第四十六話 この指とーまれっ2

~って呼んでたから行ったのに目の前で締め切られた。

ど、どういうことだっ! バグかっ? バグだと言ってっ⁉~


 全く、失礼が過ぎるわっ。

それにしてもウルフィー。まさかこんなに人気だったのは。

まぁ、二世だもんな。有名人だもんな。


 …………絵本狂のくせに。


《チュッ》

「負け惜しみは見苦しいぞ」


 ち、違うしィ? そんなんじゃないしィ?


 ――って、あれ? あれあれあれ?


《チュン?》

「なんだよ?

つーかさっさと起き上がれよ。いつまで寝転がってるつもりだ」


 いやそれがさ。寝転がってるからこそ見える景色もあったんだよ。

ほらあれ。


 あそこの緑色のやたら細い足――じゃなくて竹。

あれはっ、あのちょっと古びた竹はっ!

あのコーヒーでも溢したのか茶色いシミが微かに残っている竹はっ!

どう見てもっ!


カジリーじゃあないですかっ‼


 いやぁー、私ってばなんてラッキーガール!

このままズリズリ行こうかしら?


ワサワサ。


《チュンチュン》

「やめろやめろ。つーかここにあんま時間かけんなよ。

新たなバグキャラの登場の方がよっぽど新鮮だろ」


 ぐぐっ……まぁ確かにそうだけどさ。

いつも通りの私の暴走を見たい人もいるかもよー?


 …………ていうか悪ドリ。

いつからお茶の間の皆さんを気にするようになったんだい?


《…………チュン?》


 出たっ!

都合が悪くなるとすぐアホ鳥になるっ‼

悪ドリ、そういうとこあるよねぇー。


《チュチュッ》

「いいからさっさと立てよっ」


「え、ちょっ、待っ――」


 悪ドリがくちばしで服を引っ張ってくる中。

私は見てしまった。


 竹馬の周りにはすでに、足が七本あることを。


 あーあ。なーんだ、あの様子じゃもう組んでるのかぁー。

カジリーのくせにぃー…………


…………え、七本? 七本って…………




 う、うん。

見なかったことにしよう。


        LOADING・・・




 それからも、辺りを右往左往するも誰にも声を掛けられない。

何故か、みんな目を逸らすんだよ。

私がかわい過ぎるあまりに。


《チュッ》

「さっきまでの奇行を見てたからだろ」


 私が? いつどこで奇行をしたって言うんだよ?


《チュンッ》

「吹き飛ばされた挙句、

そのままの体制で節足動物みたいにうごめいてたところだよ」


 誰が節足動物だよっ⁉ 手足は全部で四本しかありませんんー。


《チュ》

「動きの話だろ。

さっきの動き、明らかにワサワサって効果音が付いてただろ」


 そんなの聞こえてませんー。


《チュン》

「それに加えて徹夜だから目がバッキバキ。

ワサワサのバッキバキって、もはや虫じゃねェか」


 む、虫だとォォォォっ⁉

こんなにかわいい私を捕まえてお前っ、虫だとォォォォ⁉


 …………ああ、分かった。じゃあ私、蜘蛛になる。


《チュー》

「ヘェー」


 蜘蛛になって糸の罠、作る。


 んで、糸も見えてないおバカ鳥の悪ドリを引っかける。


 んで、バリボリ食う。


《チュッ》

「俺が引っかかるわけねェだろ。

逆にお前、蜘蛛のくせに蜘蛛の巣に引っ掛かりそうだぜ」


 私はどんだけバカなんだよ。


《チュ》

「バカだろ」


 バ、バカって言う方がバカなんだぞっ!


《チュン》

「んな幼稚なこと言ってっと、バカにプラスでクソもつけんぞ」


 なんでだよっ! 幼稚とクソのどこに接点があるんだよっ!

い、いや無いとも言い切れないけどっ……

少なくても私には無いぞっ!


《チュンッ》

「つーか、マジでなんとかしねェとガチで余るぞ」


 わ、わかってるしィ。

んじゃあ、さっきの私が見えてなさそうな場所にでも行こ――――


《はいはーい! みなさーんっ‼

そろそろ組み終わりましたかぁー‼》


 あ。


《 《 《はーーーーーいっ‼》 》 》


 ま、マズイ。これは、マズ過ぎるぞっ。

ぼっちになるっ。ぼっちになってしまうっ。

そんなの号泣案件だっ。


《あ》


 あ。カジリーと目が合った。


《…………》


 めちゃくちゃ憐れんでるよ。

憐みの目の権化みたいな目でこっち見てるよ。


 み、見ないでェェェええっ‼

これ以上見るならその竹馬っ、真っ二つに割っちゃうぞっ‼

もしかしたら姫が出てくるかもっ‼ 私を月へ連れてってくれェーッ‼

いや、割と真面目に。


《すみませーんっ‼》


《お? どうかしましたかっ?》


《まだ組めてない方がちらほらいらっしゃるみたいですっ》


 か、カジリー……お前っ…………


余計なことを言うなァァァァァ‼

見られちゃってるじゃん! 注目されちゃってるじゃん‼

憐みの目の総攻撃じゃんん‼


こんな目立ち方はいやなんですけどォォォォ‼


《あらら、そうでしたかっ。

それではっ、まだ組めていない方たちは前の方に来てくださーいっ‼》


 どんな罰ゲームだよっ⁉

仲間に入れなかったぼっちの気持ち、考えたことあんのかっ‼

いいやないだろっ‼

アナウンサーなんてどいつもこいつもキラキラな青春を送ってたんだろっ‼


《チュンッ》

「ド偏見だな、おい」


 ああァァァァァ…………

嘘だ。嘘だと言ってくれよォォ…………


私が?

この私がっ?

余りものっ?


 嘘だァァァァ……嘘過ぎだァァァァ……



トボトボトボボン。



 はいっ。

こうして前まで来ましたのは、私を合わせて…………




ピッタリ四人だ。




第四十六話 この指とーまれっ2

~って呼んでたから行ったのに目の前で締め切られた。

ど、どういうことだっ! バグかっ? バグだと言ってっ⁉~ END・・・

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