第3話:どっちが災難?

それからメイは少しづつ、いろんなことを覚えていった。


新一は自分の勉強そっちのけで1日もかかさずメイの言語担当をがんばっていた。

でも口の悪さはなかなか治らなかった。


夕方、メイは初めて夕飯の食材を買いに商店街に出かけた。


「メイひとりで大丈夫かな?」


「ひとりで買い物くらいはいけるようにならんとな」


「行ってくるね・・・」


メイは博士が書いてくれたメモを持って買い物かごを下げて商店街の八百屋さんに

買い物に出かけていった。

八百屋までは歩いてほんの15分程度・・・。


メイが八百屋で食材を選んでいる時だった。

軽乗用車に乗ったどこかの年寄りがアクセルとブレーキを踏み間違えて突然歩道を

超えてメイのいる八百屋に向かって暴走してきた。


ちょうど八百屋の店の前にいたメイめがけてそのまま突っ込んできた。

それを間の当たりにした八百屋のおやじが叫んだ。


「どっかのメイド喫茶の子が軽四に惹かれた〜」


軽四は店の中まで突っ込んで止まった。

店はぐちゃぐちゃ、メイも軽四の下敷きになった。


「お嬢ちゃん大丈夫か?・・・」

「誰か救急車・・・・」


すると、しばらくしてメイを下敷きにした軽四がむくむくと起き上がった。

フロント部分が先に上がって軽四を下から持ち上げるようにメイが立ち上がった。


「車もろくに運転できないんならとっとと免許返納しろ、くそじじい」


メイはそう言ってそのまま軽四を放り投げた。

めちゃ馬鹿力で。


幸い、まわりに怪我人はひとりもいなくて八百屋の食材がかなり売り物に

ならなくなった。


メイに投げ飛ばされた軽四は見えなくなるほど遠くへ飛んでいった。


あとで分かった話によると、じじいが乗った軽四は隣町の公園の噴水の池まで

飛んでいったようで公園にいた人が空から軽四が 降ってきたと証言している。

幸いにも軽四のじじいも無事で公園にいた人にも被害がなかったようだった。


この場合、メイとじじいとどっちが災難だったんだろう?。


軽四をぶん投げたあとメイは、なにごともなかったように売り物にならなく

なった食材をタダでもらってプイッと帰って行った。


「たらいま」


「メイ、どうした服が破れてるし・・・汚れてるじゃん」


研究所に顔をだしていた新一が言った。


「暴走してきた軽四のくそじじいに惹かれた」

「だから、投げ飛ばしたやったわ」


新一は心配してメイの身体中チェックした。


「どこも怪我ないか?」


「毛がないのは軽四を運転してた、じじのほうだわ・・・」

「あ、博士もな、きゃはは」


「新一、メイの口の悪さは直っとらんじゃないか?」


八百屋で起きた事故の模様を商店街の防犯カメラ以外にもスマホで 撮って

いたやつがいて、それをSNSにあげたもんだから、 たちまちメイの存在は

世間に知れ渡ることになった。


そんな訳で、メイは連日テレビ局やら週刊誌の取材に追い回された。

ろくに応対できないメイに変わって新一が対応した。


中にはオタクの人たちもいたりして写真やサインをせがまれたりした。

文字もろくに書けないメイのサインは毎回書くたびに違っていた。


「まずいのう」

「メイの存在が、こんなに広まったら間違いなくあやつらに知られる」


「あやつらって」


「何年か前からしつこくわしの研究を盗もうと脅迫めいたことを言って

きてるやつらがいるんじゃ」


「詐欺沼とか言う、胡散臭いやつが名刺を置いていったわ」


博士が取り出した名刺にはBad people「バッドピーポー」と書いてあった。


「自分らで悪人たちってアピールして分かりやすい組織・・・」


「こやつらおそらく武器商人の組織じゃ」


「え〜、でも狙われてるって・・・博士の発明ってガラクタばっかじゃん」


「バカモンが・・・わしがなにで生計を立ててると思っとるんだ」

「全部わしの発明品の特許料じゃぞ」


それはどうだか?

ほんとは博士の政治家だった父親が法律に触れるようなことして残した莫大な

財産があったからだ。


博士にはたくさんの資産、財産があって研究費を使っても減らないらしい。

博士がそんなに富豪だということは誰も知らない。

人は見かけによらないというだろう?


さてテレビ局らや週刊誌の取材が収まった頃博士が言ったやから

「バッドピーポー」たちが案の定研究所にやっくることになる。


博士は誰の干渉も受けずに余生を過ごしたかったがそう言う訳には

いかなくなった。


つづくぞ。

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