第十四話 三匹のこぶた?1

~バグだと決めつけるのは早いのかもしれない~


 チッ。


 なんだよなんだよ。

人が折角、慰めてあげようとしたのにさ。


《チュン》

「慰め方が昭和なんだよ。

つーかあれで元気になれんのか、お前は」


 なれるしぃ~。

ていうかなれなきゃ、今度はじじの

灼熱のマグマさえ凍るようなギャグ合戦が待ってるしぃ~。


 さっきも危うく、ギャグを披露するとこだったよ。


 あ。なんなら今からでもやろうか?


《チュ……》

「マジか……あー。

おう。あいつ、お前のお陰で心底元気になってたぜっ……」


 だよねぇ~!

いやぁー、よかったよかった!

いいことすると気持ちがいいねぇ‼


《チュッ……》

「図々しさはじいさん譲りだったんだな……」


《桜さん。もうすぐ学園への入口に着きますよ》


「お、遂にっ?

ていうか、学園ってこんな森の中にあるんだ」


 通りで町からは見えなかったわけだよ。


《実は、学園への入り方は毎年、変わるそうなんです》


「えっ、なにそれ?

じゃあ、毎年学校は引っ越してんの?」


《いえ。

魔法使いさんの魔法でいくつかの出口と入口を作るそうですよ》


「へぇー…………」


 いや、魔法使いっ⁉

魔法使いって言った今っ⁉

気を抜いてたところに、いきなりのファンタジーっ⁉


 こんなところでファンタジー要素出てくんだ……

しかも、かぼちゃを馬車に変えるなんてのより遥かに凄い魔法だよ。


 でも、何も毎年変えることなくない?

暇なの? 学校サイドは暇人だらけなの?


《学園への入口は大体、去年発売された絵本の内容で決まるんです。

そして去年、発売されて一番売れ行きがよかったのは【さんびきのこぶた】ですね》


「マジかっ⁉」


 三匹のこぶたって…………まんまだ。


 ていうか、それが去年発売って。

私にとっては古くからのおとぎ話なのに、

ここの人たちからしたらめちゃくちゃ最先端なんだ。


 あれだね。PS〇くらい最先端なんだね。


《チュッ》

「それは言い過ぎだろ」


《あ、見えてきましたよっ!》


 おぉおぉ、ウルフィーも興奮気味だよ。

そうだよね。私も最新機器には毎回、興奮するよ。


 まっ、三匹のこぶたについてだったら

私はウルフィーよりも詳しいし?


 先輩と呼んでくれてもいいんだよ?


《チュッ……》

「本当にあの三匹のこぶたなのか?

ここに来てバグなしってこたぁ……」


 いやいや、悪ドリ。

どこもかしこもバグだらけじゃ、おかしいじゃんかー。


 こういう何でもないところにバグは発生しないんだよ。

三匹のこぶたなんて簡単過ぎてバグれる隙ないんだよー。


《見てくださいっ!

あれが、三匹のこぶたに出てくる家ですっ‼》


 どうやら森を抜けた先に、出てくる家々があるようだね。

ウルフィーってば、走って先に行っちゃったよ。


 やれやれ。

あれでしょ。藁に、木に、レンガの――――




 家が、なんかすっごいデカァイ…………


「いやっ、えェェェェェェェ⁉」


 なんっ⁉ なんでっ⁉

なんでこんなにデカイのっ⁉


《チュチュ……》

「やっぱりなっ……普通なわけねェよな」


 このデカさはあれだよっ⁉ 東〇っ‼ 東〇ドームっ‼


 藁の家も、木の家も、レンガの家も全部、東〇ドー――


 え、これ、木の小屋………って、


「これ、さっきのおんぼろ小屋ァァァァァァァ⁉」


 なんで⁉ なんでこんなとこに⁉ なんででかくなってんの⁉


 昨日の夜に泊まってたんですけどっ⁉

私が泊まってた小屋が東〇ドーム化してそこにあるんですけどっ⁉


 訳わかんないんですけどォォォォォォ⁉⁉


《チュ、チュチュ……》

「い、いや、はぁ?

何がどうなってんだよ、なんであの小屋がこんな巨大化してんだ?

てか、なんでここにあんだ?」


 知るかァァァァァ‼


 いや、やっぱ分かったっ‼ 魔法だよ、魔法っ‼

ファンタジーだよっ‼


 これはもうファンタジーっ‼ ここはファンタジー‼

だからなーにが起きても不思議じゃなーいっ‼


 そう思わないとやってらんないわっ‼


《あ、桜さーん》


 あ、ウルフィーだ。

ウルフィーがワクワク顔で手を振ってこっち来てる。


 いいなぁ、君は。

私もいっそ最初からここの住人になりたかったよ。


 そしたらこんなバグに気が付かないで

君のような【人生、満喫中ですっ!】って顔で笑ってたのに。


 ……いや、それもなんかおぞましいからいいや。


《こっち来てくださいっ! 大変なんですよ!》


 大変?

いや、私の心の中ほど大変な事態は早々ないと思うけど。

カーニバルだよ?

鯛が縄跳びしながらきゅうりがサンバ踊ってるみたいな心境だよ?


《チュチュンッ》

「いや、分かんねェよ。

お前の例えはいっつも無茶苦茶だな」


 そりゃ、即興だから?

出て来たもん言ってるだけだから?


 なんて思考で騒ぎまくってる間に、ウルフィーに手を引っ張られて気が付いたら

あのおんぼろ小屋、サイズ東〇ドームverの前に立っていました。


 ちなみに家の配置は三角形です。トライアングルです。

藁、木、そして少し行ったとこの中央にレンガですねェ。

……まっ、どうでもいいか。


 てか、ここ? 三つも家があるのに、

よりによってここなんだ。


「ここがどうしたって言うんだか……」


 ていうか、意外に人いるんだね。

一つの東〇ドームに大体、十人ほどが集まってるよ。


 でもなぜか、

その中でもこの小屋の前だけ三十人くらいの人だかり。


 なに? この人たちも全員受験者なの?

やっぱり倍率、高いんだろうねェ……


 なんせ、超有名校だもんねェ…………


 なんで私がこんなとこ受けなきゃいけないんだろ。

帰りたい。切に帰りたいわ。


《――ということなんですよ》


「え…………」


《え?》


 やべ。

全然、聞いてなかった。

あちゃー。




第十四話 三匹のこぶた?1

~バグだと決めつけるのは早いのかもしれない~ END・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る