第2話 フェリー
伊勢には新幹線、電車、タクシー、フェリーで行く。
3時間以上の時間をかけて伊良湖に着く。
フェリーに近い恋路ヶ浜のレストランで昼食を食べる事にした。
そこで定食屋に入る。
灯台茶屋定食と焼き大アサリを注文した。
定食は産地の物を使っている。
旬の刺身とデザートにはメロンだった。
海でとれたての魚で新鮮。
メロンもとても甘い。
大アサリは手の平くらいの大きさで身がプリプリとしている。
「中島ちゃん♪ 中島ちゃん♪ 食べきれないなら私がデザート食べてあげるよ。んー美味しい」
「仕事をしない楓先生にはメロンはあげません」
「中島ちゃん今日は旅行なんだ仕事は休みだよ」
「日頃から仕事をしてない人が今日は休みとか言える口ですか?」
「中島ちゃん! この旅行は小説のネタに役立つと思わないかい? 好きな事して!好きな物を食べて! ちょっと男子とイチャイチャして! 好きな小説と漫画を読みながら寿命を終える! 人生ってこうあるべき!」
「小説の話はどこいった?」
たっぷり食べた楓たちはタクシーでフェリー乗り場に到着した。
駐車場に降りてみるとフェリーに向かってたくさん車がならんでいる。
フェリーは車ごと運べるので車を乗せる乗客も多い。
たまたま車の列の最後に赤い車が見えた。
車には年配の夫婦が乗っていた。
旦那さんはマスクをしていて服装は釣りをする恰好だ。
奥さんはサングラスをかけているが釣りの恰好ではなかった。
別々に行動するのだろうか。
伊勢の楽しみ方は人それぞれだ。
楓たちはフェリーのチケットを買い。
13時40分のフェリーに乗る。
それから時間になりフェリーに乗り込み。
フェリーが動き出す。
フェリーは1時間で三重県に着く予定。
楓たちはすぐにデッキに出た。
「中島ちゃんこのフェリー、映画のように沈まないといいけど……」
「 今夏ですよ……嵐もきてないし。ここの海には氷山もありません」
中島は真顔で楓をじっと見る。
「何? 私って今、本気で頭の悪い奴の認定されてます?」
中島は少し笑い海を見た。
その時先ほど見た年配の夫婦もデッキに出てきた。
サングラスをかけた奥さんが凄く気分がわるそうだ。
旦那さんは外に出てもマスクをつけている。
旦那さんは左肩にクーラーBOXの紐を掛けて左手はその紐をしっかり掴んでいた。
奥さんはデッキのベンチに座る。旦那さんも隣に座る。
奥さんが頭に手を当てながら痛そうに言う。
「もう頭が痛い……きっと船酔いだわ。だから船は嫌だったのよ!」
旦那さんが困った様子で言う。
「たまにはいいと思ったけどダメだったかぁ。袋を持ってきたから吐きそうなら使え」
そんな会話が聞こえてきた。
フェリーの揺れが小さくても船酔いをする人はいる。
しばらくして中島が楓に声をかけた。
「暑いので楓先生そろそろ中に入りましょう」
「風があっても夏は暑いね! そうしよう」
エアコンがきいた室内に入り空いている席を探して座る。
しばらくして外が騒がしくなった。
どうやら、あの奥さんが倒れてしまったようだ。
ただ船酔いで倒れたにしても様子がおかしい。
奥さんの意識がまったくない。
船のスタッフが脈をとり、胸に耳をあてたが心音が聞こえていないようだ。
スタッフが急いで、奥さんの口に異物がないか確認して人工呼吸をする。
更に心臓マッサージをした。
奥さんの意識は戻らない。
スタッフが旦那さんに質問する。
「奥さんは心臓のご病気か何かありますか?」
動揺しながら旦那さんは答えた。
「いえ何もありません!」
スタッフが命の危険を感じて指示をする。
「意識が戻らないのでAEDを使います。旦那さんは奥さんが意識が戻るかもしれないので声がけを続けて下さい。」
