第二十一話 試験会場C

~バグッテ、スゴインダナァ~


 よしっ。足も綺麗になって履き物もゲットできた訳だし、

早速、エレベーターに乗ろうかっ。


 ええっと、カードキーをかざして。


ピッ。


「試験会場Cまでよろしく、お願いします」


 こういう機械に話す時ってさ、

敬語を使うべきなのか迷うよね。


 いや多分、私の方が先に生まれてんじゃん?

人生経験では私の方が上じゃんか?


 だけど立場的にはさ。乗せてもらう訳だし?

敬語を使わなかったがために、別の場所に行っちゃったりさ。

最悪、上から一気にズドーンと落としてくる可能性もあるじゃんか?


 だからなんだかんだ結局、敬語を使っちゃうよねぇ。


《チュン》

「どうでもいいからさっさと乗れ」


 冷たいっ。相変わらず冷たいなぁー。


 まぁいいよ、私は心が広いからね。その上、温かい。

冷たい悪ドリもいつかレンジにチンする如く、私の心で温めてあげるさ。


《チュ》

「そりゃどーも」


 さてさて。

ではいざ、エレベーターへっ!


ウィーーーーーーン。


 おお。ぐんぐん上に上っていくよ。

でも、透明のくせに上に上がってからは白い壁しか見えないんだよね。


 これ、透明の必要あんの?

景色を楽しむために透明にしてんじゃないの?


 だって、東○スカ○ツリーも透明なとこ多いじゃん。

あれは景色を楽しむためなんでしょ?


 じゃあここもそうじゃなきゃダメじゃん。


《チュッ》

「ダメな訳ねェだろ。

別にパクってる訳じゃねェんだからよ……多分」


 ああ、そっか、そうだよね。


 ……多分。


チーン。


 あ、着いたっぽい。


 はい。扉が開いて出ると――

まぁ、普通の廊下があった。


 で、その目の前にある扉が、試験会場Cだろうね。

多分。


ガチャ。


 おお。

予想以上に普通だ。


 普通の大学の教室みたいなとこだよ。

ザ・試験会場みたいな部屋だよ。


《貴方は18番です。番号の席に座ってお待ちください》


「あ、はい」


 えー、18……18―—――


 あ、あった。

一番後ろの窓から二番目の席だ。


 どうせなら一番、窓側がよかったなー。


《チュン》

「なんでだよ」


 いや、なんとなく?


《チュ……》

「あっっそ……」


 まぁまぁ、いいじゃないか。


 さてと、席に座ったはいいけどさ――


 試験ってさ。何すんだろね?


《チュ》

「さぁな。始まれば分かんだろ」


 そうなんだけどさぁー。

なんの対策もしてないの私だけなんじゃない?


 だってここ、有名なんでしょ?

倍率も高いんでしょ?


 あ、無理だ。無理な気しかしない。




 ボォーーーーーーー…………




 はい。あれから二十分ほど経ちましたぁー。


ざわざわざわ。


 結構、人増えてきたねー。


《チュン》

「まっ、もうすぐ試験が始まるだろうしな」


 周りを見ても、特にこれといって目立つ人は見当たらないなぁー。

てか、結構いてよくわからん。ざっと50人くらいいるよ。


 ここで目立つなんてよっぽどカリスマ的な主人公候補だ――よ――


《ちょいちょい、ちょいとすんまへんなぁ。

いやぁー、間に合ってよかったわぁ!


 なんせな?

わい、内股でなっ? 内股で歩いてたら足、打っちまったー!

なんちってっ!


いやもーっ!

危なかったですわーっ!》




……………………




 いや、ホント

全然、目立つ人イナイナァー。


《……チュ》

「……ダナ」


キーンコーンカーンコーン。


 お。懐かしい音だ。

この音を聞くと学生時代を思い出すね。


 あ、いややっぱ思い出したくなかったや。

なんせ私の学生時代にはそれはそれは危うい黒歴史が――ね?


 まぁ、そんなことは置いといて。

やっと試験開始、5分前ってことだね。


ガラッ。


《えー、では。試験内容を説明するー》


 入って来て教壇に立つ、どことなくやる気のさそうな男。


 全く。

教師が受験生のやる気まで下げてどうすんだか。

最近の教師はたるんどるなっ。


《チュッ》

「お前はどの立場から言ってんだよっ」


《第一試験は――――筆記だ》


 筆記っ⁉ 筆記なのっ⁉

 いや、もっと突拍子もないもんかと思ってたよ。


《チュン》

「お前、勉強できんのかよ」


 ナメんなよぉー。

これでも高校時代にはそれなりに勉強してたんだからな。

余裕だぜ、余裕っ。


《チュ》

「どうだか」


《制限時間は30分なー》


 短っ。小テスト並みの短さだよ。


 んで、

最初は答案用紙みたいなのが配られたね。


 で、次に――


 ……………………。


 え、終わりっ⁉ 一枚だけっ⁉

こんなぺらっぺらな試験用紙見たことないんだけどっ⁉


《んじゃ、最後に――》


 あ、質問だろ。

あるある。なんせ私、筆記用具持ってないんだよね。


《チュチュン》

「おいおい、それでよく今まで冷静だったな」


 ふっ。

こんなのハプニングにも入らないぜ。


 それに、筆記用具を忘れたくらいじゃ落とされないしな。

ここで手を上げて筆記用具を要求すれば大丈夫だろうよ。


《質問あるか? ないな》


 ……いや、早っ⁉ 締め切るの早⁉

質問させる気ないだろっ⁉


 ふざけんな、この無気力教師がっ!


バッ。


 私、手を上げました。

真っすぐと、ピンとね。


 だけど。


《…………》


フイッ。


 無視っ⁉ あの野郎、無視しやがった⁉

ホントに教師かっ⁉


《チュ……》

「また変なのが出て来たな……》




第二十一話 試験会場C

~バグッテ、スゴインダナァ~ END・・・

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