第十一話 住民ガチャSSR

~バグが多い? そういう日もあるさ。気楽に行こう~


 なんということでしょう。


 朝ごはんをどこぞのお犬様に盗られ。

気を取り直してバグダーラァケ学園に向かおうとしたけど、どこにあるかわからず。

挙句の果てに、今何時かもわからない体たらく。


 私は……私は、もう疲れたよ…………


 疲れたよ…………


 疲れたよ…………




 だからさ。


「悪ドリ。一匹で聞き込みしてきてくんない?」


《チュンッ》

「やなこった」


 ガーーーン。


 マジか。マジかよ、悪ドリくん。

私がこんなに落ち込んでんだよ?

朝っぱらからこんなに疲れてんだよ?


 普通、承諾するでしょ。最低、励ますでしょ。

私、ヒロインだよ。君、サポートキャラだよ。

それをなにが、【やなこった】だよ。


 悪魔かっ! お前は悪魔なのかっ⁉


《チュッ》

「悪魔だろ。

つーか、グチグチ文句言ってねェで

さっさとそこら辺のやつに声掛けろよ」


 へいへーい。


 えー。

あのおんぼろ小屋を後にして家々が見える場所まで一直線で歩いてきたわけですが。

なんと、意外や意外。


 あのおんぼろ小屋から町の大通りまでは、

歩いて二十分ほど。


 あれれぇ? おかしいぞぉ?


 昨日いたとこから牢屋のある森まで

一時間近くあったような気がしたんですけどぉ。


 それもトランプの兵隊と

空の旅、一時間コースなんですけどぉ。


 距離感、おかしくない?


《チュッ》

「こことあそこは同じ町じゃねェってことだろ。

あそこはこの世界じゃ、田舎。で、ここが都会」


 なるほどー。

確かにここはどちらかというと

お城が舞台のヒロイン様が主役っぽい町並みをしている。


 あっちは大抵、じじばばが登場しそうな町並みが多かったもんね。


ていうか、じゃああのオッサンはあんなとこで何してたんだか。


 …………まぁ、いっか。

別にあのオッサンに興味は一ミリもない。


 ってことで――

レッツ、聞き込みターイム‼


 と言っても、辺りは人人人……

まるで、そう。人が、チャーハンの味付けで塩を使おうと思ったけど誤って床に溢してしまった時のあの結晶たちのようだよ。


《チュッ》

「もっと簡単な例えあっただろ」


 あ、あのじじとかいいかも。

いかにも、物知りそうなじじだ。


「あのぉ、バグダーラァケ学園ってどこにあるんですか?」


《へぇっ? あんだってぇ?》


 あ、タイプBのじじでしたか。


「バグダーラァケ学園ってぇっ‼

どこですかーっ‼」


「ほえ?

最近、声が小さくなったのぉばあさん。

わしがいけめんだからって恥ずかしがらんでもいいよぉ」


「…………」


 やっぱり。

耳から鼓膜までが万〇の長城系、じじでした。


 ていうか、耳だけじゃなくて目も幻が見えるようです。

ファンタジーですねぇ。


 次。


 お。ちょっと急いでそうな早歩きの少年だ。

まぁ、気にせず行ってみようっ。


「あのー。今って、何時か分かりますか?」


ビクッ


《…………》


 え。

止まってくれたけどこっち向いてくれないんですけど。というか歩いてる時からずっと下向いてるんですけど。


「あ、あのー?」


ブツブツブツ


 あ、近付いたらなんか言ってるの聞こえる。

なになにー……


《何時って僕のことバカにしてるんだこの人大体僕に話しかけるなんてありえないしそうだありえない多分この人僕のこと呪う気だだっていかにも怪しい髪色だし大体—―――》


 うん。


 次。


 えっと、次は――――あ。

快活に笑ってるあのお姉さん、行ってみよう。


「あのー、今って何時でしたっけ?」


ぐるん


 わぁお。

すっごい勢いで首回してこっち向いてきた。


 でも、よかった。

耳は正常みたいだし、こっち向いてくれたよ。


 この人なら話が聞けるはず――――


《ちょっ、あんさん勘弁してぇなぁ!

今、何時って!》


 え、なに。

なんかおかしなこと言った?


《今、何時? 今、鼻血~~

今、何時っ? 今、チンパンジー~~

 なんちってっ!

もーっ!

あんさん、いきなりなに言わすの~~‼》


バンバンッ


 ……………………


 




 あれ? 私、今何してったっけ?

数十秒前の記憶がごっそり抜け落ちてる気がする――――


まぁ、いっか。


 さーて、気を取り直して。

次っ!


《チュチュチュン》

「いや、まてまてまて」


 ん、なんだい悪ドリ?


《チュンッ》

「さっきっからロクなやつしか引かねェじゃねェか。真面目にやってんのかっ?」


 やってるに決まってんじゃん。


《チュッ!》

「じゃあなんであんな外ればっか引くんだよ⁉

逆にすげーわっ!」


 えー……

 別に、パッと目に付いた人を適当に声掛けてるだけだけど……


《チュッ!》

「こんな人がいて、目に付く時点でアウトだろっ!」


 ……ああ! 確かにっ!


 でもさぁ。そもそも

あんなに有名な学園なら、そこら辺にデカデカと見えそうじゃん?


 それが、どこにも見当たらないのおかしくない?


 あーあー。

もうこの際、諦めよーかなー。


《チュ》

「別にいんじゃねェか。またあの小屋に逆戻りしたいなら。今度こそ、食い散らかされるかもな」


 さぁ、気合いを入れて探しましょー‼


 えー、次は――次は――――


 ん?


《チュン》

「あ? どうし――――」


 え、あれ……? あれって……あれ?


《チュ》

「お、おう……多分、あれだろ」


 え、でも――

あれ、どう見ても――――




 喰べられちゃってんだけど。


 赤い頭巾の似合う少女が、オオカミに…………




第十一話 住民ガチャSSR

~バグが多い? そういう日もあるさ。気楽に行こう~ END・・・

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