第三十五話 キノコ

~lgysxb;qxbl。~


 おぉー。

森に入る前から、もうきのこがちらほら見えるよ。


 でもね。

ここで一つ問題がある。


 ――どれが食べられるのかな。


《チュッ》

「知らねぇのかよ。

めちゃくちゃエセ博士じゃねぇか」


 いやだってさぁ……

きのこなんて、ほぼほぼスーパーでしか見たことないもん。


 なんせ、私。現代っ子だし?


 まっ、とりあえず

見た目に心当たりがあるきのこを何個か採ればいいでしょ。

どうせ食べるの私じゃないし。


《チュンッ》

「クズかよっ。

お前、きのこ博士の称号、剥奪な」


 速っ⁉

称号剥奪選手権なら間違いなくベスト5には入る速さだよっ⁉


《チュ》

「1位ではねェんだな」


 まぁね。ほら私、謙虚だからさ?


 っていうかそもそも、

きのこ博士の称号なんて持ってても何の役にも立たないし。


《チュッ》

「お前が言い出したんだろっ」


 さてさて。

では早速、きのこ採り開始といきますか――






ぐにゃ。






 ん? 何か踏んだ?


 下を見るとそこには、でっかいきのこが――


「ま、ままままさかこれっ……

ノコノコキノコッ⁉」


 お、お、踊らなきゃなんないじゃん⁉

クソーッ! こんな近くに生えてんじゃねぇよっ!


「え、えーっと――


ノッコノコランラン♪ ノッコランラン♪

ノコノコは〜皆の側に、いるんだよ〜

皆の側にいるんだよ〜


ノコノコに〜、見つかりゃ、のこのこ連れてかれ〜

のこのこ、ざくざく、喰われちまう


だけっどこの歌、歌えれりゃ〜

あっれノコノコは~喜んで〜、のこのこのこのこ去って行く〜


ノッコノコランラン♪ ノッコランラン♪

ノッコノコランラン♪ ノッコランラン♪――――」


 はいっ。

フルバージョンでお送り致しましたが、

それをひたすらエンドレスでお送りすると。


 そうすればノコノコキノコは去って行くらしい。

…………キノコって、去って行けるんだね。

知らなかったよ。


「はい。

ノッコノコランラン♪ ノッコランラン♪――」


《…………なにしとるんじゃ、君ィ》


「――え」


 誰――っていうか…………なに?

何の物体ですか。


 人――――というか見た目は完全にきのこだけど、

サングラスに白ひげを付けたきのこが目の前に。


 ま、まさか、このきのこがっ!


「キノコ博士っ⁉」


《なに言っとるんじゃ、君ィ……?》


 おっと、なぜかキノコ博士? に

呆れられてしまった。


 てか、ホントになに? これ??


「え、えっと……誰ですか?」


《わしか? わしは、キノコ三世じゃ》


 ……………………いや、誰⁉


《そんなことよりも君ィ。

こんなところで突っ立っていると邪魔じゃよ。

どいたどいた》


 えぇ……

このきのこ、傘の下の部分でぴょんぴょん跳ねて歩いてるんですけど。

確か、柄っていうんだっけ? そこでぴょんぴょん歩いてるよ。


《さてと……一仕事するかのぉ》


 ん?

なんか傘を下に向けだしたよ。

なにする――


バサッ。


「うわっ⁉」


 こ、こいつっ!

いきなり傘をぶん回してきたよ!


 しかも傘から胞子が飛んできて、顔に掛かったんですけどっ⁉

えっ、胞子って菌だよねっ?

ちょっ、目にも入っちゃったんですけどォォォッ⁉


「なにしてんのっ⁉

菌が掛かっちゃったじゃんかっ⁉」


《む? それは菌ではないぞ、君ィ。

よく見てみるのじゃ》


「はぁ?」


 菌じゃないって、どういう――


「え、えェェェェェェ⁉」


 た、確かに菌じゃないっ!

いや、ではあるっ……


 だって、これ。

じゃんっ⁉


 なんでこんなもん傘から出てくんのっ⁉


ブワワワッ!


「って、えぇ⁉」


 金が掛かった地面にきのこがすごい生えてきたんだけど⁉


 あれかっ⁉ 花咲かじいさんかっ⁉


 いや、こいつは花咲かじいさんならぬ――

きのこ、いや傘咲かじいさんっ!


《まさしくだけに。という訳じゃな》


 ダジャレかよっ‼

んな理由で撒くなっ! そんないいもんっ‼


 なんなんだ、このジジイは……

ねぇ悪ド――――


「――—―え?」


 わ、悪ドリが、肩に乗っていたはずの悪ドリが――――




「き、きのこになってるぅぅぅぅぅぅ⁉」


 なんでっ⁉ どういうことっ⁉

なんか真っ黒なきのこが肩に乗ってるんですけどっ⁉


 え、てか、さっきっからカジリーの声も聞こえな――――




 え。

な、なんかあそこに、タケノコが見えるんですけど。

しかもそのタケノコ、ぐるぐるメガネを掛けてるんですけど。


「なんでタケノコっ⁉ タケノコってキノコだっけっ⁉」


 つーか、側に竹が二本生えてるんですけどっ⁉

竹馬かっ⁉ 竹馬まで竹になったのっ⁉

いや、元から竹だけどもっ⁉


 え、なにっ⁉

まままままさか、さっきのできのこ化しちゃったとかっ⁉


「どどどどうすんのっ、これ⁉

戻んのっ⁉」


《……………………》


 うわ、こいつ。

目、逸らしやがった。


……………………マジか。


「ま、まぁ、

私がなんもなってないのがせめてもの救い――」


 ん?

なに見てんの?


 私の顔の下には水色のスウェットしか――――


「え。えェェェェェェェエエェ⁉

き、ききききのこになってるぅぅぅぅ⁉」


 なんか手足のある、キモきのこのマスコットキャラみたく

なってんですけどォォォォォォ⁉


 しかもちゃんと上の傘はピンクなんだけどっ⁉

確実に毒キノコじゃんかよっ⁉


 って、

それどころじゃないわっ⁉


「ざけんなクソじじィィィィっ‼」




第三十五話 キノコ


CONTINUE・・・

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