第九話 怪奇物語2

~昔話なんて、大抵バグってる~


 【じじぃーん】から逃げ切り、一安心っ。


いやぁー、そうだよねェ。

妖怪なんて大体、足遅いんだから。


 それに私、逃げ足には自信があるんでっ?


ガサガサッ


「ヒッ」


 ま、ま、ま、ま、ま、まさか?

 逃げた先で一安心した矢先。

後ろを振り向くといるゥ、みたいなホラー映画

ありがちのパターン?


 まさかァ。そんなお決まり、妖怪社会じゃ常識じゃないから。

アレが常識なの、幽霊社会だから。

アレ? アレは幽霊? だってアレ、アレ着てるし……

アレ? アレって…………アレ? 私、なに言ってんだ?


《チュン》

「落ち着け。お前がなに言ってるか分からないのは元からだ」


 そ、そ、そっか。


 まぁ、そういうことだから?

きっと振り返っても誰もいない。

いても猫とかだから。


 最上、ゴミ漁ってるホームレスだから。


《チュン……》

「壮大なフリだぞ、それ……」


 フリじゃないから? フッてないからね?

え? もしいたらマジでないから。萎えるから。

こんなノリに引っ掛かるような妖怪に育てた覚えはないからね?


 てことで、うん。かるーく振り向こう。


「ほーら、誰もいない――」


《まァァァァァつゥゥゥゥゥのォォォォォじゃァァァァ‼」




 え。


 なんか、ジジイが腰に手を当てながら

マッハのスピードで走って来てるんですけど。


「…………」


「…………」


「ぎゃあァァァァ⁉ 出たァァァァ‼

妖怪、【ジジイン・ボルトルティーヤ】‼」


《チュッ⁉》

「なんだそのグローバルなネーミング⁉」


 別の妖怪いたァァァァ⁉


《チュン!!》

「同じ奴だ‼ さっきと同じ奴っ‼」


 いいからっ‼ そんなフォルムチェンジ、仕掛けて来なくていいから‼

お前の持ち味はあれだろ? 古典的だろ?


 いいから、マジでそういうのォォォォ⁉


《おぉぉぉぉぉ…………

まさしくお主は――キュルりんじゃっ‼》


 ――って、誰がキュルりんだァァ⁉


 この髪か⁉ この髪のことなのか⁉

こっちだって好きでキュルってる訳じゃないんですけどォォ‼


 てか、キュルりんなんて妖怪いないしっ‼


《チュッ!》

「それなら【じじぃーん】も【ジジイン・ボルトルティーヤ】もいねェよっ!」




 …………いや。

ワンチャン、【じじぃーん】はいそうじゃない?


 あ、それか【ババァー――――


        LOADING・・・




 とまぁ、冗談はこのくらいにして。


 冗談だったからね?

別に本当に妖怪がいるとか思ってないから?


 あ、いやでも、信じてない奴のところに限ってくるとか聞くような……

やっぱ、妖怪いるわ。バリバリに現役だわ。お勤めご苦労様でーす。


 …………いや、だからってさっきのは妖怪じゃないよ?


 あ、でもそんなこと言ってたら今度こそ本物が出るんじゃ…………


《チュ》

「もういいか? そのアホの不毛な論述。

てか脳内で誰に向かって弁明してんだよ」


 誰って、そりゃねぇ?

プレイヤーって言うか? 心の整備係さんって言うか? ねぇ?


《チュン》

「あぁ、もうどうでもいいから。

取り敢えず、状況を教えろ。そのプレイヤーってのに」


 あ、はい。状況……状況ね。

それではこちらをどうぞ。


《お、おおぉぉ……

こんなにまぶいおなごは久し振りじゃ》


 このように、じじにまじまじと顔を見られ、感動されています。


 ってか、マブいぃ?

大分、古いが…………悪くないな。うん。


《チュッ》

「喜んでる場合か」


 あれ? ていうか、もしかして生きてる?


 いやいやいや。

生きてたら生きてたでこんなとこで何してんの? 放浪ですか? 放浪の旅に出てるんですか?


《チュン》

「そういや、オッサンが言ってたの、このことじゃねぇか」


 ああ、シェアハウスっ!


 あ、そういう…………

え、歯切れ悪かったのはなに?

心霊案件だったから的な――――


「ああああああああああっ⁉⁉」


《チュッ⁉》

「今度はなんだよっ⁉」


「こ、こっこここのじじっ!




 、持ってるっ‼」


 暗くてわかんなかったけど、

じじの腰に括り付けてある黒くて赤いひもで結ばれてる箱は絶対、

多分、もしかしたら、ひょっとして――

玉手箱っ!


《チュ……》

「た、確かになっ……じゃあ、このじいさん。元はじいさんじゃなくて?」


 は、初めて会った!

彼こそが、攻略対象の一人っ!


 浦島——――!


《ん? これはただの物入れ箱じゃが?》


 ナチュラルじじかよっ!


「え、絶対そうだと思ったのにっ。

だって老いてるじゃん! デッドorアライブを彷徨ってんじゃん!」


《そりゃあ、長年生きてればのぉ》


 ナチュラルじじかよっ!


 玉手箱かと思ったけど普通に老いてっただけかいっ!


 まぁ、それならそれでよかったけども。

こんなじじを攻略しなきゃならないことだったもん。こんなじじと甘ったるい恋愛こなさなきゃいけないとこだったもん。


《ふむ、こうして出会ったのも何かの縁じゃ。

わしの思い残しを聞いてくれるかのぉ?》


「お、思い残し?」


 やっぱり、死んでんの?

そうなの? お化けなの?


《これなんじゃが……》


 玉手箱……じゃない普通の箱から取り出したのは、紙切れ?


《チュンッ》

「いや、これ普通の紙切れじゃなくて……

バグダーラァケ学園の受験票じゃねェかっ」


「えェェェ⁉ バグダーラァケ学園のっ⁉」


《そうなんじゃ。

ようやく、受験できるようになってのぉ。

明日が試験じゃったが、不運に見舞われて――》


 不運って、やっぱこのじじ、死——


《腰をいわしてしまってのぉ。

全く、うらめしぃのぉ》


 そっちかい。


《昨日、張り切って逆さブリッジしたのがいけなかったわい》


 …………それは、

別の分野の方のものだからね。


 貴方は普通に登場して【うらめしやー】って言ってるタイプの方だもんね。

スタンダードだもんね。


《じゃからのぉ……

お主に、わしの代わりに試験を受けてきてほしいんじゃ》


「え、ええぇ……そんないきなり言われても」


《頼む……わしの分まで…………


まぶいおなごとあおはるしてきてくれぃ》


 古いなっ⁉ でも新しいっ!?

ていうか、まだまだ現役ですかっ⁉


《チュチュン》

「ある意味チャンスだぜ。学園が舞台の世界なら攻略対象もそこにいるかもしれねェ」


 あー、確かに。

うーん…………仕方ないなぁ。


「わかったよ。じゃあ私が受け…………」


 ありぇ?


 さっきまでそこにいたじじが

跡形もなく消え去ってるんですけどぉ?


ていうか、いつの間に私のポケットに受験票が入ってるんですけどぉー。


…………え、さっきのはなに?

やっぱ、お化――――


「…………寝ようか」


《……チュン》

「……だな」




第九話 怪奇物語2

~昔話なんて、大抵バグってる~ END・・・





――———————————————


 ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


 次回からは、入学試験編です!

 これからもよろしくおねがいします‼


 わしゃまるでした。

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