第三十六話 のこのこ

~mfvkwcksxj~


「どう落とし前付けてくれんだよ、きのこジジイィィィ……

私がご当地マスコットみたいになってんじゃねェかよぉぉぉ……」


 なんだよ。きのこ汁かぁ?

きのこ菌、ブシャー‼ ってかぁ?


 可愛くねェんだよ、キモいんだけなんだよぉお。


グリグリグリッ。


 ピンク色の傘を押し付けて恨み言をぶつける私。

だがその姿は、きのこ同士が戯れているようにしか見えない。


 恐ろしいよ。なにこの状況っ。


 怖いんですけどォォォォおお‼


《ま、まぁ大丈夫じゃ。

解毒キノコを食べれば治る》


「どこにあんだよ、さっさと出せや。きのこジジイ」


 ほれほれ。


《も、も少し、じいさんには優しく……》


「あ?」


《こ、怖いの、君ィ……》


 当たり前だよ。

人間、キノコ化されたら誰だって怒るわ。


 だってきのこだよ?

菌が元だよ? いや、きのこが好きな人には申し訳ないけどさ?

流石に自分がきのこになるのはさ……

控えめにいっても、最&悪っ。最悪だよっ。


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 はぁあ…………


 あ、私は今ね?

このキノコジジイが解毒キノコを探すっていうから

付いてってる訳だよ。


 ちなみに、

悪ドリきのことカジリータケノコは

キノコジジイが籠に入れて持ち歩いてます。


 竹は流石に運べないんで、まぁ。

カジリーには元に戻ったら自力で採ってもらうことにするとして……


 はぁあー……傍から見たらすんごいメルヘンな光景だろうね。

けど、実際にやられた方は堪ったもんじゃないわ。


 ……ていうか、悪ドリとカジリーって

解毒きのこ食べられる状態なのかな。

もはや、手遅れな気しかしないけど…………


 ま、まぁそん時は、

ダ女神への献上品に加えてやろう。

うん。


《あぁっ!》


 お、どうしたよキノコジジイ!


「何か見つかったの⁉」


《こ、これを食べれば――》


「これねっ!」


むしりっ。


もしゃあ。


《毛だるまになる》


ボンッ。


もふぅ。


「さ――先に言えやくそじじいィィィィ‼」


《す、すまん。珍しいきのこでつい》


 ついじゃねェわっ⁉

普通に、解毒キノコだと思うじゃんかっ⁉


 てか、なんだよこれぇ。

本当にもふもふなんですけど。でも傘はつるつるのままなんですけど。

毒キノコ感がマシマシになっちゃってるんですけどぉ⁉


 人の体、なんだと思ってんだよっ‼


「どうすんだよぉー。

これ、戻った時も毛だるまじゃないよねぇ?」


 今はきのこだから水色のうぶ毛が生えてるだけだよ?

でも人間に戻ったら――


 私、一応ヒロインなんですけどぉ⁉

毛なんて概念存在しない系女子なんですけどぉ⁉


《そ、それなら安心せい、君ィ。

きのこの効果は大体、数秒で切れる》


ボワンッ。


 あ、戻った。


 なんだぁー、よかったよかった。

あのまま人間に戻ったら本当にヒロインクビ宣告させられるとこだったよ。


 …………いや、クビでよかったのか?


 って、そんなことより。


「きのこの効果は数秒なら、このきのこ化も

時間が経てば戻るんじゃっ?」


《それは無理じゃ。

あれはわしの能力でな。きのこ化は戻るどころか

徐々に進行していく一方なのじゃよ、君ィ》


「最悪じゃんっ⁉」


 どんな能力だよっ⁉

あのダ女神め……ホントろくなことしないなっ。


 帰ったら絶対、毒きのこ食わせてやるっ!

待ってろよ~っ‼


《あ、これならっ――》


 むっ。

なんだよ、それがどうしたんだよ。


《きっと役に立つはずじゃよ、君ィ》


「それだよそれっ!」


 待ってましたぁー!

 今度こそ、このきのこ化とはおさらばだねっ!


むしゃあ。


ボワンッ!


《それは傘が二倍になるんじゃよ》


「…………ふっざけんなぁああああっ‼」


 ってか、おっもっ⁉

クソ重いんですけどっ⁉


 なんでこれがいいと思ったっ⁉

【あ、これならっ!】じゃないわっ⁉


 私がきのことして生きていくなら

大きなアドバンテージかもだけどぉっ‼


 …………いや、きのこのアドバンテージってなに⁉

傘が大きいといいのっ⁉ なにがいいのっ⁉


 あぁー……ダメだ。

いつも以上に自分が何言ってるかわからないっ……


「あのぉー……

まだ見つかんないスか。もう色々、限界なんですけど」


《ううむっ…………》


 今は何といってもこの傘が重過ぎるんだけど。

ああー、今の私の状況酷いんだけど。

傘が大きくてさ? 支えられない訳よ。


 だから体…………っていうか納が、

くの字に曲がってるんだよね。


 惨めだ。惨め過ぎるよ…………


ボワンッ。


ビヨヨヨーン。


「うぉお、ぉおおっ」


 いきなり効果が切れたよ。

一気に傘が上がって折れちゃうとこだったよ。

折れちゃうとこだったんだよっ?

もう嫌だ、こんな体っ…………


 って。


「いや、もう足がないんですけどぉぉぉぉ⁉」


 きのこ化が進行してきてるんですけどぉぉぉ⁉


 このキノコジジイと同じで、

飛び跳ねて歩かなきゃなんなくなってんだけどぉぉぉ⁉


「ちょちょちょっ、ホント大丈夫なのこれぇ⁉」


《す、すまんっ、もう少しじゃ》


 もう少しってアンタねぇ……………


「あれ。悪ドリとカジリーの入った籠はどうしたの?」


《ああ、それなら荷物になるからあそこに置いて――》



むしゃあっ。



 ……………………。


《……………………》




「食われてんじゃねェかァァァァぁぁぁ⁉」




第三十六話 のこのこ


CONTINUE・・・

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