【午後五時三十分】小石 瑠璃

 お手洗いから出てくると、そこには人だったものが転がっていた。


 名札からして市民税課の川上茜さん『だった』のだろう。


 普段何を生きがいに生活しているのか分からなかった私には、まるで天国のような光景だった。


 人だったものそばには何故か十五センチくらいのナイフがあったので拝借はいしゃくした。


 とりあえず自分の部署のある二階のこども家庭課へ向かおうとしたら、道中は人が真っ二つになってパニック状態になっていた。


 慌てて逃げている人間に向かって腹と首にナイフを刺してみたら、あっけなく人は死んでしまった。


 そこからは簡単だった、一人でウロウロしているやつを見つけては刺し殺す。


 見つけては、刺し殺す、見つけては、刺し殺す、見つけては、刺し殺す


 この上ない快楽で、何度絶頂したかわからないくらいだった。


 途中でアワアワしている林くんもいたっけ、彼を殺したら赤い市章というものを手に入れた、どうやらこれを集めると願いが叶うらしい。


 光悦そうな表情をして珈琲を飲んでいる星野先輩もいた。

 殺した時にちょっと珈琲が付いたのが気に入らなかったけど、彼ほど楽に殺せた人はいなかった。


 流石に一人で行動する人が減ってきたから殺しづらくなってきてしまった。

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