第二章 入学試験……の前 編

第十話 ブレック・ファースト殺人事件

~一度あったバグは二度続けて起こる~


 おはようございます。

 清々しい朝日を浴び、眩しくて堪らないため起床しました。藍沢 桜です。


《チュー……》

「もう朝か……ふぁ」


 そしてこちらが悪ドリ。

サポートキャラクターのくせに睡眠をとっている職務怠慢ヤローです。

深夜にゲームをする人にとってはクレーム案件でしょう。


《チュッ》

「プレイしてんのはお前だけだろ。それに、俺だって睡眠くらいとるわ」


 ぐーきゅるるるる……


 おっと、失礼。


 さてさて、朝ごはんの時間だね。

 メニューはなんと――




 ててーんっ! りんごでーす!


 え? また盗んだのかって?

そんなご冗談を~。


《チュンッ》

「誰もなんも言ってねェよ」


 そんなこと言わずに聞いてほしい。

このりんご。

何を隠そう背を気にしてる幼女、スネカさんから頂いたのです!


 え? そんなシーンなかったじゃないかって?

またまた~。


《チュッ》

「だからなんも言ってねェだろ」


 まぁまぁ、聞いてほしい。

私はさ、牢屋に入ってる時に言ったじゃん。


【子どもに世話を焼かれてるって、ホントにダメ人間だな】って。


 なのにさ?

こうやってスネカさんに施しを受けてるんですよ?


まさしく、ダメ人間。人間の底辺。

人として恥ずかしいったらありゃしない。


 だ、か、ら~。


 もらったシーン、もみ消しちゃいましたっ‼

てへっ💀


 はい、ということで。


《チュチュチュンッ⁉》

「かるーくスルーしていいとこじゃねェだろっ⁉

どうやったんだよっ⁉ どうやってもみ消したんだよ⁉」


 またまた~。わかってるくせにぃ~。


《チュンッ⁉》

「わかんねェよっ⁉」


 はい。

じゃ、次行こー。


《チュ――

「ちょっ、待――


        LOADING・・・




 さてさて、何事もなく朝ごはんにしよー。

いやぁー、朝ごはんがあるって幸せだね。

朝昼晩、三食食べられるのがどれだけ幸せなことか、噛みしめられるよー。


《チュ》

「そりゃよかったな……」


 そして朝ごはんのりんごは、

もはや意味を成しているか分からない天井付近にある支え木の上に置いてある。


 そんなところに置いた理由は一つ。

りんごが落ちた時が、私たちの命日になるからだ。


 でも昨日、落ちたのはナチュラルじじが来た時のみ。

うんうん。何事もなかったようで一安心だよ。


 まぁ、私は元々、運がいいからな。

ラッキーガールだか、ら――


《チュン?》

「あ? どうかしたか?」


 いや、その…………あれ?

りんご、ないんですけど――


《…………》

「はぁー……」


「えェェェェェ⁉ なんで⁉ なんでりんごないのっ⁉」


 もしかして――あれは夢? 夢だったの?

私が今まで見ていたものは全て夢だったのっ?


 ハッ!

じゃあこの世界もやっぱり全部、夢の中—―


コッ!


「イタァ⁉」


 くちばしで頭を小突いてきただとっ⁉

もしかして、ツッコミ⁉ ツッコミなのっ⁉

でも芸人のツッコミは音はするけど痛くないって聞いてるけどっ⁉


《チュンッ》

「ったく、夢な訳ねーだろ。

お前がりんごを密輸組織みてェに受け取ってるとこは俺も見てたわ」


 あ、だよね。

あれ。じゃあ、なんでないの?

私が落ちた音にも気付かないほど爆睡してたの?


 いや、それはありえないなぁ。


《チュ?》

「でも実際ねェんだから、落ちたんじゃねェか」


 そうかぁ?

んじゃ、まぁ一応小屋の中を見るけど――――

ない。


ならば外?


でも、外にまで転がるとは思え――――


「あ、りんごみっ……け…………へ?」


《チュ、ン……》

「ん、どうし……た…………」


 あ、あれは。私の見間違いだろうか。

 りんごに…………




 りんごに歯を突っ込んでいる犬がいるように見えるんだけど……


《チュン》

「いや……現実だ。犬が、りんご食ってる」


「の、ノオォォォォォォ⁉」


 な、なんてことをっ‼


 ダッシュで茂みから出て、りんごを取り返す。


 だが……遅かった。

りんごはすでに、ご臨終していた…………


「こ、この…………このりんご殺しがァァァ‼

 お前をりんごにして食ってやるゥゥ‼」


《チュ、チュン‼》

「や、やめろっ‼ 犬に悪気はねェだろうがっ‼」


「悪気がなくたってやっていいことと、悪いことがあるでしょうが⁉

 私のごはんを……ごはんを……ゆ、許さんぞ!




 オッサン犬んんん‼」


《チュチュチュッ⁉》

「はァァァ⁉

おいおい、オッサン犬じゃねェぞ、そいつはっ!」


「この、この……

一個あげたからって味をしめやがってェェ‼

 やっぱあげるんじゃなかった!

 あん時、仕留めて丸焼きにすれば良かったァァァァ‼」


《チュンー⁉》

「なんつーこと言ってんだァ⁉

 そいつはオッサン犬じゃねェって言ってんだろうがァァ‼」


 悪ドリのどこにそんな力があるのか、私は悪ドリに押さえつけられオッサン犬を仕留めることができなかった。


 オッサン犬は私の殺気に怖気づいたのか、

怯えながら森へと姿を消したのだった…………


「返せェェェ‼ 私のごはん、返せェェェェ‼」


        LOADING・・・




 チッ。あのワン公、次会ったら確実に仕留めてくれる……

そして弁償してもらうからな。

りんご、食べ物の恨みはどこまでも募っていくからなぁ……


《チュ》

「怖ェよ……禍々しいエフェクト出てんぞ」


 当たり前だろう。私の、私のりんご…………

なんであんな犬に……どうやって取ったんだよーー…………


 はあァ~~~~~~~~~~~。


《チュン》

「まっ、終わったことは仕方ねェだろ。

気を取り直せ。今日はやることもあんだからよ」


 うーーーん…………

じゃあまぁ、気を取り直して…………?


 いざ、バグダーラァケ学園へー。




「で、バグダーラァケ学園ってどこにあるの?」


《チュッ》

「さぁな。

ただ、試験開始は13時からだってよ」


 ふーん…………


「で、今何時?」


《チュッ》

「知らねェ」


 あれー? これ、もしかして――――


 ヤバくねっ⁉




第十話 ブレック・ファースト殺人事件

~一度あったバグは二度続けて起こる~ END・・・

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