第二十七話 三文演技

~失敗は誰にでもあるように、バグは誰にでも訪れる~


《ここが、【理の泉】ですよ》


「おぉー」


 森の中にある泉。

神聖な感じが、ザ・ファンタジーだね。

ドラゴンに続いてのファンタジー感だよ。


「で? ここでどうやって能力をもらうの?」


 中に入って祈りを捧げるとか?

いやぁー、なんかそれ。聖女みたいだねェ。

私の見た目にぴったりだね。


《チュッ》

「お前みたいな下品な桃色よりも

ブロンズ色の方が似合いそうだけどな」


 誰が下品な髪色だよっ⁉


《チュ》

「髪色の話じゃねェ。

下品な、はお前の心の醜さの話だ」


 もっと最悪じゃんっ⁉


《いいですか。

この泉には女神様がいらっしゃるんです》


 わぁお。女神様ですか。

その女神はなに? 泉の中に沈んでるの?

浮き上がってくるの?


《ですから、今からこの泉に飛び込みます》


「…………え?」


 飛び込むの? こっちから行くの?

こういうのは大体、向こうから出てくるもんじゃないの?


《それも態とではなく、偶然を装わなければなりません》


「ええー……」


 めんどくさっ。

偶然を装うったって、どうやって…………


《女神様は今この瞬間も、私たちを見ているはずです》


 見てんの?

だったら出て来いやっ。


《チュン》

「プロレスラーみたいなこと言ってんじゃねェよ」


 い、いや別にそういうつもりないよ? 偶々だから。

……なんか恥ずかしっ!


《私が見本を見せますから、しっかり見ててください》


「あ、うん」


 ええっと、カジリーはバナナを取り出した!


 そしてカジリーはバナナを食べた!


 するとそのバナナの皮を地面に置いた!


 おおっと!

カジリーがバナナの皮の上に竹馬を置いたぁぁ‼


《あ、バナナの皮で足が滑っちゃったぁー》


ツルッ。


ボチャン。


 ……………………。


「いや、棒読みも甚だしいわ」


 てか、足じゃなくて竹馬が滑ってんじゃん。


        LOADING・・・




 とてもじゃないがあの後に続けられそうもないので

LOADING・・・したはいいが――


 これ、私にも続けと?


 でもなぁ……意外にこの泉、深そうなんだよねェ。

いやぁー、私さ。泳ぐの苦手なんだよねー。


 大体さぁ……もうカジリーが行ったんだから

私はここで待っててもよくない?


 なんならカジリーがここまで女神を引き上げてくれたらいいじゃん。

態々、二人で入らなくてもいいじゃんかぁ?


 てか正直、あんな三文芝居じゃ女神相手してくんないんじゃない?

全然、偶然な気がしなかったしさぁー……


 というかそもそも本当にこの泉に落ちてもいいの?

息できなくない? 死んじゃわない? 苦しいの苦手なんですけど。


 大体—―


《チュッ‼》

「さっさといけよっ‼」


ゲシッ。


 え。


《チュー》

「あー、足が滑ったー」


ボチャン。


 あの鳥、いつかさばくっ‼


        LOADING・・・




ドテッ。


「イタタタタッ」


 数秒の水攻め、からの落下だよ。

泉の下には水が来てなくて、上に水が張ってる。

ファンタジーだよ。


《チュン》

「よかったな、死ななくて」


 クソ鳥めェ…………

お前もやったんだろうな? 三文演技っ!


《チュチュン》

「誰がやるか。

俺はやんなくても問題ねェだろ」


 うわぁー、その考えが致命的になるんですー。


 どうすんの? 女神がヤバいやつだったら。

丸焼きにされるかもよ。


《チュッ》

「どんな女神だよ。

そんなやつ女神なんて呼ばれねェだろ」


 そうだね。

悪ドリと同じくらい、いや悪ドリよりはちょいマシな

悪魔だろうね。


 んなことより、ここは――

部屋? 誰かの生活感ある部屋だよ。

なんかもっと神聖な感じを想像してたよ。


 あ、カジリーもいる。


 ん?

あれ、カジリー。どこ見て――


「…………えぇー……」


《んふふふふっ‼ バカだなぁ。

普通、おかしいって気付くでしょー》


 ちなみに私たちに向かって言ってるのではない。


そこにいるは、横になってテレビを観ながら

ポテチを食べて背中までかいてる

女神(仮)だ。


 うんうん。

なんか髪は緑色だし、服も白いローブみたいだし、

女神要素はあるよ。


 だけどさ。そんなことよりさ。

めちゃくちゃダ女神な雰囲気を纏ってるんですけど。


 ってか、見てないじゃん。

私たちに気付いてもいないよ?


「なんのための芝居だった――」


 あ、カジリーが赤くなってる。


 恥ずかしいね、わかるよ。

わかるけど――


「見てなかったね。女神、見てなかったね」


カァァァァ。


 ここぞとばかりにイジりたいっ!


《チュッ》

「クソ・オブ・クソだな、お前」


《んふふっ、いやそれはさぁー……

気付こうよぉ》


 ってか、あのダ女神は何を観てんの?

気付こうってなに?

お前こそ、気付こうな。自分が醜態を晒してることをさ。


《それは分かるでしょー。

お父さんがゴリラになってたらさぁー!》


 いや、それは確かにっ‼


 え、なに? あ、ドッキリ観てんの?

てか多分それ、ヤラセだと思うけどなぁ。

この世界でもあるんだね、ヤラセ。


 もし仮にヤラセじゃないと言うなら

ドッキリにかかってるそいつは世紀の大阿呆だね。どの世界でもやってけるよ。


 だって自分の父親がゴリラになっても気付かないんだよ?

世界級のボケボケ阿呆じゃん。


《んふふふふふっ! あー、面白かったぁ。

さてとぉー。次は、録り溜めてたドラマでも見よっか――な――》


 あ、気付いた。




第二十七話 三文演技

~失敗は誰にでもあるように、バグは誰にでも訪れる~ END・・・

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