第三十話 初めての共同作業

~バグでバグを釣る~


ザッ。


 さて、ダ女神に仁王立ちをかまして

正面から立ち向かおうではないかっ!


《あー、後は先程あなたが言ってた

生まれ変わるとかしかなさそうですね~》


 フッ。

そんなこと言ってられるのも今の内だ。


 くらえっ!

私とカジリーの初めての共同、三文演技を!


「つまみ」


ピクッ。


《え?》


 フフフッ、掛かったな。


「私、つまみ作りには自信があるんだよねー」


《ええっ⁉ そーなんですかっ!》


 相変わらずの棒読みカジリーだが、

ダ女神には見破れまいっ。なんせ、ダ女神だからな!


「私が作ったつまみ欲しさに酒飲みたちが詰めかけてね?

皆、ヨダレやら汗やら色んな汁を垂れ流して大変だったんだよー」


《へぇー! どんなのなんですか?》


 よく聞いてくれてね、カジリーくんよ。

そしてダ女神。もう私の話に釘付けだよ。


《そりゃあ、ジューシーで味が濃くて茶色で、

健康にいかにも悪そうな背徳グルグルメーな――》


ダララーー。


ジュルル。


 おうおう、そんなにヨダレを垂らして。

食べたいのか? 食べたいんだろ?

そう言ってみ?


「……食べたい?」


コクコクコクッ!


「えーー? どうしよっかなーっ?」


ガーンッ。


「そんなに食べたい?」


コクコクコクーーーー‼


「じゃあ――作ったら、能力くれる?」


ピタッ。


 む、ここで動きが止まるだとっ。

さっきまで赤べこのように首を振ってたのに。

首を振るしか能のない赤べこのようにっ!


《う、うぅ…………》


 ぬぅ、考え込んでいるとは…………

まだだ。もう一息必要だ。


 そうだろ、カジリー!


コクッ。


「あーあ。思い出しただけでも天にも昇る気分だなぁー」


《ごーとぅへる! って感じですよねー」


 いや、ヘブンね。


「もう能力なんて諦めて帰ろうかなー」


《ですねー。絵本になるなんて夢のまた夢ですもんねー」


 いや、そりゃなにか?

私には絵本になる器がないと?


「もう帰ってつまみパーティでもしよっかぁ――」


《だ、ダメですっ‼》


 お、食い付いたっ。


《ハッ! じゃ、じゃなくてっ、えっと――》


 逃がすかぁ!


「言い逃れしようたって遅いよ?

白状するがいいっ!」


《そうですよ! 白状すれば

藍沢さんの作るつまみなんかじゃなく、ケーキと紅茶が待ってますよ!》


 いや、さっきから微妙にズレてんだよな。

てか、ってなに? って。


《ううぅ…………し、仕方ないですねぇー》


 お、来るっ!


《そのつまみとやらを作って持ってきてくれたらっ、

女神の権限で、あなたに能力を授けましょうっ!》


 勝ったっ!


グッ。


 カジリーとの共同、三文演技。

最後は親指を立てて、幕は下りた。


 めでたしめでたし。


《チュッ》

「清らかな心の欠片もねェなっ」


        LOADING・・・




 さてさて、つまみを作ることで

能力を授与してくれることになった訳ですが――


《絶対ですよっ!

絶対戻ってきてくださいよっ!》


 さっきからやたらと纏わりついてきて

ウザウザ、ダ女神。


《僕っ、ずっと待ってますからねっ!》


「わかってるよー」


 私のスウェットを握り締めて

何度も晒してくるダ女神のワクワク顔。


 期待に満ちたキラキラ目で

目が潰れそうな、今日この頃です。


《チュッ》

「すっかり立場が逆転したな」


 ホントだよ。

さっきまではこいつのアホマニュアルに振り回されたけど、

今では私に媚びる媚びる。

どんだけつまみ、いや酒が好きなんだこのダ女神……


 さぁてと、ではでは。

ぼちぼち、つまみの材料でも集めに行きますか。


「……ところで、どうやって上に戻るの?」


《あ、はいっ!

このシャボン製造機からお戻りいただきます!》


 ババーン! っといったように出て来たシャボン製造機。

というか、ズリズリとダ女神が物置から出して来たシャボン製造機。


 いや、物置ってそんな広いの?

完全に三分の二くらいはこれで埋め尽くされてるでしょ。


 うーん、これはあれだね。

ロケットが発射する時に炎、出してくる場所。

そこの形に似てる。


《チュッ》

「珍しく普通の例えだな」


 そりゃあね?

こういう機械系は適当じゃダメだからさ。


 人の表情とかはどうでもいいんだけどさ。


《この上に乗ってください!》


「あ、うん。上にね……」


 ……………………


「カジリー、先に乗っていいよ」


《え? そ、そうですか?》


《チュンッ》

「こういう時ホント、ビビりだよな」


 ビビりじゃないしィ?

慎重なだけだしィ?


ポワン。


「おぉー」


《わぁー。凄いです!》


 機械の上に乗ったカジリーを包み込むように

シャボン玉ができたよ。


 ……やっぱりさ。

絵本の世界のクセにハイテクなとこ多いよねぇー。


フワッ。


 おー。

カジリーがシャボンの中に入ったまま浮かんでいったよ。

またまたファンタジーだね。


《それじゃあ次、どうぞ!》


「あ、はいはい」


 えーっと、この上に乗って――


ポワン。


フワッ。


「おおーっ!」


 すげー、ホントに浮いてるよ。

人の体重支えられるとか、このシャボンスゴイなっ。


《それじゃあ、頼みましたからねー!

僕、待ってますからねー!》


 あー、はいはい。

わかってる――


カシュッ。


 って。

うわっ、あいつっ。

もう酒、飲んでやがるよっ。


 まだ私、部屋の上にいるんだけど。

せめて見えなくなってから飲もうよ。


 ってか、女神が酒なんか飲んでんじゃねェわっ。

イメージってもんがあるでしょうが。


《チュッ》

「ヒロインのお前が言うか」


 ……………………てへっ💀


ピコンッ!


【アリエル・アリエナイ が 追加されました】




第三十話 初めての共同作業

~バグでバグを釣る~ END・・・





――———————————————


 ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


 予想以上に、能力授与編が長くなってしまいそうなので

ここで前編と後編に分けたいと思います!


 次回も引き続き、能力授与編です!

これからもよろしくおねがいします‼


 わしゃまるでした。

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