第四十一話 実食っ!

~嘘も方便。バグも方便~


《あ、藍沢さんっ?

どうしたんです、そんなに荒ぶってっ……」


「私のっ、私のハリウッド進出をぉぉぉ……!

よくもぉぉぉぉ…………!」


《はぁ? よくわかりませんが……

早く、女神様にキノコステーキ渡さないと

冷めちゃいますよ?》


 ……………………ちっ。仕方ない。


 もうあんな鳥とはやってけないしな。

さっさとこんな世界おさらばしてやるっ。


《チュン》

「ああそうしてくれ」


 言われなくてもそうしますぅ。


「えーーとっ……あれ?

ダ女神、いないじゃん」


《……本当ですね。留守でしょうか?》


 留守って……女神が泉を離れていいの?

いつ斧が落ちてくるのかもわからないのにさ。


…………あれ。なんかそれ怖くない?

いつ斧が上から落ちて来るか分からないんだよ?

 え、怖っ。


《あ、見てくださいあれ》


 あれ? あれ、いきなり空間に扉が――

あれか? 扉を開ければどこへでも繋がっているでお馴染みの?


 ガチャ。


《ふわぁーっ。スッキリしましたぁー》


 そしてそこから出て来たのは、髪がしっとり濡れたダ女神。

だけど身に着けていたローブは着ておら、ず――――


「あ」


《チュ》

「あ」


《あ》


《え……………………》


 ……………………


 うん。言いたいことは一つ。


男の子――男の娘だったんだね。


《うっ、わあァァァァァァァァ⁉》


 見てない。私、なにも見てないヨ?


        LOADING・・・




《こ、こっほんっ!

そ、それでっ? おつまみというのは持ってきたんですかっ?》


「ア、ウン」


 悲鳴を出したダ女神は爆速で扉に戻り、着替えて出て来た。そして無言でソファに座り何事もなかったように話し始めているダ女神。


 誤魔化そうとしてる。誤魔化そうとしているよ。

でも、流石に弄るのはやめようね。ほら、私優しいからさ。


《チュン》

「女神が扉に戻った瞬間、爆笑して弄り倒す気満々だったけどな。

竹馬女に怒られて渋々、やめたんだろ」


 だってさぁー、カジリー怖いんだもん。

理詰めタイプなんだもん。


 でも、まさか裸で出てくるとは思わなかったよね。

ていうか、もしかして普段から裸族なのかな。

神族なんじゃなかったっけ? いつ種族乗り換えたのっ?


「……………………ふっ」


 やべ。神族じゃなくて裸族だってっ。

ちょっ、自分のセンスに笑いがっ。震えちゃっ――


《藍沢さんっ……?》


「ア、ハイ」


 んじゃあ、キノコステーキを持ちまして、

ダ女神の前にある机に乗せまして。


「行くよ?」


《ゴクリッ》


「オープンッ!」


 パンパカパーンッ‼


《こっ、これは――》


「私の作った最高のつまみっ、

その名も――ステーキだよっ!」


《――――わ、わぁーっ‼

ステーキなんて給料日くらいでしか食べられませんよっ!》


 え。


((⦅給料制なんだ…………⦆))


 ハッ!

今、みんなの心が一つになったようなっ――!


《あ、いや、これはただのステーキじゃ――》


「いいや、ステーキだよっ!

正真正銘、ステーキだよっ!」


《えぇ……》


 いいじゃんかぁ。

ステーキだと思ってくれてるんなら

そういうことにしておこうよぉ。


 いやー、よかったぁ。

タレの色、濃い目にしといてっ。


《いっ、いただきますっ‼》


 パクッ。


 お。

食べましたぁーっ!


 グビッ。


飲みましたぁーっ!




だばーーーっ。


 泣きましたぁーっ‼

…………マジか。


《おっ…………おいしいーっ‼

おいしすぎるぅぅぅぅぅ‼》


グビグビグビッ。


《んはぁーっ! スゴイですこれっ!

