第10話 永住の星

 歩みを進めて、あるのものは、あるべきものは…

見つからない。それよりも脱出リミットが近づく。


【船長、この星は何も無い。そう考えていいですね。もちろん木星に送るエネルギーも、何も無い星ってことですね】


【知っていたのか?気がついたのか?】


【木星に住めないって知ってから少しでも疑問を】


【なるほど、隠し通せないか…もう戻らねばならない。戻りながら話そう】


 船長はここに来た訳をゆっくり話しだした。それは宇宙船の脱出に間に合わせないかのように。


【結局、地球は住み続けることは出来ないだろう。私利私欲で自己の利益を最優先してる人類では。ならば希望を持てない人々は?どうなると?】


【自暴自棄に…】


【大半はそうなるな。そのためさらに住みづらい星になってしまう。希望をもたせるためのフェイクだよ。付き合わさせてしまって申し訳ない…】


【そんなことは…それに可能性を、希望を見せることは悪いことじゃないです】


【理解出来るのか?凄いな。君のほうが船長に向いていたのかもな?】


【そんな、俺は目的のためにここに来たようなものです。いろいろ見てきましたが…船長、ここがゴールです】


【…終わりか…後悔のない人生だったな。せめて君達は帰ってくれ。俺の残りの酸素を持っていけば宇宙船に間に合うだろう】


【必要のないです。ゴールですから】


【君まで自暴自棄になっては…】


俺は宇宙服を脱いで、下着に。


【な、何やってる?死ぬぞ!!】


慌ててる船長の気持ちは解る。そうだよな。


普通はそうなるよな。でも、ここは…





俺の故郷だ。





※どうでしたか?受け入れるのに十分な人類ですか?※


【少なくとも信じていいとは、思う】


※では、あなたの判断でかまいません※


【ありがとう、もし犯罪者が、ルールに従わないのが現れたらすぐに確保する】


※では、地球への運行を開始します※




 大きな宇宙船が姿を現した。船長はただ見つめている。詳しく説明しないとならないな。


【な、何が?この星は何も無いんじゃないか?】


【何も無いですよ。ここは中継点です。遥かに遠い星からここを通過して行き来しています。船長は待ってくれている船員達にここに来るように伝えてください。あと、酸素の心配は不要です。先程星全体を地球と同じ比率に調整しました】


船長は宇宙船のヘルメット部分を取り外して、


【ふ〜…ふ〜、なんて清々しい…懐かしい、昔の地球のようだ。こんなふうにマスクも着けずに呼吸出来るなんて。船員達を連れてくる。それから詳しく教えてくれ。君には、最初にありがとうって伝えないとな】


【船長、あなたは尊敬に値します。あなたのような人々ならもちろん大歓迎ですが、そうではない人も少なからずいますね。もちろんこの星にも。そのための治安維持ですので。…あの、受け入れる人数は…】


【言わなくていい。もちろんこの星は君たちの星だ。我々はこの星から見れば侵略者とも捉えられてもそれは仕方ない。我々は地球に戻るよ。戻れればの話だがね】


【もちろん船は修理します。でも。それでよろしいのですか?もう地球は…】


【そうだな。地球は住める星ではない。もちろん第二の地球は諦めるよ。火星など住めても全人類が住める訳ではない】


【覚悟出来ているのですね。船長…】


【それこそ俺達の誇りだ。ありがとう】


【船長、これを持っていってください。すぐに渡せるものはこれくらいしかなくて…それと、もし考えが変わったら…】


船長は言葉を遮り、ニコッと笑って、


【さぁ帰るか。船の修理すまないが頼む】


【もう終わってますよ】


【そうか…我々より遥かに優れた文明、技術をもっているようだ。安泰だな、君達は】


【地球までの方向、食料、燃料、酸素は余分に積載しましたのでご安心を】


【じゃ楽しみながら地球に戻るよ。ありがとう、本当にありがとう】



こうして、船長は仲間とともに地球に。


 それから数千年の月日が流れ、地球は青い惑星の姿を取り戻した。


そこには人類はもういない…


 そして地球は新たな生命の誕生、これまでの歴史を辿るように。


 ただ修理した宇宙船は姿を変えることなく残り続けるだろう…


 もし人類が争うことなく、文明や技術が発展したなら積んであるメッセージに気がつくだろう。


船長に渡したペンダントと共に…






ご愛読、本当にありがとうございました。








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