意識を失った奥さんを旦那さんが何度も声をかける。
「おい! しっかりしろ!」
スタッフがAEDを持ってきてすぐにAEDの案内に従い電気ショックをあたえる。
しかし奥さんの意識はもどらない。
まだフェリーは陸には到着しない。
他のスタッフが救急車を手配したが間に合わないとの判断でドクターヘリが向かっているようだ。
スタッフが人工呼吸と心臓マッサージを続けた。
それからドクターヘリが到着し奥さんは運ばれて行った。
中島は不安な顔で言う。
「 あの人助かるといいですが……あれ?楓先生?」
いつの間か楓がいない。
楓はデッキにいた。
中島は不思議そうな顔で声をかける。
「楓先生? どうかしましたか? 気分でも悪いですか?」
「まんまとやられたね!」
「楓先生何の話ですか?」
「私はあの旦那さんは奥さんを殺そうとした」
中島は突然の話しで驚く。
「え!? どう言う事ですか?」
「奥さんは乗ってから、すぐに頭が痛いっと訴えていた。早い船酔いをする人もいるが……旦那さんの仕業だよ」
中島は首を傾げながら楓に質問する。
「毒か何か飲まされたとか?」
「いいや……あのクーラーBOXの中さ」
中島は何がなんだか分からない顔をして言った。
「クーラーBOX?」
楓は真剣な顔で中島に聞く。
「中島ちゃんはクーラーBOXに何を入れて使う?」
「保冷剤や氷とかドライアイスですか?」
楓が頷きながら言う。
「そうドライアイスだよ! ドライアイスによる二酸化炭素の発生で二酸化炭素中毒になった可能性がある。」
中島は疑問を口にする。
「でもデッキでは換気がされますよ!」
楓はニヤリとして答えた。
「中島ちゃん袋があるじゃないか」
「え!? まさか吐かせる時に渡した袋にドライアイスを入れていた!」
「中島ちゃんそうだよ!」
中島は首を傾げて更なる疑問を言う。
「でもドライアイスが溶けていたら煙が出て気づきますよ?」
楓は答えた。
「頭痛も酷くて目眩もあった。更に奥さんはサングラスをしてたから気づかなかったみたいだね」
中島は不思議そうな顔で言う。
「それでも二酸化炭素中毒になるものですか?」
楓は人差し指を立てながら中島に想像を伝えた。
「私の想像だがフェリーを待つ間も車の中でドライアイスを出しておき奥さんを車内で待たせて自分は散歩をするとか言って車を出て、奥さんに少しでも二酸化炭素を吸わせたかもしれない。あとは船で袋で……なんなら飲み物はどれがいいとか聞いてクーラーBOXに顔を近づけさせたかも」
「確かに何度も吸わせればいけるかも……殺人なら警察に教えないと! あと証拠のクーラーBOXはどこですか?」
楓が残念そうな顔をして言う。
「残念だけど証拠は消えたようだ……今クーラーBOXは外に置いてあって蓋が空いてた……ドライアイスが溶けたのか……騒動の最中に海に捨てたのか?」
「でも楓先生! 早く警察に言いましょう!」
楓は中島の肩にポンッと手を乗せて言う。
「大丈夫! スタッフとドクターヘリの人に事件の可能性と二酸化炭素中毒かもって伝えたよ!」
中島は目は尊敬の目で輝きながら言う。
「いつの間に……探偵みたいですね!」
楓はかっこいい顔をして答えた。
「いやいや中島ちゃん私は探偵ではなく小説家ですよ」
中島は真面目な顔になり黒い目で見ながら言う。
「それなら仕事して下さい」
「中島ちゃんは私を地獄に落としたいのかな?」
後日あの旦那さんは逮捕された。
奥さんの命は無事だったようだ。
そして佐藤楓は小説家だが、また仕事をサボっている。
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