第三十二話 レッツ、ガラガラ!2

~テンションは高まるごとにバグる~


《へい寄ってらっしゃい、回してらっしゃいっ!

福引やってますぜーっ!》


 茶色の法被を着た小太りな男三人が

呼び込みをしている。


 如何にも――


「怪しい……」


《チュッ》

「なにがだよ。偏見が過ぎんぞ」


 いやいや、それに加えて目の下に

それはそれは大きな隈が張ってんだよ?


 まるで狸みたいなんだもん。

狸じじみたいなんだもん。


《確かに……正直な話、が営むものは

どこか怪しげなものが多いという噂を耳にしますしね》


「え…………」


 た、狸族って…………


「さ、流石にその言い方はどうなの、カジリー……

いくら狸に似てると言ってもさぁ……」


 偏見どころか、ストレート悪口じゃん。

最悪、名誉棄損だよ?


《なっ! 違いますよっ。

彼らは【狸族】という一族なんですよっ》


「一族ぅ?」


 そんなのあるの?


《【狸族】の他にも、【狐族】や

それこそ女神様のような【神族】という一族も存在します。

その方々、固有の伝統や個性というのがあるんですよ》


「ふーん」


 個性ねぇ……

じゃあまさか神族は皆、ダ女神みたいなの?


 ……流石にあれは、あのダ女神特有の個性か。

じゃなきゃ、神族なんてとっくに滅んでるもんな。


「じゃあやっぱり、狸族って怪しいんだ」


《うーん……確かに

人を揶揄って楽しむ性格の人が多いとは聞きますけど――

一概に全員がそうとは……》


 なーるほどね。

じゃあ、変なことしてないか気にしながら

慎重に回す方向で行きますか。


「すみませーん」


《おっ!

へいへいらっしゃい! へいらっしゃい!》


 おお。近くで見ると益々、同じ顔が三つ。

見分けつかないよ。


「五回、お願いしまーす」


《へいっ! 五枚、いただきやしたー!》


《それじゃあ、早速いきやしょうかっ!》


《レッツ、ガラガラァー‼》


 よしっ。

一回目、いきまーす‼


ガラガラガラッ。


トトンッ。


 こ、これは――――白。


カランカランッ!


《残念っ! ハズレ~!》


 ぐぬぅぅぅ…………


《はいこれっ、残念賞!》


 どうもぉ……

って、これ。トイレットペーパーじゃん。

なんでトイレットペーパー?


いやまぁ、ティッシュよりかはマシだけどさ。


「で、なんかわかった?」


《い、いえ。まだなんとも……》


 だよねぇ。

まぁ、まだ一回目だし?

普通にハズレを引いただけかもしれないし?


 よしっ、もう一回だっ!

私の強運をその目に映すがいい!


《はいっ! レッツ、ガラガラァー‼》


ガラガラガラッ。


トトンッ。


 結果は――また、白。


《ハズレ~!》


 まだまだっ! もう一回!


《ハズレ~》


 こ、今度こ――


《はい、ハズレー》


……………………


《チュンチュン》

「おいおい。強運、どこ行ったよ」


《ま、マズいですよ、藍沢さんっ。

もう福引券が一枚しか残っていません》


 その代わり、

トイレットペーパーは増えていくばかり…………


「た、確かにマズい。このままじゃ

トイレットペーパー風、春巻きになってしまう。

それは、マズそうだもんね」


《逆ですっ! 春巻き風、トイレットペーパーですっ。

てか、そんなもの女神様に食べさせちゃダメですよっ⁉》


《チュッ》

「つーか、そういうマズいじゃねェよ」


 おお、ツッコミの嵐だ…………


 そうは言っても、これ――

多分、無理っぽくない?


「あのさ、イカサマしてんじゃないよね?」


《なーにをおっしゃいますかっ!

そんなことするはずがないでしょう!

狐じゃあるまいしっ》


「狐?」


《おや、お客さんご存じじゃない?

狐族は町へは中々、姿を見せない陰湿極まりない一族ですぜ》


《反してあっしら狸族は、町で商いやら何やらで活気ある一族なんですぜ。

そんなあっしらがイカサマなんてするわけないでさぁ》


《なんでしたら一等が当たった暁には、あっしらの誰かを

持ち帰っていただいても構いませんぜ?》


「いや、それはちょっと――」


 何の足しにもならないんでご勘弁を。


《そんな遠慮することないですぜー!》


カキカキ。


 うわっ。

一等に書いてあった米俵一年分から

狸族一人って書き直したよ。


 ……数え方ってやっぱ人なんだね。

一瞬、匹かと思っちゃったよ。


《当たったら狸鍋から刺身まで、なんにでもしてくだせぇよっ》


 え、やっぱ狸なの? 動物なの?

……いや、人も動物か。じゃあ、アニマルなの?


 ていうか、狸って刺身で食べれんの?

いやぁー、私のじじなら食べるだろうけど

私は勘弁だな。


《きっとおいしい油が出てきやすぜ?》


《タァーヌヌヌヌヌッ‼》


 ……………………


 今の、なにかわかった?

今の鳴き声みたいなの、彼らの笑い声なんです。


なに今のっ⁉ なにあの笑い方っ⁉

 アニマルの狸でもそんな鳴き方しないよっ⁉


《チュッ》

「んなことより、どうすんだよ。

こうなったらイカサマやってる前提で考えて、

その上でトリック、見抜くしかねェぞ」


 わ、わかってるよ。


 トリック………………


 狸………………


 福引………………


 ガラガラ………………


 狸鍋………………刺身………………


 タァーヌヌヌヌヌッ………………


《チュッ》

「いや、最後ら辺は関係ねェだろっ」


 うーーーーーーーん………………




 あっ‼


 タヌヌヌーンッ‼ 閃いたっ!


《チュン?》

「なんだよ? 気色悪い効果音まで付けて」


 わかっちゃったんだよー‼

イカサマの正体っ‼


 私ってば冴えてるーっ‼


 ――――ふふふっ。では、解決編といこうかっ。


 真実は、いつも――


ゲシッ。


「いたっ⁉」


《チュンッ⁉》

「言わせる訳ねェだろうがっ⁉」


 ぬぬぬっ………

まぁ、いい。


 では、私の華麗なる推理を披露しようではないかっ!


 見てろよ、イカサマ狸じじ共っ‼


 タァーヌヌヌヌヌッ‼




第三十二話 レッツ、ガラガラ!2

~テンションは高まるごとにバグる~ END・・・

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