第十七話 三匹のこぶた?4

~念には念を。バグにはバグを~


 いや、なんで助けてくんないの⁉


私がこんなに頼んでんのにっ⁉

私、ヒロインだよねっ⁉

みんな忘れてたかもだけど私、この世界のヒロインなんだわ⁉

助けに来いや、ヒーローぉぉぉぉ‼


 って。


 や、ヤバいっ!

ホントにヤバいっ!


 口からオレンジ色の光が見えるよ⁉

あれ、炎? 炎だよねっ?


「た、たたたた助けてェエエェェェ‼」


 必死でさっ! 必死で走ろうとしてんだよっ⁉

でも動かないんだよォォォォ‼


 もう涙で、顔ぐちょぐちょだよぉぉおおお‼


ゴオォォォォォ‼


「あ」


 炎、吐き出されちゃった。




 それはまるで、


ガスバーナーのような炎が…………


 そして、その炎が藁に少し点火。

徐々に燃え広がっている…………


《わーっ‼》


「…………」


 さて。ここで皆さんに、ご報告です。


 なんと、




意外に弱めでしたぁ…………



 いや? いやでもね?


熱気で髪がゴワっとなるよ?

熱いよ? サウナのバサッ並みには熱かったよ?


 でも…………想像よりもすっごい少量の炎だったね。

思わず目が悟り目になっちゃったよ。


 あ。

で、次に木の家に来ました。


そして木を踏み潰しました。


 あらまー。見事に潰れちゃったよ。


《やっぱり奇跡のバランスが……》


《ああ……奇跡の…………》


《バランスが…………》


《チュッ》

「あーあ。奇跡のバランスがなー》


 おい、悪ドリ。非難の目を向けるな。


 てか、

しれっと戻って来たな、悪ドリ。


 恥ずかしいだろ。

あんな小量な炎、怖がって。


 ホントは内心、恥ずかしいんだろ。

別の意味で焼き鳥になってんだろ。


《チュ》

「なに、お前ほどじゃねェよ。

泣き喚いてたもんな。

怖かったよな? 死ぬかと思ったもんな?」


 なっ。

なんだよなんだよっ!


 ていうかそもそも、奇跡のバランスってなに⁉

なにその不明瞭な言葉はっ?


 そんなんで成立する絵本なんて私は認めないっ!

認めないからなっ⁉


 あ。ちなみに、レンガはなんか

尻尾で気付いたら壊してました的な感じになってました。


 …………雑かっ。


《はぁー。凄かったですねー》


 お、ウルフィーが元のまともさを取り戻してる。


 いや、さっきのが素か。これは仮の姿だろ。

世を忍んでたんだろ。すっかり騙されたわ。


「ん? てか、じゃあもう正解ないってこと?」


 試験を受けるどころか、学園に辿り着けもしないの?

今年の合格者はゼロですか?

そりゃ、どっかの第二試験より難易度高くないですか?


《チュ》

「しかもお前のせいでな」


 みなまで言うよなよぉ……

傷付くだろ。


《大丈夫ですよ》


 え? 大丈夫?

なんでそんなことウルフィーに分かんの?


もしかしてコネ? 二世特有のコネくりパン屋さん?


《実は三匹のこぶたには、

もう一つのエンディングがあるんです》


「もう一つ?」


《はい》


 そんな絵本みたいな展開が?

あ、絵本だったわ。


 ……なんてことは置いといてェ。


《絵本好きの人なら誰でもわかりますよ。

三匹のこぶたはオフィシャル絵本を発売していて、

そこにもう一つのエンディングが描かれているんです》


 え。

絵本にオフィシャルゥ⁉


そ、そんな時代になったのかっ。


「で、そのエンディングっていうのは?」


 今度こそ、教訓がミチミチに詰まってるんだろ。

絵本はやっぱりそうでなくっちゃねっ⁉


《その、エンディングは――》


キランッ。


 …………え。


な、なんかこの人――――


 いきなり剣、掲げてきたんですけど。

鋭利な輝きを放つ剣持って笑ってるんですけど。


 ど、どうした……?


《チュ、チュンッ……》

「お、おい……

そいつだけじゃねェ……周り見てみろっ」


 え。


え、嘘。


なんか他の皆さんも当然のように剣、持ってるんですけど。


 なに?

どこに置いてあったの?

もしかして持参してきたの?


 あれ。

もしかして持ってない私の方がおかしいの?


 ちょっ、?顔でチラ見しないでくれるかな。

そこもっ! 見てるの分かってるからなっ‼


 え、なに? もしかして殺し合い?

最後の一人になるまでのデスマッチですか?


 え、ちょっ、棄権したいんですけど。


《行くぞぉぉぉぉぉ‼》


「えっ⁉」


 なにっ⁉ なんなのっ⁉


 てか、誰だよお前はっ⁉

モブキャラがいきなりデカイ声出すなよっ‼

私より目立つなっ!


《おぉぉぉォォォォォ‼‼》


 え、なんかみんな走ってたんだけど。

見事に私以外のみんなが。


 てか、向かう先にいるのって――


「ド、ドラゴンっ?

まさか、ドラゴン倒しに行くのっ?」


《チュッ……》

「そのまさかだな…………」


 えェェェェェェ…………


 勇敢過ぎでしょ、この人ら。

流石、絵本の登場人物目指してるだけのことはあるよ……

みんな、主役張れるよ……


 そしてこの光景。

正直さ。正直ね?

見覚えがあるんだよねェ……


 でも流石に言っちゃダメじゃん?

色々なところから危険が迫って来そうじゃん?


 でも、でもさぁ…………


 この、何人もの人間が大きな恐竜に挑もうとしてる姿。

どうしても、あの名作ゲームが頭をよぎるんだよね。


 ねっ、悪ドリもそう思わない?


《チュッ》

「言いたいこたぁ、わかる。

けどな、なにもこの状況で言うことじゃねェだろ」


 まぁ、そうなんだけどさ。

今更、私があそこに走っていってもさぁ?

今更感あるじゃん?

剣も持ってないのにさ。


 だからさ。

せめて言わせてほしいんだよ。


《チュンッ》

「だったらせめてでっけェバグ入れてけよ。

じゃねェとハントされちまうからよ」


 お、わかってるねェ。流石、悪ドリっ。


 それじゃあ、皆さん。

ご一緒にっ。




〇〇○り〇○う○!


 あ。バグ入れ過ぎた?




第十七話 三匹のこぶた?4

~念には念を。バグにはバグを~ END・・・

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