第11話
―――――猫の目、猫の耳。猫として人間社会に潜入を。
キャバクラという夜の遊び場では、20代半ばから後半に向かう自分の年齢に女としての老いを感じる。派手な衣装が似合わなくなり、地味だが高級な服で演じる。仕事の終わりを告げる朝日を浴びながら溜息を出す。
どれだけ飲んでも疲れなかった身体は、歳と共にアルコールを浄化出来なくなり、湿ったタオルのように重くなる。重い身体をなんとか動かしてタクシーを呼び止める。タクシーに乗り込むと同時に眠気が襲ってくる。
自宅の住所を伝え、カバンからスマホを取り出す。溜まったメッセージを片付けながら、客への愛想を完了させる。大事な。大事なお客様に感謝の言葉に再来店のお願いを込めて。
自宅近くのコンビニでタクシーを降りる。アルコールを追い出す儀式として、大きめの水を買うと流し込みながら自宅に向かう。
マンションのオートロックを開け、部屋の扉まで来ると小さな影の塊に気付いた。
「にゃーお」
小さな影は足元まで来ると、身体を摺り寄せてきた。どうやって入ったのか?それとも別の部屋が飼っているのか?小さな茶色と白と黒の三毛猫が足元をウロウロとじゃついて歩く。
動物は好きだが、今の疲れ切った身体を癒すのは睡眠以外は無理だと判断した頭が猫を拒絶する。
ごめんねー。また今度遊ぼうね。と念じながら扉を開く。着いて入ろうとする猫をひょいと摘まむと、改めてゴメンねと念じながら外に追い出した。
ベットに直行したい気持ちを抑えながら、メイクを落とすために風呂場に向かう。昔のように若さだけで、乗り越えられるとは信じきれない自分を『今、寝たら老けるぞー』と叱咤激励する。
熱いシャワーを浴びながら、眠気に振り回されながらメイクを落とし、ベットに向かう脚を引き留める。簡単なスキンケアをし終えると同時にベットに転がり込む。
ベットの傍らでスマホが点滅する。スマホを取り上げると、メッセージアプリに連絡が入っている事を知らせてきた。
―――――明日の夕方くらいに顔を出す。
機械が苦手な彼は、短い文章だけの連絡を送ってくる。いつも言葉を返しても投げたボールが帰ってくる事なく、既読表示だけを点灯させる。それでも少し前までは、通話以外出来なかったのだから大きな進歩だと笑う。
数年前に店でナンバーワンを飾る自分に声を掛けてきた若いくせに羽振りの良い客、
彼は、最近のニュースでも取り上げられる
現在、中立を決め込んでいる弘前組が何処に腰を降ろすかで、状況が一変すると連日ニュースで取り上げられている。たまに組員がテレビに映る際に
―――――晩御飯を作って、待ってるね。
最後の力を振り絞り、メッセージを返すと既読表示になるまで眺める。数分して既読が表示された事を確認して、明日のご飯何作ろうと考えながら深い眠りに落ちていく。
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