佐藤楓は探偵ではない?

みづほ

第1話 佐藤楓です

佐藤楓は小説家である。

しかし彼女は小説をなかなか書かない。

今日も担当の中島奈美から小説の事で電話があるだろう。

スマホから着信音が鳴る。


「もしもし楓先生原稿の話ですが……」


「中島ちゃんこれはもう絶対に旅行だよね!」


「 楓先生? 何の話ですか?」


「昼寝をしていたら海が見えて波の音が心地よく聞こえて……もう旅行に行くしかないよね!」


「旅行……それより楓先生原稿は……」


「ああー荷造りしてこれから旅行に行くから、また後でね」


「今原稿出して頂けますよね?」


「あ〜ん〜……」


「その返事は出しますと受け取って大丈夫ですか!?」


「中島ちゃん怒ると血圧上がるよー」


「楓先生が原因なんですけど!」


「中島ちゃん! 私も頑張ってるのにひどい!」


「すみません失言でした……なんて言えませんよ! 様子を見に行くと絶対に最新ゲームをクリアしてますよね? 仕事に時間を費やして下さい!」


「 私の自由時間まで奪うの鬼担当!」


「鬼担当にしたてあげないで下さい! 今からそっちに行きますので逃げれませんよ!」


中島が電話を切る。

しかし楓は荷造りをして急いで新幹線に乗り込む。

席に座ろうとしたら後ろから誰かに肩をつかまれた。

楓が振り返ると肩をつかんでいるのは中島だった。

捕まったのに楓は涼しい顔をしている。


「早かったね! 何でここが分かったの? まさか私にGPSでも付いてるのかい?」


「はい! そのまさかです。先生にはGPSをこっそり付けています!」


「わぁーこの担当さらりと怖い事言ったよ」


「私が鬼担当になった過程は先生の責任ですよ」


「まぁまぁ落ち着きたまえ! 立ち話しをしないで座って話そうではないか」


楓は席に座り窓を見る。

ついつい中島も席に座る。

新幹線は発車していた。


「楓先生……私、明日も会社です」


「そうか、勤めてる人間は大変だね」


「 大変にしてるのは先生です!」


「まあ慌てる事はないよ中島ちゃん! 会社に勤めてる人には有給休暇ってのがあるんだよ!」


「こんな有休の取り方は間違ってます!」


中島は急いで会社に電話をして説明した。

しかし何故か有休が取れてしまった。


「楓先生に同行しろっておかしいでしょ!」


「中島ちゃん、パワハラで訴えるのなら証言するよ」


「楓先生のパワハラをですか?」


「 君は怖いね……」


「はあ……私の大切な有休が……」


「素晴らしい有休にしてあげるよ!」


「行き先は何処ですか?」


「伊勢神宮だ」


中島は目を大きくして驚く。


「 伊勢!! 何で伊勢なんですか?」


「神様が私を呼んでいる!」


中島は頭を抱えた。


「楓先生を病院送りにしたいです」


「 中島ちゃん私は健康だ!」


中島は、お前の頭はおかしいと言いたいが疲れたので言うのを諦めた。

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