第二十三話 コケコッコー

~バグが全部、悪いんだよ~


《はい、そこまでー》


 お、やっと試験が終わったよ。

二十分も持て余した時はホント、どうしようかと思ったね。

ていうかどうかと思ったよ。


 はいはい、用紙を回収ですねー。

後ろから前に渡す感じに――


 いやお前が、取りに来いや‼ テストだよっ⁉

結構、重要なテストだよね、これ⁉


 ってか、試験中寝てたの見てたぞ……

そして悪ドリにつつかれていたのもなっ。


《はい。

じゃあ明日は実技なんで、そこんとこよろしくー》


 実技? 実技ってなに?

面接とか?


 えー……志望理由――


 攻略対象がいそうだから?

いや、どこの色ボケヒロインだよっ。


 最悪だっ。

私って、そんな色ボケヒロインみたいな理由で志望してんだ……

最悪だよ…………


《そこで各自、能力のアピールしてもらうから、

準備してくるように》


 え、能力?

…………特技とか?


 特技ねぇ…………あ。

悪ドリを使って小鳥ショーでもやろうかな。

私と悪ドリ、他所から見りゃツーカーだもんね。


 え、これ割といけるんじゃ…………


《ああ、それと――

さっきペン貸した桃色髪、帰る前にこっち来いよ》


 げ。


《以上だ。解散》


 そうだったそうだった。

あのコケ教師にペンを借りてたんだったね。

ついでに悪ドリも没収されてたんだったね。


 コケ教師……

私をコケにしたムカつく無気力教師の略だよ。

中々、いい名前だろう。

ニワトリみたいで。


 コケケケケケケッ。


「あ、ペンありがとうございましたー」


《はいよ》


 ペンを返し、悪ドリを返してもらった。

うん。妥当な等価交換だな。


《チュッ》

「どこがだよっ。

俺と交換すんなら地球一個持ってこい」


 えっ。

自己評価、高っ。


《んじゃ、さよなら》


「あ、ちょっと」


 相変わらず早いな、おい。


「さっき言ってた実技のことなんですけど」


《あ? 内容なら教えねーぞ。規則だからな。

破ったら俺の給料が引かれる》


 いや、知らんわ。そんなことじゃなく――


「あの、能力ってなんですか?」


《は? …………》


 え、な、なんだよ。

そんな屈んで顔ジッと見るなんてさ。


 ていうかぼさぼさ髪で見えづらかったけど、

中々、整ったお顔立ちですね。


《チュッ》

「なんだ、タイプか?」


 御冗談を。

私はもっと洗練された大人の人がタイプなんだよ。

私をコケ下ろしたり、言い合いのケンカをするようなやつとは

エンドは迎えられんわ。


 てか、ホントになんなんだよ。

私の顔に何かついてますか?


「えっと……?」


《……冗談、じゃねーみたいだな》


 お、やっと離れた。

なんだよ。何が冗談だと思ったんだよ。

私はいつだって大真面目だぞっ。


《お前……マジもんの悲劇のヒロインか》


「え」


 そりゃ、どういう意味ですか?

理由によっちゃ蹴り上げるぞ? なにをとは言わんがよォ。


《…………まぁ、まだ時間はあるか。

ちょっとそこで待ってろ》


 え、ちょっ。

コケ教師が廊下に出てったよ。

エレベーターに乗ってどっか行っちゃったよ。


 えー……待ってって。

帰っちゃダメかな。


《チュン》

「ダメに決まってんだろ。

明らかになんか重要な話っぽかっただろうが」


 そうかぁ?

まぁ、コケ教師にしては真剣な顔をしてたけどさ。


《チュッ?》

「つーか、テストはどうだったんだよ?

マシに出来たのか?」


 え? 何言ってんだか、悪ドリよ。

聞こえてたでしょ? 私の魂の叫びが。


《チュッ》

「聞こえねェよ。

お前の脳内が聞こえんのはある程度、近くの距離にいる時だけだ」


 マジかっ⁉

そんな設定あったならもっと早く言ってよー!

私だって一人で考え込みたい時もあるんだからさぁ。


《チュン》

「例えばなんだよ」


 え、そ、そりゃ~……えーっと…………

な、なんでもいいだろっ! 乙女には色々あるんだよっ!


《チュ……》

「なんだそりゃ……」


 ったく。

悪ドリは本当にデリカシーのない鳥だなっ。


 あ、そうだっ。

今度からは、悪ドリから離れて悪口言おーっと。


 そしたらもう、つつかれることもないっ。

うんうんっ。その手があったなっ!


《チュンッ》

「それも離れてから言えよっ、バーカッ」


ゲシッ。


 あいて。


 えっ、意外に痛いんだ……

それなのにさっき、ほぼ無反応だったなんて……

あのコケ教師……中々やるなっ。


《チュン》

「つーか、さっきからコケ教師ってなんだよっ」


 え、そりゃあ名前通り、あの教師のことじゃん。

あいつめ……私をコケにしたこと、一生後悔させてやるっ……


《チュ》

「別にいいだろ、あれくらい。

つーか元はといりゃ、お前が悪いだろ」


 なっ、なななな! わ、悪ドリがっ!

悪ドリが懐柔されているっ⁉


 ど、どうしてっ⁉ なにがあったの、悪ドリっ‼


《チュン……》

「あいつ……鳥の扱いに慣れてるみてェだったしな。

お前なんかよりよっぽど、いい奴だったぜ?」


 な、なにおうっ‼

わ、私だって! 私だって悪ドリの扱いくらい慣れてるしィ‼


《チュ》

「お前、一度でも俺を鳥として扱ったことあったか?

つーか、お前が俺を握りつぶそうとしたこと

まだ許してねェからな?」


 ぐっ……ぐぬぬぬぬっ……!


《チュン》

「お前といるより、あいつに世話になった方が

俺のためかもな」


 そ、そんなぁ‼

クソっ……クソォォ…………!


 あのコケ教師っ! 許さんっ!

私こそが、悪ドリ飼育員なんだからなぁぁぁ‼


 コケコッコーめェェェェ‼


《……チュ》

「……やっぱ、バカだなこいつ」




第二十三話 コケコッコー

~バグが全部、悪いんだよ~ END・・・

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