【午後九時〇〇分】篠崎 雪子

「伊神と出会って市章を二つ回収してから二時間経つが、全く進展なしか……」


 私と鈴木さんは十階の議場に来ている。周りが見渡せるから襲われづらいという理由だ。


「でも、まだ亡くなっている人が増え続けているんですよね……?」


「階下にいる部下からはそう聞いている。ただ、気になる点が一つ合ってな」


「気になる点……ですか?」


「あぁ、人間が真っ二つになる死に方だったのが、刃物での刺殺になっているようだ」


「使っている呪いが変わったってことですか……?」


「そう考えるのが自然だろうな。殺人鬼が二人いるのか、それとももう一つの呪いを手に入れたのか」



 ――ガチャリ


 議場の重い扉が開くとそこには全身が血だらけの女性が扉に寄りかかっていた。


「たすけて……」


「だ、大丈夫ですか!?」


 私は間髪入れずに彼女の下へ駆け寄ると、彼女は嬉しそうに微笑ほほえんだ。


「助かった……もう殺す人がいなくて困ってたの……」


 次の瞬間、私の記憶はもうなかった。



 ―― 篠崎 雪子 死亡 ――

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