泥酔の果て

 お姉ちゃんは、お酒が強い。

それは、私もだ。

彼氏の浩輔君なんて、赤子の手を捻るかのように酔い潰してしまう。


 家系なんだと思う。

亡くなったおじいちゃんも、相当お酒強かったみたい。


「お姉ちゃんって、お財布持ってないの?

いつも、何から何までポケットに入れてるよね」


 姉は、小銭にお札そしてクレジットカードまで、ポケットに突っ込んで歩く。

なので、ポケットのいっぱい付いているアーミーパンツとかを履いていることが多い。


そしてさらに、お札が洗濯物と一緒に乾されていることもよくある。


「昔、果穂ちゃんからお誕生日に買ってもらったお財布をずっと使ってたんだけど、盗まれちゃったんだよね」


「えー!ずっと、アレ使ってたの?

私が中学生の頃にあげたやつだよね?

キ◯ィーちゃんのお財布でしょう?」


「うん。

パブで泥酔して寝ちゃったら、盗まれちゃったの。

だから、もうお財布は持たないことにしたの。

ごめんね!果穂ちゃん」


「そっち?

飲み過ぎないは考えなかったの?」


「あはは!それもそうだね」


私も、人のことは言えないけどね!


「でも、私なんてまだいい方だよ!

ショウくんなんて、笑っちゃうよ」


 私も、ショウくんとは一緒に飲んだことはあるが、3人の中では一番弱い。


ショウくんは、酔うと1時間もしないうちに吐く。

何度もトイレに吐きに行く。

で、戻ってくると寝てしまう。


普通は、こうなったら家に送って行くことを考える。

ここから復活するって考えられない。


でも、ショウくんは30分位寝たら、復活してくる。


「いつものようにパブで飲んでたら案の定吐き出して、そこのお店の人に外で吐いて来いって追い出されちゃったの。

あまりに戻ってこないから探しに行ったら、お店の外でパンツ一枚で寝てたんだよ。

みんなで笑っちゃったよ」


その時の写真も見せて貰った。

悲惨だ(笑)


「吐くだけ吐いて、外で寝ちゃったんだね。

お財布のみならず、服全て、靴、スマホ、全部盗まれてた。

パンツだけは誰もいらなかったみたい」


 この写真は、ショウくんの名誉のためにも世に出してはいけないと思った。


と同時に、そんな所で何年も暮らしていたのかと、恐ろしくもなった。

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