第十八話 三匹のこぶた?5

~一度、嵌ったバグからは中々、抜け出せない~


 いやぁー、満足満足っ。

やっぱりダメって言われるとやりたくなるのが人の性がだよねェ。


 おお?

ドラゴンに向かって走り出した皆々が

ようやくドラゴンの足元近くに辿り着きそうだよ。


 さてさて、一体どうやって倒すんだか。

ドラゴンからしたら人なんてありレベルだろうけどな。


 私がドラゴンの立場だったら視界にも入れずに

【あ、踏んじゃってたんだ】くらいにしか思わないけど。


《チュッ》

「それもどうかと思うけどな」


 あらま、悪魔に道徳を説かれちゃったよ。

例えだよ? 私だって蟻の行列を見たら避けて通るさ。


 全国のみんなっ!

命は等しく大事だぜ? 覚えとくといいっ。


《チュッ》

「さっき、俺を道連れにしてやるとか言ってたのは

どこのどいつだよっ」


 …………。


 あぁっ‼

皆がドラゴンの足元に到着したみたいだ!

いやぁー、一体どうするつもりなんだろうねェ!


《チュ》

「全世界の奴ら。

こいつの言葉は何一つ信じねェ方がいいぜ。覚えとけ」


 おおっ!

なんか剣を振り上げていきり立ってますっ!

やる気MAXっ! いや、殺る気MAXですっ‼


 そして遂にっ!

ドラゴンの足に振り下ろされた無数の剣っ!


 次々に振り下ろされ――めった刺しですっ‼

いきなりのバイオレーンスですっ‼


 …………いや、バイオレンス過ぎない?


 大丈夫っ? これホントに絵本?

R指定、付いちゃわないっ?


《チュン》

「いや、よく見りゃ

ドラゴンから血は出てねェぞ」


 え、そうなの?

確かにこっからじゃ赤いのが噴き出してるのは見えない。

あ、もちろん緑色や紫色も噴き出してないよ?


 ってか、あれ?

ドラゴンってさ、東〇ドームの三倍くらいなかったっけ。

なんか、東〇ドーム一個分くらいに縮んでる気がするんだけど。


 いや、それどころか――

どんどん縮んでないっ⁉ なにっ⁉

ぐんぐん伸びるぜバーでも食べて大きくなってたとかっ⁉


《チュチュン》

「こっからじゃよく見えねェな」


 だね。

じゃあ、もう少し近付きますか。


ええーっと。ドラゴンが見えるのは

藁の家と木の家を通り過ぎて中央にあるレンガの家……

の残骸の前だね。


キランッ。


 あっ、ウルフィーが見えたっ。

え、てか……どこ狙ってんだ、あの子は。


 ケツだよ。ドラゴンのケツに向けて

剣を刺そうと背伸びしてるよ。


 そんなにそこに刺したいの? そんな必死になって?

…………どんな趣味だよ。


プス。


 あ、刺さった。


プシューーーーー。


「えェェェェェェ……」


 いや、えェェェェェ。

なんなの? どういうことなの?


 あのドラゴン、だったの?


 あの空気が抜ける音と萎んでいく姿は

風船以外の何ものでもないんだけど。


《やりましたーっ‼》


 剣を掲げて喜んでるウルフィー。

そして周りでは拍手の嵐。


 なに? だから怖がってなかったの?

風船だって知ってたから?


 じゃあ、火は? 火はどうやって出したの?


《チュッ》

「萎んだ体ん中に、何か機械みてェなのが見えるぜ」


 あ、中に火炎放射器入ってたの。


 …………え。

じゃあ、誰か操作してるの?


 まさかまさかの黒幕がいるとか――


《やりましたよ、桜さんっ!

これでめでたしめでたしです!》


 駆け寄って来たウルフィーの充実感に溢れた笑顔。


 あ、そういうことじゃないと。

じゃあドラゴンが風船だった説明も、なんで家襲ってたのかという説明もないと。


 ……まぁ、それは普通の絵本でもありがちか。


《さぁ、行きましょうかっ》


「え? 行くってどこに――」


 ん?

なんかみんなドラゴンの体ん中、入っていってる?


 あ、私たちも行くの?


《炎の熱で熱くなっているので気を付けてください》


 そう言ってドラゴンの皮を持ち上げて中に入って行くウルフィー。


私も続くよ。続くけどさ。ドラゴンの体の中って…………

なんか抵抗あるな。


「え、これって――」


 マジか。体の中に扉みたいなのあるよ。

そこにみんな潜って行ってる…………


 でも、なんか。

こういう扉の先ってさ。

普通、眩しい光とか不思議な模様が浮かんでるもんじゃないの?


 なんか、真っ黒なんだけど。

ブラックホール? なんでも呑み込むの? 私たちはごみなの?


 …………


 悪ドリ、先に行っていいよ。

一番乗りは譲ってあげるよ。


《チュッ》

「いや、お前が先でいいぜ。

俺は一番がいいガキじゃねェし、大体もう残ってんの俺らだけだろ。

一番乗りどころかビリっけつじゃねェか」


 え、いつの間にっ⁉

……ホント、ここの人たちは勇気が溢れまくってるねェ。

いや、そこら辺の感覚もバグってんのか?


《桜さんっ? どうしたんですかっ?》


「うわっ⁉」


 びっくりしたぁー。

入ってったはずのウルフィーが扉から顔を出して来たよ。


 あ、でも。それなら扉の向こうは安全なんだ…………

じゃあ行こう! すぐ行こう!


 そして私は、

ウルフィーに促されるまま、扉へ足を踏み入れた。


《さぁ、ここを潜れば――――




バグダーラァケ学園ですよっ!》


 …………。


 ……………………。


 ………………………………。


「…………………………………………」




 東〇スカ〇ツリーじゃんっ⁉




第十八話 三匹のこぶた?5

~一度、嵌ったバグからは中々、抜け出せない~ END・・・

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