第4話 【ラーケーション】1日目ー居酒屋

 チェックイン前にホテルに到着したため、当然ながら部屋には入れず。

「ロビーで待たせていただいてもいいですか?」

 と、訪ねるとフロントの女性は快く承知してくれた。

 人ひとりぶん横になれるソファーがあったので、息子はそこに転がるようにして寝た。私たち以外の客がいなかったのが幸いだった。

 この後の予定をどうしようか?

 夕食を食べに出かけられないなら、どこかで買ってきて部屋で食べればいい。

 熱はない。いや、これから上がるのかもしれない。

 明日は帰りに病院へ寄ろうか。


 などなど考えているうちにチャックインの時間になり、部屋に入ることができた。

 私がロビーでアメニティを準備しているうちに、娘は息子を引きずるようにさっさとエレベーターに乗り行ってしまった。

 時すでに遅し…。

(あれ?先に行かれると部屋の番号がわからん!)


 モジモジ…

「あのう、すみません。私の部屋って何号室だったでしょうか。娘がキーを全部、持って行ってしまったので。」

 なんて間抜けた親なんだろうか…。

 フロントで部屋の番号を訊きエレベーターに乗り込もうとすると、娘がいた。

「部屋の番号はわかってると思ったけど、迎えにきた。」

(すみません。わかってなかったです。迎えありがとう!)

 部屋に入ると息子は3台あるベッドのうち、エキストラベッドで寝ていた。

「大きいベッド使えばよかったのに。」

 そう言いながら一度息子を起こし、持っていたお茶を飲ませる。

 夕飯の時間まで2~3時間。

 元気な娘と思い思いの時間を過ごした。


 17時。

 もし、食べに行くならサラリーマンで混まない今の時間帯がいい。

 息子を起こし、声をかけてみる。

「おー、すっきりした。」

 それまでの心配をよそに息子は回復をしていた。

 何だったんだろう…?まさかの人酔い?

「大丈夫?食べに行ける?」

「行く!」

「じゃあ、行くならサラリーマンで混まない今がチャンス。」

 ホテルを出て歩いて10分ほどの所にある居酒屋に向かっている途中のことだった。

「ねえねえ、リーマンショックって知ってる?」

「え?」

 突然の振りに驚く。

 サラリーマンからリーマンショックを連想したのか。

「世界金融危機。私の生まれた年!」


 そんな話をしているうちに居酒屋についた。

「さあ、好きな物頼みなさい!」

 さっきまで具合悪かった息子には、たくさん食べて元気になってもらわねば…。

 などという心配は、すぐに打ち消された。

 串、串、串…。最初に注文した20本はすぐに消え、追加、追加、追加。

 そして諭吉さんは去る。


 ラーケーション、一日目終了。

 



 

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