曲がったことは嫌いですか?

 私は、自分で言うのもなんだけど、中学生の頃から成績優秀、スポーツ万能で、しっかり者と言われ、学級委員とかもやっていた。


 性格がキツいのも、そのせいと思われているふしがある。

何でもそれなりに出来ていたいし、

流行もそれなりに押さえておきたいし、

みんなと同じ方向を向いていたい。


でも、これは悪目立ちしたくないからだ。


決して、曲がったことが嫌いなわけではない。


ある日、機嫌の悪い私。

そんな私を、姉は怒ることもない。

いつも、私が怒り散らして、姉は「しょうがないじゃん」と泣く。


 姉も、成績優秀でスポーツ万能。

でも、12歳の頃、普通の子を辞めてしまった。

誰とも喋らず、目も見ない。

でも、2人きりでいる時は、痛いところには踏み込まない程度に、お喋りもしていた。


「お姉ちゃんは、何も出来ない子なんだから、あなたがしっかりしなさい」

と母が姉のいるそばであからさまに言うようになり、姉は、お姉ちゃんであることも辞めてしまった。


 私は、そんな家庭を、人に知られたくないと思うようになった。


 高校でも、大学でも、ちょっと愛想のないキツい子として、周りを遠ざけていたのかもしれない。


 ある日、姉が、頼んでいた買い物を間違えた。

だいたい、私が買い物メモを渡さないと、買い物出来ない姉の方がおかしい。


「買い物もまともに出来ないの?

もう26歳で、ママでもあるんだからしっかりしてよ」


「だって、お買い物なんてした事ないんだもの。しょうがないじゃん」


「間違えた人が、逆ギレ?」


「ねぇねぇ、果穂ちゃん、落ち着いて!

次は間違えないようにするから」


「間違えた人が、落ち着いてってなんなの?

私そういう人嫌なの」


この日は、怒りが収まらない。

というか、止まらない。


「私、曲がったことが嫌いなの」


そういうと、姉がこう言った。


「そんなことないと思うよ!

果穂ちゃんが、本当に曲がったことが嫌いなら、私となんか一緒にいられないでしょう?」


姉はわかってくれていた。

馬鹿らしくなって、怒るのをやめた。


でもね、お姉ちゃん!

買い物もまともに出来ず、

家事もやったことなく、

料理もできず、

人とコミュニケーションもまともに取れないほど、

音楽のことしかやってこなかったあなたが、一番まっすぐかもしれない。

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