こんなの食べたことありませんよっ!》


「おぉ……そりゃよかった」


 泣きながら缶ビールを呷るダ女神。

え、ちょっと引いちゃうかもっ。そんなに?


《へぇー。さっき小人さんの家で食べましたけど、

あそこまで感動してもらえるとは正直、思いませんでしたよ》


「え?」


 いや、え? カジリー?

そりゃ、カジリー的にはそんなでもなかったと?


《チュッ》

「まっ、想像よりは普通だったな」


 な、なんだよっ。

なんだよ、二人してぇぇ! いや、一匹と一人してぇぇ!


もう二度と作ってやんないからなっ!

泣いて頼んだって作ってやんないからなっ!


《こんなに温かいつまみはいつぶりでしょうっ!

本当にっ、美味しいですぅぅぅ‼》


 え。


《チュン》

「ああ。こいつ、最近温かいもん食ってなかったんだな」


 た、確かに隣のじじも

毎日、スーパーの弁当だって言ってたけど……


「なに? 私のつまみが美味しかったんじゃなくて?

ただ単にあったかい食べ物ならなんでもよかったの??」


 え、じゃあ今までの私の苦労はなんだったんだよっ⁉

こちとら死にかけたんですけどっ⁉


《ま、まぁ、喜んでくれたみたいだし、いいじゃないですか。

これで授与してくれるんですよね》


 グビッ、グビッ、グビッ。


 タンッ!


《まっかせてくださいなっ! 殿っ!》


「誰が殿だよっ…………」


 どっちかって言うなら姫なんですけど。


《チュ》

「お局だろ」


 どういうことなのっ⁉

今、完全に戦国縛りだったよねっ⁉

なぜにいきなりのお局っ!


 ……あれ、お局って何時代の人だっけ?

現代時代の人じゃなかったっけ?


《殿の願いとあればっ!

この僕が手となり足となりですよぉ!》


「あ、そう?

んじゃ、肩もんでー」


《お安い御用です。殿っ》


サッ!


「ジュース頂戴ーっ。ストロー付きで」


《任せてくださいっ、殿っ!》


ササッ!


《チュッ……》

「もはや奴隷だなっ」


 フハハッ。

くるしゅうないぞ。


        LOADING・・・




 さてさて。

一通り、殿と奴隷プレイを満喫したので

そろそろ授与でもしてもらおうか。


《じゃあ、早速。

能力の授与に取り掛かりますねっ》


「はいよー」


 いやぁー、やっとだよ。

こんなに引っ張るなんて、よほどスゴい能力なんだろうねぇ。


《それじゃあ、授与まで丸12時間かかりますし。

どうぞ、ごゆっくりお過ごしください》


 ……………………え。


「じゅ、じゅじゅじゅじゅ12時間っ⁉」


 じゅ、12時間ってなにっ⁉

720分ッ⁉ 43200秒ッ⁉


「え、それってもちろん――

寝てる間にやってくれんだよ、ねっ⁉」


《赤ん坊だったらそれでいいのですが、

殿の場合は起きたままでお願いします》


「……………………」


 う、嘘だ……


《じゃ、じゃあ私は帰りますので……》


《チュ、チュン……》

「お、俺も適当にそこら辺で休んでっから……」


 誰かっ、嘘だとっ、言ってぇぇぇぇぇっ‼‼‼


        LOADING・・・




ピチチチチチ。


タンッ。


「さぁ、行こうかっ‼」


《チュッ》

「目ぇ、バッキバキじゃねぇかっ」


 さぁさぁ、いよいよ始まるぜぇ‼

レッツ、実技試験だぜぇ‼


 ヌハハハハハハハ‼




第四十一話 実食っ!

~嘘も方便。バグも方便~ END・・・




――———————————————


 ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


 次回からは、入学試験・実技編です!

 これからもよろしくおねがいします‼


 わしゃまるでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る