第三十三話 レッツ、ガラガラ!3

~推理ものにバグは不要?~


《へいへいっ、じゃあ次が最後ですぜ!》


《レッツ、ガラガラァー‼》


《ど、どうするんです、藍沢さんっ。

このままじゃ――》


「フフフッ。

まぁ、見てなよ。カジリー」


 私は、ガラガラに手を伸ばす。


 だが、その瞬間――


「あっと、ぶつかっちゃったぁー」


《なっ⁉》


 カジリー直伝、棒読みを繰り出しっ!

ガラガラを倒しちゃいましたっ。


 私ってば、ドジなんだからぁー。

てへっ💀


《ちょ、ちょいとお客さん待ってくだ――》


「あ、お構いなくぅー」


 そして狸じじにガラガラを触れられる前に

ぶん取り、元に戻すっ。


 そしてっ!


ガラガラガラッ!


 勢いよく、回しましょーーー‼


⦅ま、マズいっ!

このままじゃあ、取り返しのつかないことになりやすぜ⁉⦆


 フッ。

今頃、狸じじ共の脳内では

そんなことを思って慌てふためていてることだろうな。


⦅だ、大丈夫でさぁ!

がなくても当たりが出る確率は低いっ!⦆


 と、思っているに違いない!


 だがなっ!

さっきも言ったが、私は強運の持ち主っ!


 さぁ、特とご覧に入れよう!

私こそが、三等を当てるミラクルラッキーガール‼


 藍沢 桜だァァァァァァああ‼


 トトンッ。


《な、なっ⁉》


《こ、これって⁉》


《チュッ⁉》

「おいおい、マジか⁉」


「こ、これは――――」


 ガラガラから出て来たのは、白ではなかった。

そこに転がり落ちてきたのは――――




茶色の玉だった。


《お、お、お、大当たりー…………》


カランカランカランッ‼


《おおぉーっ‼》


《やるなぁー、嬢ちゃん!》


 いつの間に周りを囲んでいた観衆に

褒めたたえられる私。


《やりましたねっ! 藍沢さん!》


《うん。やったよ、やったけどさ――》


 そのさ。

茶色の玉ってさ――――


《お、おめ、おめでとう、ございます――――

い、一等の、た、た、狸の生け捕りでござ、ござっ――》


 そう。

茶色は、一等の色なのだ。

震えてるよ。狸じじたちが私を怯えた目で見つめているよ。


《かっ――――勘弁してくだせェェェェエエ‼》


 そして全員揃って、土下座してるよ。


 いやいや、これじゃあ私が悪いみたいじゃん。

ってか、狸なんてこっちから願い下げだわ。


「ていうか、元々はあんたらが

イカサマしてたのが悪いんじゃんかっ」


《す、すんませんんんんんっ‼

ほんのっ、ほんの出来心だったんでさぁ‼》


《で、でもそれが、思いのほか上手く行って、

楽しくなってきちまいやしてっ……》


 ろくでもない奴らだな、ホント。


《あ、あの、藍沢さんっ。

一体、どんなイカサマがあったんですか?》


「ああ、うん。

タネが分かれば超簡単だよ。

イカサマを起こしてた原因は――」


 ええっと――――あ。

あったあった。


《そ、それって――》


「うん。この、緑色の葉っぱだよ」


 それも重いものかなんかで

平べったく潰した葉っぱ。


 そして、狸の変化で使うテンプレアイテム。


「これがガラガラに乗ってて、

中の玉の色を全部、白に変えてたんだよ」


《な、なるほどー……》


 それにほら、見た通りガラガラも緑色じゃんか。

葉っぱを見にくくするための仕様だったんだろうね。


《チュッ……チュチュン》

「見た通りって、お前……まぁ、いいや。

でも、よくわかったな。お前の脳みそで」


 どういう意味だよっ⁉

まぁでも今回は、【刺身】っていうのが

私的に、最大のヒントになったかな。


《チュッ?》

「刺身がぁ? どういうことだよ」


 前にさ、私のじじが台所にあった刺身を

つまみ食いしようとしたことがあってさ。


 その時、たまたま私が台所に来ちゃって、

じじ、慌てて冷蔵庫に張り付けて隠そうとしたんだよ。


《チュッ……》

「何やってんだ、お前のじいさん……」


 でも、結局。

貼り付けてたの忘れてて後日腐ったんだけどね。


《チュチュンッ》

「忘れたじいさんも、気付かねェお前もどうかしてるな。

つーか、その話じゃお前んちの冷蔵庫、赤なのかよ」


 まぁねぇ。

ほら。うちのじじ、ファンキーだったからさ。


《でも、こんな小細工しなくても

普通に全玉、白にしちゃえばよかったのでは?》


 あ、それは私も思ったよ、カジリー。


 おっと、何やら土下座狸じじたちが目を見合わせ出したよ。


《分かっていやせんねェ、嬢さん》


《あっしら狸族はぎりぎりの駆け引きが好きなんでさぁ》


《如何にバレるかバレれないかの瀬戸際で実行するかが、生き甲斐なんですぜ》


「……いや、イカサマにそんな熱意込められても」


《そうですよっ》


 おっと。

カジリーがおこモードだよ。


《貴方たちのイカサマはが、

こちら側も、それ相応の対応をすることができるんですよ》


《ヒィッ⁉

それはどうかご勘弁をっ‼》


「全くっ……

どうします? 藍沢さん」


 え、私?

んーーー…………


「じゃあ、一等の代わりに三等の調味料セットに変えてくれる?」


《そ、それだけでいいんですかっ?》


「まぁ――

それに、後ろで控えてる方々でお仕置きは十分でしょ」


 箒やら鍋の蓋やらで武装した怖い顔の住民があちこちに。

くわばらくわばらだね。


《ちょ、ちょいとお待ちをぉぉぉぉ‼》


 あれ。

なんか超特急であちこちに散らばってったんだけど。

しかも持ってきたの、明らかに使用した形跡があるんだけど。


《お、お待たせしやしたァァァァァ‼》


「いや、明らかに今、かき集めてきたでしょっ⁉」


《ま、まぁ、これだけあれば足りますし――

これに懲りたら、もうイカサマなんてやめてくださいよ》


《は、はいぃ‼》


ピューーーーーッ‼


 狸じじ共は凄い勢いでガラガラなどの諸々を片づけて

猛ダッシュ。


《待ちやがれーーー‼》


 そして、そんな狸じじ共を追いかける町の人たち。


 うんうん。これこそ、絵本の世界のあるべき姿だね。

ようやく絵本らしい光景が見れた気がするよ。


「てか、あれって犯罪じゃないんだ?」


 さっきサラッとそう言ってたけどさ。

いいの? それ?


《あ、はい。【御伽法56条、

狸族と狐族は人を化かすことを許可する。また、その逆も然り】》


「逆って?」


《化かされた人は、

狐族と狸族を化かし返してもいいってことです》


「へぇー」


《もちろん、命にかかわらない程度ですけどね》


 そりゃそうだ。


 にしても変な法律ばっかだよね、御伽法って。

法律までバグってんだもんね。


 ホント、どうしようもないな。




第三十三話 レッツ、ガラガラ!3

~推理ものにバグは不要?~ END・・・

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