【午後六時〇〇分】篠崎 雪子
「――おい、
私の顔を覗き込んで鈴木さんが目の前にいる。
「ごめんなさい、さっき『呪い殺したらどんな願いも叶う』って言う声が急に聞こえてきたのが気になって……」
「疲れてるんだ、気にすんな……」
「なにか【
『きゃああああ』
外からけたたましい叫び声が聞こえてくる。
「……おい、見るのは俺だけでいい、篠崎さん。あんたは相談室の中にいな」
お金がなくて困ったという相談をしに来たはずが、どうしてこうなってしまっているのか……。
「……外で大勢が既に死んでる、身体が真っ二つになってな」
さっきからしていた形容しがたい臭いの正体がわかってしまい、思わず嘔吐しそうになってしまった。
「篠崎さん! さっき呪われたとか言ってたな、あんたにしかわからないことはいくつかあるはずだ、教えてくれないか!?」
外では凄惨な殺戮が行われている中で、鈴木さんは落ち着いていた。いや、震えていたのかも怒っていたのかもしれない。
「わかりました――」
◇ ◇ ◇
バン!っと大きく鈴木さんが壁を叩く。
「くそったれだな、外の状況から察するに百人でも市章でもどっちでもいいっていう輩なんだろう」
「願い……。この願いが叶えばお金に困らず娘と一緒に……」
「既にこれだけの人間が死んでいるんだ。見てみな、その上で手に入れた金で娘さんの顔を見て生活できるか……?」
ぐうの音も出ない正論だった。こんな人の道を外したことはしたくない……。
「篠崎さん、悪いが俺は異変にクビを突っ込むつもりでいる」
「許さない……ってことですか?」
「無理にとは言わないが市章を持っていれば耳鳴りで近くにいることが悟られてしまうんだろ? それなら一緒に移動していた方が死ぬ確率は下がるはずだ」
「……お互いに死にたくはないですものね」
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