悪癖添い寝ー1

 この日、姉は体調が悪かったらしく、公園で、貧血をおこして倒れたらしい。

幸い、修平パパがいて、倒れた姉をアパートまで連れてきてくれて、ケイトの面倒までみてくれた。

 

 私は、この日、取引先との会議に招集され、お昼の休憩もなかなか取れずバタバタしていた。

姉からのメールに気がついたのは、14時ころだった。

慌てて、電話をかけたが、その時にはどうにか体調も戻っていた。


 外で、ケイトと一緒の時に倒れたことで、姉は落ち込んでいた。


「果穂ちゃん、今日は泊まってほしい」


また倒れるかもしれないし、ケイトのこともあり、その方が安心だと思っていたので、


「いいよ、もちろん」


姉の部屋に泊まった。

ベッドの下に布団を敷こうとしたら、


「果穂ちゃん、隣に寝て欲しい」


と言う。


「でも、ベッド狭いし」


「私、端っこによるから。お願い!」


添い寝だ。


 子供の頃、姉は、母から酷く怒られたりすると、その日は、おばあちゃんの布団に潜り込んで、添い寝してもらっていた。

おじいちゃんとおばあちゃんと仲が良い姉が羨ましかった。


「お姉ちゃんお得意の添い寝だね」


嫌味を言う私。


「寂しかったり、怖かったりで、ひとりで眠れない時ってあるじゃん」 


「でも、大人なんだから、我慢するじゃない。我慢!我慢!」


そう言って、ベッドの下に布団を敷いて、潜り込んだ。


すると、姉が、私の布団に滑り込んできた。

手を私の体に回し、肩に顔を押し付けてきた。

まるで、恋人同士のように。


「嫌だよ!気持ち悪い」


「何もしないから」


「当たり前でしょう!」


色々辛い経験もして、今は体調も悪いし、誰かに甘えたいのかもしれない。

もう少しで、ほだされるところだった。


「お姉ちゃん、もう大人なんだし、ママなんだから、ひとりで我慢することも覚えないと!」


「冷たいな〜!果穂ちゃんは」


「ずっと我慢してて、今日はどうしても人肌恋しいって夜ない?」


「なんだか、余計怖いよ」


「今がその時なんだもの」


幼いケイトと2人で暮らすようになって1ヶ月。

時々泊まりには来ているものの、姉は、ずっと寂しくて、不安だったのかもしれない。

いかん!また、ほだされるところだった。

 

「さ!お姉ちゃん、ベッドに戻って!

そのかわり、眠るまでお喋り付き合うから」


姉は、渋々ベッドに戻っていった。


「八木さんとか黒川さんとかと、しばらく一緒に暮らしてたじゃない。

あの2人は、添い寝とかしてくれるの?」


冗談半分で聞いてみた。


「黒川さんは、絶対ない。

果穂ちゃんと一緒で、我慢しろって言うの」


「ボスは、時々かな!」


「あるんかい!

あの優しそうで紳士な雰囲気の八木さんが?」


「赤の他人で初めて添い寝してくれたのは、うちのボスかな」


意外すぎる。

この悪癖を作ったのが、八木さんだったとは。







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