三.

 体の血が、彼女を欲しがっている。


これを冷ますときが、私の最期、彼女の最期を飾ることに


変わりはないだろう。彼女もそれを考えていたらしく、私に二つの


拳銃を差し出した。


 


 「拳銃を二つ貰ったわ。民衆から与えられた銃弾と銃なんだけれど」


と、彼女は言った。「最期を飾るのに、誰から貰った運命で命を絶つかは、


さして重要なことじゃないわよね?」


「そうだな」



 私は両方の銃に弾を一つずつ込めた。そして片方を王妃に渡した。


彼女はもうガウンをとってしまっていて、腕を伸ばし私から拳銃を受け取った。


「ずっとこめかみに当てていましょうね。自分の絶頂を迎えたら、引くのよ」


含み笑いをして言う彼女を、欲望が左手で捕まえた。


 


どうしてそんなにおしゃべりなのだろう。


誰が?話しているのだろう。


息は途絶えてはいなかった。


聞こえない。


言葉が枯れた。



愛しい体に、雨を降らせた。


地上からも雨が降った。


何度も、突いた。


何度も、締めた。


まだ白くならない。


朝もまだ来ない。


 


「あなた、こうして私と朝を迎えるのが」


息が絶え絶えになっている彼女が、ふと目を開き


ささやいた。


「          」


言葉が耳に入らない。


朝日が目を射った。


 


 


彼女が果てた。


私も、果てた。


  


 

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どこかの国 ミィ @cat_meechan

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