ノックスの十戒とヴァン・ダインの二十則

 今回はミステリーでの一種のルール「ノックスの十戒」と「ヴァン・ダインの二十則」について。これらを語るうえでは様々なミステリーについて書かなければならないので、ネタバレのオンパレードになります。本作を読まれている方は、有名どころは既読かと思いますが、念のため空白を設けます。



















 このくらいで大丈夫でしょうか。

 さて、タイトルにある二つのルール。「ヴァン・ダインの二十則」の方がより厳しいかつ「ノックスの十戒」とのかぶりが多いので、二十則メインの話になるでしょう。



 二十則で有名どころといえば、下記が重要視されるでしょう。


①事件を解く手がかりは事前に記述すること

②探偵は偶然や勘で事件を解決しないこと

③殺人がいくつあっても、犯人は一人にすること



 さて、これらのルールは守るためにあると同時に、破るものでもあります。①や②は守られる場合が多いですが、③についてはアガサ・クリスティーが『オリエント急行の殺人』にて見事なまでに破っています。だって、乗客全員が犯人ですよ。「どいつも怪しい」と思わせておいて、実は全員犯人なんて、いい意味でとんでもないです。



 茶道など日本の伝統文化には「守破離」というものがあります。「守」は「決まりは守ろう」、「破」は「分析して改良する」、最後の「離」は「自立して独自の方法を編み出す」です。



 誰もが最初はお決まり、ミステリーで言えば十戒や二十則に従って書きます。でもそれではジャンル自体が発展しません。いつかはルールを破って、新境地を開拓すべきです。そういう意味で『アクロイド殺し』など数々のルールを破ったからこそ、クリスティーが評価されているのだと思います。



 先人であるクリスティーがルールを破りまくったので、続く者たちが型にとらわれず書けるようになりました。一方で、ルールをしっかり守ったいわゆる「本格ミステリー」は衰退しつつあると感じています。



 「本格ミステリー」にも一定のファンがいるので、この状況下で「読者への挑戦」つきの名作品が出版されれば、爆発的に売れるような気がします。



 今回はこの辺で。

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カクヨムの中心でミステリー愛を叫ぶ 雨宮 徹 @AmemiyaTooru1993

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