マナがプラカードを取りだした。


【準備は出来ましたか?この先強敵が出現したりしなかったりします】

→はい ・いいえ


「準備たってどこでしたらいいわけ?こんな火口じゃなんもなくない?」


そう聞くと肩をトントンと叩かれた。


振り返るとそこにはメイド服の女がいた。


キゾーク邸で俺の世話をしていたメイドだ。


「いい物が揃ってます」


バサァッ。

スカートをたくしあげるとそこには武器とか食料とかがあった。


(うわっ。ゲームで見たことあるわこういうの)


「What do you want?(何が欲しいですか?)」


「あのさ」

「はい?」

「なんでパンツ履いてないの?」

「1着しかありませんから」

「先に言ってくれよ?!いや、ごめんね、返さなくて。流石に持ってると思っててさ」


そう言いながらパンツを返した。


「なんで穴が空いてるのですか?」


そう言うと恥ずかしがっていた。


「ま、まさか穴が空く程まで激しく使ってくれたのでしょうか?」

「銃で撃たれたんだよ」


聞いてるのか聞いてないのか分からないような表情で彼女は続けた。


「それより必要なものをどうぞ。全て無料でお買い求めいただけます」


「とは言われてもなぁ」


そう言うと彼女はスカートの中のひとつの物を指さしてた。


「私はこれがキーアイテムになると思います」


メイド服を指さしてた。


(どこで使うん?それ。メイドジョーク?)


いや。待て。

この子はキーアイテムを普通にこの前も俺にくれたからな。


「分かった。君を信じよう」


【メイド服を手に入れた】


俺はその後メイドに言った。


「気をつけて帰るんだよ」


そして俺はマナの左をパイタッチした。

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