第三十七話 〇〇の小道

~lvxgy6c。sx~


 いや、え? ちょっ――


「え、ねぇ、キノコジジイ。

あれってさ。完全に鳥に食われちゃってるよね?」


《う、うむぅ…………》


 いや、【う、うむぅ…………】じゃなくてさ。

あれ、食われてんのカジリーだよね?

固くて苦戦してるみたいだけどもう半分いかれちゃってるよね?


 てか、もうすでに悪ドリの姿はないんだけど。


 ねぇ。


「あれってさ。その、あれでしょ?

本当は悪ドリとカジリーじゃなかったんだよね?」


 ダミーとかなんでしょ?

本物はどこかに、その、瞬間移動みたいなのでどっかにいるんだよね?

そうだよね?


《…………すまんのぉ。

わしが目を離したのが悪かったの、君ィ》


「……………………え?」


 い、いやいやそうじゃないでしょ?

だって、え?


「え、死っ――――

死んじゃった、の?」


 う、嘘でしょ?

今回もギャグ回なんじゃないの?


 こんなん、ダメじゃんっ。


「う、嘘だっ。

ねェ、ジジイも何とか言って――」


《運が悪かったのぉ……仕方ない。

それじゃあ引き続き、解毒きのこを探そうか、君ィ》


 ……………………は?


「ざけんなよ、キノコジジイっ‼

何が【運が悪かった】だよ⁉

そんなんで簡単に終わらせていい問題じゃないでしょ⁉

てかっ、さっきから【君ィ】が死ぬほどウザいんだよっ‼」


《…………そんなことを言われてものぉ。

どうしようもないもんはどうしようもないんじゃよ》


 こいつっ――!

ふざけんのも大概にっ――――‼


《ああ、ほら》


もがっ!


「んぐっ⁉」


 な、何してっ――⁉


 って、口の中にきのこっ⁉

私、こいつにきのこ突っ込まれたのっ⁉


 なんでこのタイミングでっ⁉

てか、今度は何のきのこっ――――


ごくんっ。


「いきなり何すん――‼」


《ごめんよぉ。

どうやらみたいだよ、君ィ》


 ……………………え?


 あ、あれ?


 私、手が…………ない?


《せめて楽に逝けるように、

アンラクシノコを食べさせてあげたからのぉ、君ィ》


 え、ちょ、待って、え。


 なに言ってんの、このジジイっ―――—


《すまないねェ。

また犠牲者を出してしまうなんてのぉ》


 ま、またって?


《でも、君たちも悪いんだよ?


看板に書いてあっただろう――》




 あ、こいつ――――ヤバい。


 今まで会った、どのキャラよりも。




《1 っかりと知識を持って

 2 かりない事前準備を。

 3 ろこぶのは帰ってから!




ってのぉ、君ィ》


 あ、目が、霞ん、で――――


ドサッ。




ワイワイ…………


 あれ…………

なんか、声が聞こえる?


《キノコ――》


《このこ――》


《――小道》


 …………なに? なんか歌が――――


《キノコのこのこ――》


《――の小道》


 ううぅっ、聞き取れないっ。

目っ! 目、開けっ!


こじ開けろぉっ!


あ、ちょっと開い、た……………………




《キノっコのっこのこ狂気の小道っ♪》


《キノっコのっこのこ狂気の小道っ♪》


《キノっコのっこのこ狂気の小道っ♪》


 え。


 な、なんか、私の周りを――


小人が、回って……………………


クルッ。


 ヒッ‼

一切にこっち向いたっ。


 目が、むき出しの、小人が。


《だから言ったのに――――》


《 《 《もう、入って来ちゃダメだよ?》 》 》




 あ、目が…………


見えな―――――ぃ―――





   【君も彼も彼女さえも、ようこそバグ物語へ】



        BAD END・・・











《――っ》


《――さんっ》


《おい――――しろっ――》




 …………あれ?


 ここは…………あぁ、天国か。

どうりで温かくて気持ちいいと思った。


 肌ざわりの良いものが体を包み込んでいるような……

あ、お花畑だ……橋だ……


 アハハ…………

天国、最高かよ…………






《チュッ‼》

「桜っ‼」


 ……………………ん?

なんか、声が――――?




 気のせいか…………






《チュンッ‼》

「寝ぼけてんじゃねェぞ、桜ぁっ‼」


ゲシッ!


「ブヘッ⁉


 ハッ! こ、ここは――?」


 てか、


 あ、あれ?


「悪、ドリ――――?」


 なんで悪ドリが——――

きのこになって鳥に食われたんじゃ――

共食いされたんじゃ……?


 あれ?

てか、私――――


「あれ、生きてる? 私、生きてる?」


《チュンッ》

「バカ言ってんじゃねェよ。

ノコノコキノコに触れたくらいで死ぬか、バカッ》


 そ、そっかぁー。私、生きてんだ?

あ、危ねェ……一瞬、お花畑が見えたぜ……


 ん? てか、ノコノコキノコって何のこと――


「あっ! 目を覚ましましたか、藍沢さんっ!」


 え、カジリー?


「タケノコになって半分食われたんじゃ――」


《どんな幻惑見てたんですか…………

貴方は森に入って早々、ノコノコキノコを踏んで気絶したんですよ》


「……え?」


 踏んで気絶って……

じゃ、じゃあ私がさっきまで見てたのは――――


《ノコノコキノコに触れると、幻惑に晒されるんです。

さっきまで藍沢さん、凄くうなされてたんですよ?》


 ……………………マ、マジか。

あれ全部、幻惑…………


「ノコノコキノコ、恐るべしっ……」


《でも、あれくらいで済んでよかったです。

これもノコノコ踊りのおかげですね》


「え?

でも、私がノコノコ踊りを踊ってた頃にはもう

幻惑に入ってたんじゃ――」


《ノコノコ踊りを踊ったのは藍沢さんではなく、

この鳥さんですよ》


 え。


《ノコノコ踊りは自分以外の誰かに向かって踊ることで

効果が出るものですからね。

それに、貴方が目覚めるまでずっと鳥さんが看病していたんですよ?》


 わ、悪ドリが――?

私を?


 ……………………


《チュッ……》

「お前が死んだら、俺の役目がなくなんだろ……

だから仕方なくなっ」


 ……………………そっか。




 ありがとう、悪ドリ。




第三十五話 第三十六話 第三十七話


キノコのこのこ狂気の小道 END・・・

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