第8話

ジリリリリ 

目覚ましの音が鳴る

現在時刻は6時


寝ぼける頭を起こして自室をでてリビングへと向かう


香ばしい匂いが鼻を刺激してきた

誰かが朝ご飯を作っているようだ


リビングにはいりリビングを覗くと

アンナがソーセージを焼いているところだった


「おはよう」


「、、、フンッ」


顔すらも合わせてくれない


この前のあれはたまたまだったとは言ったのだが、

ますます嫌われてしまったようだ


「あの〜アンナさん。どーにか許していただけませんか?」


こういう時は下手にでていこう


「、、、」


「この前見たことは忘れるk」


「うるさーい!この前のことは一生思い出すな!

私にそのことを話すなー!」


目尻に涙を浮かべながら叫ぶ


「ごめんごめん。でもさ、これから俺もここに住まわせてもらうからさ、君とは仲良くしていきたいんだ」


「、、、プリン」


「プリン?」


「駅前にあるスイーツ店のプリン。買おうと思ったら6時半には並び始めないと売りきれちゃうプリン。あれ今日販売日だから買ってきてくれたら許してあげる」


ここから駅までは走れば20分むかうことができる


「わ、わかった、買ってくる!」

凄まじい速度で家をでてプリンを買いにいく


「おはよ、アンナ。あれキキョウ起きてなかったか?」


サクヤも起きてきた


「キキョウくんは駅前のプリン買いにいってた」

「おっ、あのプリンか!アイツやるなー!でもなんでいきなり?」


と、サクヤが聞くと


「さー?わかんない」


とーっても満面の笑みでそう言うアンナにサクヤは首をかしげながらもそれ以上は言及しなかった



朝日を浴びながら河川敷を駆け抜ける


ふと、橋の下をみると人影があった


とても色白い男の人だった


いや、あれは元からあの肌色、というよりは栄養失調によって白くなっている


といったほうが正しいのかもしれない


(心配だけど、いまはプリン買わないと、、、帰りにもここにいたら声をかけてみよう)


と腕時計をみると、

(マズい!もうすぐ半になっちゃう!!ごめんなさいお兄さん)


と思いながら駅前のスイーツ店めがけて走ってゆく





ハァ、ハァ、ハァ


行列に並ぶことはできたがすごい人数だ。さらに俺後ろにもどんどん人が並びにくる


販売時刻になり、なんとかプリンを3個確保することに成功する


(よーしこれでアンナ、喜んでくれるといいけど)


とウキウキでかえる


橋の下が近くなってきた


(あの人まだいるかな)


と思って見てみると、


(いた!)


声をかけてみることにした


「すみませーん、お兄さん大丈夫ですか?」


と声を出しながら近づく

だが、反応はない


今度はもっと近づいて肩を叩きながら

「すみません、お兄さん。大丈夫ですか?」


振り返るその男は、髪は伸びっぱなし、ヒゲも伸び放題で、目は焦点があっていなかった


「なにきみ」

顔の作りからして外国人だったので予想はしていたが少しおぼつかない日本語だった


「いえ、お兄さんの顔色が悪そうでしたので。大丈夫ですか?」


「うん。でも、おれ食う物がない」

「食べ物がない、、、そうだ!これ一個だけならやるよ」


といってプリンを差し出す


すると、男は感極まったのか涙を浮かべ泣き始めてしまった

「あ、、、あ、あり、がとう」


「気にしないでください。それよりほら、あなたの名前教えてくれませんか?」


「お、おれの名前は、ジャレン・ミシェル。みんなはおれのことJAMって呼んでる」


「ジャムか、おれの名前は白井桔梗。よろしくなジャム」


といって手を差し伸ばす


「あぁ、よろしく」


熱く握手をかわしハグをする2人



「なぁ、ジャムはなんでここにいるんだ?」


「おれには今、家がない。それに金も。それもこれも全部アリエルのせいだ!俺はやつらをユルサナイ」


どうやらアリエルに対して強い憎悪を抱いているようだった。


「なんでアリエルを憎んでるんだ?」


「、、、ごめん、それはいえない」


これはなんの気無しに聞いてしまった俺が悪かった

「ごめんジャム、そうだな、人間言いたくないことの1つや2つあるよな。すまん」


「いや、いいよ。それよりキキョウ。なんでおまえはおれに優しくしてくれるんだ?」


「そんなの困ってそうな人間がいたら助ける、当たり前だろ?」


その言葉にジャムは面食らったような顔をして、

「そうか、そうか」


と1人で頷いて納得しているようだ


「なんだよジャム。どうした?」


ジャムはスッと立つと

「君は俺となんかとかかわらないほうがいい人間だ。

もう俺はいくよ。この礼はまた会ったときに」


「おい、おい、どうしたんだよ!」


引き留めようとするが、ジャムはスタスタと歩いていってしまう。


「また困ったらこの橋に来いよ!行ってやるから!」


片手を振り上げてこちらにサヨナラを告げてくる



「、、、俺の分のプリン、、、なくなっちゃったなぁ」


朝日を受けながら遠ざかってゆくジャムの姿を俺は見つめることしかできなかった



もうすでに太陽は頂点に達しようとしていた


薄暗い雲が見える

今日はたしか午後から雨だ

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火炎系能力に目覚めた俺は超能力犯罪の撲滅を開始する 流川 桃太郎 @777imo

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