第三章 入学試験・筆記 編

第二十話 お気づきだろうか……

~気付かない内にバグってる~


 いやぁ~、取り乱して申し訳ない。


 そうだね、そうだよ。

ここのやつらがスウェットの素晴らしさに気付く訳なかった。

だってバグってんだもんね。


 だから仕方ないんだよ。仕方ない。

心の広ーい私は今までの無礼を全て忘れてやろう。


 ……………………はいっ!


 はい、忘れましたー‼

皆さんも忘れましょうねー‼


 ということで、次っ!


ギィー。


 はいはい。

バグダーラァケ学園の入口の扉を開けて中へ入りました。


 そして右手に見えますのが

赤い絨毯が敷かれている先にある二基の透明なエレベーターでございます。


 次に左手に見えますのが

赤い絨毯が敷かれている先にある二基の透明なエレベーターでございます。


 続いて真ん中に見えますのが

赤い絨毯が敷かれている先にある二基の透明なエレベーターでございます。


 ……………………


《チュッ》

「いや、エレベーターしかねェじゃねェか」


 なんだここ。

ていうか天井が想像よりもすっごい低いんだけど。

エレベーターの縦くらいしか高さないんだけど。


 そしてまあるい部屋にあるのは、左右中央にある

全部で六基のエレベーター……


 手抜きか? 手抜き工事なのか?


《桜さーん!

こっちでカードキーをもらうそうですよっ》


「カードキー?」


《どうぞ》


「あ、どうも」


 部屋の真ん中に突っ立ってる人からもらったこれ。

カードキーっていうか、学生証みたいじゃんか。


 名前も何も書かれてない白紙だけどさ。

白カードだけどさ。


《これはですねっ。学園に入学した人たち全員が持つ

ライセンスのレプリカなんですよ》


「ライセンスねぇ……」


 ん? どっかで聞いたことあるような――


《これを持つと、御伽法で通常禁止とされている行いが

許されるようになるんです!

絵本の登場人物になるには様々なハプニングが付きものですからね!》


 ああっ! そうそう、御伽法!

あのトランプの兵隊が言ってたあれだよっ。


【御伽法14条、ライセンスを持たざる者は不当にりんごを採取するべからず】


 へぇー……じゃあこのライセンスさえ持ってれば

りんご採り放題なんだ……………………いいの? それ?


 犯罪犯し放題でいいの? そんなことまかり通って良いの?


《チュンッ》

「まっ、絵本の主人公なんて現代で言や

大体、犯罪者だろ」


 ……いや、それは言い過ぎだよっ⁉

流石にそんな訳……


 ない、よね?


《それじゃあ、私は試験会場Aに行くのでここでお別れですね》


「あ、そだね。

ここまで連れてきてくれてありがとね」


《いえいえ。お互い、頑張りましょうね!》


「うん」


 ウルフィーは中央にあるエレベーターへ。


 で、エレベーターの横に付いてる機械にカードキーを――


ピッ。


《試験会場Aまでお願いします》


 開いたエレベーターに乗り、上へ――――


 いや、めちゃくちゃハイテクじゃん⁉


 カードキー、かざして行く場所言えば連れてってくれんの⁉


 すげーわ、バグダーラァケ学園っ。

こんなとこだけ近未来的じゃんっ。


《チュンッ》

「感動してねェでお前も行けよ。

確か、試験会場Cだったろ」


 あー、うん。そだね。


 ではでは私も近未来を体験しようじゃないか。

じゃあ私は右のエレベーターで――


 えーっと、このカードキーをかざすと……


《お待ちください》


「え?」


 あれ。なんかそこら辺にポツポツ突っ立ってる人の一人が

話しかけてきたんですけど。


 ウルフィーはそんなことなかったのに。

まさかまたあれか? スウェットか?


 もうそのネタいいわぁ。飽きたわぁ……


《こちらをお履きください》


「え」


 スリッパだ。


《それと、こちらも》


 そして濡れたタオルだ。


 さて、皆さん。

ここで一つ、私がここに来る前のことを思い出してほしい。


 なんなら【序章 忌まわしき乙女ゲー】を

見返してくれてもいいぞ。




 お気づきだろうか……


私は、室内からここに飛ばされてきた。


 そう、からだ。

そして気付いたらこの世界の路地……にいたのだ。


 つ、ま、り。


私は今までずっと――


 キャァァァァァァ‼


        LOADING・・・




 いやぁー皆さん、お気づきだったであろうか?


《チュッ》

「気付く訳ねぇだろ。お前、普通にし過ぎだ。

内心、引いてたわ」


 そう? 意外にイケたけどな。

裸足で走ると意外にいつもより速く走れた。


 まぁ、全部追いつかれたけど。


 いやいや、正にこれこそ世にも恐ろしい話だね。


《チュンッ》

「ああ。正直、今まででの出来事の中で

一番、怖ェと思うぜ」


 まっ、でもこれで裸足生活からおさらばだね。


にしても、気が利く人もいるもんだ。


《チュッ》

「ただ泥だらけで絨毯歩かれんの嫌だっただけだろ」


 えっ、そうなの?


 あれ?

足拭いてる間にどっか行っちゃったよ。


 あれ?

なんか周りの突っ立ってる人らがホッとした顔で見てくるんだけど。


 そうなの? 悪ドリの言う通りなの?

私の足、そんなの汚かったっ⁉


《チュ……》

「つーかホント、裸足で外歩くなんざ

普通の人間じゃねェよな…………

やっぱ、お間もバグって――」


ピコンッ!


《チュ?》

「ん?」


【赤須 ウルフィー が 追加されました】


《チュ……》

「これ、まさか…………」


 そうなの? そうなのかっ⁉

私の足、そんなに汚かったのかっ⁉


 え、ちょっと――

なんならスウェットの件よりショックなんですけどっ⁉


 せめてなんか言ってよっ‼

さりげない優しさ見せないでっ! 傷付くからっ‼




第二十話 お気づきだろうか……

~気付かない内にバグってる~ END・・・

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