第四十五話 この指とーまれっ1

~って、言っても誰もとまらなかったら……

バグなんかよりも怖いのは、生身の人間だ。そうなんだろっ!~


《それではこれより、試験の概要は

アナウ・ンサー様よりご説明していただきます》


ウホンッ。


 ウホついたアナウンサーは

椅子から勢いよく立ち上がって大きく息を吸いましたとさ。


《では早速、説明致しましょうっ!》


ボワンッ。


 はいっ、扉が現われましたね。


ボワンッ。ボワンッ。ボワボワボワボワボワボワンッ。


 うわぁー……

ボワボワ音が間に合わなくてバグり始めてるよ。

そして扉。いつも通り、どこへでもいけそうな普通の扉ですねぇー。


《これから皆さんには、4人1組となって

試験に挑んでいただきますっ!》


「げっ、マジか」


 4人1組って…………

まだ見ぬバグキャラとの出会いなんて嬉しくないんですけどっ。

もう1人だってお知り合いになりたくないんですけどっ。


《チュ》

「わがまま言ってんじゃねェよ。

それに、4人1組ならお前が使えなくてもなんとかなるだろ」


 私は使えない前提かっ⁉

使えますゥーっ。なんせ私は今までの私ではないっ。

私は能力者に生まれ変わっているのだからっ‼


私は能力者に生まれ変わっているのだからっ‼


《チュ》

「なんで2回言うんだよ」


 大事なことだからだ。


 まぁだけど? 確かに1人というのは不利だろうしね。

私は使えるけどっ? 仲間がいるに越したことはないよね、うん。

いざという時は悪ドリ同様、私の身代わりになってくれることだろう。


《チュン》

「相変わらずのド腐れヤローで安心するぜ」


 だぁれがド腐れヤローだっ⁉

みんなだってそう思ってるでしょっ⁉

勝ち残るためなら蹴落としていくっ! これ常識っ、だよっ⁉


《それでは皆さんっ!

近くの者と組むのもよしっ。組みたい者に声を掛けるのもよしっ。

好きなように4人1組となってくださいっ‼》


 ざわざわざわ。


 あ、やべ。出遅れた。


 みんな組みたい人でもいんのかねぇ。

なんかすごい形相で走っていってるんだけど。

どこへ向かってるんだろ。地平線の彼方かな。


《チュッ》

「どうでもいいわ。

宇宙の彼方でも海の底でも心底どこでもいいわ」


 いやぁー、悪ドリ。

宇宙も海の底も死んじゃうじゃんかぁー。


…………あれ。地平線の彼方も死んじゃうのか?

え、みんな明日に向かって走ってるんじゃないの?

今日を終えたいんだよね? え、今日どころか生涯を終えたかったの?

それは思い留まろうぜ? 話くらいいくらでも聞いてやるからさぁー。


《チュン》

「相変わらず、誰に向かって言ってんだよ」


 そりゃあもちろん、心の整備係――


ドンッ。


「のわっ⁉」


 とっとと。あぶな……いや――


「おいコラァァァァ‼

今ぶつかったやつこっち来いやァァァァああ‼」


 4の字固めを食らわせてやるウゥゥゥゥ……‼

タップしても止めてやんないんだからなァァァっ‼


《チュッ》

「絡み方、ヤクザかよ。

ボーっと突っ立ってたお前が悪いだろ」


 チィ…………

私は見えてたからなァ…………


 なんか黒い服のやつっ。

ヒラヒラのぉー、あれっ。ゴス……ゴスゴースッ!

みたいなやつっ!


《チュン?》

「ゴスロリか?」


 そうそうそれっ!

あいつめぇ……次会ったら必ず4の字固めを食らわせてやるぜ………… 


《チュンチュン》

「わかったわかった。

ならいい加減、誰かと組め。余りものになっちまうぞ」


 ん?


んふふふふっ。悪ドリよ、正気かね?


《チ˝ュ?》

「あ˝?」


 私が? この私が? 余る?

いやいやちょっ、笑わせないでくれよぉー。


 こんな美少女と組みたいやつなんて五万と、いや五億といるよ?

そんな私が余るって、ちょっと。んふっ。


《チュー……》

「うぜぇー……

つーか現実、今のとこお前に声掛けてくるやつなんていねェじゃねェか」


 そりゃあ私みたいな美少女に気安く声なんて掛けられないんだよ。

わかるよ。うん…………え、そうなんだよね?


 えー、それにっ。

どうせ組むなら知らんバグキャラより知ってるバグキャラでしょ。


 ということで。えー…………


キョロキョロキョロリン。




 おっ! あのオオカミに食べられた赤ずきんのような

バイオレンス少女は――ウルフィーじゃあないかっ!


 うんうんっ。この私が一緒に組んであげようじゃないか。

感謝するがいいっ。泣いて喜ぶがいいっ。


「ウルフ――


 ドドドドドドドドドドドドッ‼‼‼


 ん? なんだこのドドド音は…………


 ドンッ!


「んおっ!」


 ギャンッ!


「ぐえっ!」


 バッコーンッ!


「のえェェええーっ⁉」


 はいっ。何が起こったのかと言いますと。

まず、ドンッと人の波に突き飛ばされました。

さっきのゴスゴースなんかよりも激しくドンッと。


 そしてギャンッと地べたにバタンキューしました。


 そしてそして、なぜか。

人の波で押し上げられ、無理やり立たせられ、

そこからポーイと空に投げ出されていました。


 うん。




 どうしてェェェえええええ⁉

どうやったの今っ⁉ 確実に私を狙ったでしょ⁉

私だけを狙ってやったでしょっ⁉


 なにっ⁉ そんなに私が嫌いだったのっ⁉

確かに調子に乗ったけどさっ!

あれくらいでここまで集団リンチみたいなことしますかっ⁉


 痛かったんですけどっ! 受け身は取ってたからケガはないけれどもさっ!

心が痛かったんですけどっ⁉


《チュッ》

「自業自得だろ。

お前、なんか存在がイラッとくるんだよな」


 酷いっ‼

こんなのがまかり通っていいのかっ‼


 あっ! 今、アナウンサーと目が合ったっ!

見たっ⁉ 見たっ⁉ こいつら全員、失格にしてよっ!


《えー……》


 フイッ。


《はいっ、皆さん! ケンカはしないようにっ!

お互いに譲り合いの気持ちを持ちましょうねっ!

どうしても決まらなければ、じゃんけんで決めましょう!》


《 《 《はーーーーーいっ‼》 》 》


 こ、こいつらっ!

全員、共犯だっ‼ 全員で私を殺しにきてるんだっ‼


《チュンッ》

「ただメンドそうだから無視しただけだろ」


 ああ、そっか…………


なお、悪いわっ‼




第四十五話 この指とーまれっ1

~って、言っても誰もとまらなかったら……

バグなんかよりも怖いのは、生身の人間だ。そうなんだろっ!~ END・・・

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