第5話 another day 【釣りロマン】


「いやー、まさか最後の最後に幻の巨大魚を釣り上げるとはなーついてるぜー」


AD歴がとても長い男子先輩(以後パイセン)がチーフと話している。この前ロケした、釣りロマンシリーズの最終回が上がった。今は編集の全て終わった完パケをPが最終チェックし終わるのをその後ろで待っているところだ。


チ「そうねー、これで数字(視聴率)跳ねるわね」


僕「いい数字だとなんかいいことあるんですか?」


パ「もしかしたら社長賞で特別ボーナスかもよ」


僕「えー、凄いですねー貰えたらいいなー」


チ「あたしは貰えたら温泉にでも行ってくるわ、あとよろしくね」


パ「オレは貰えたら、通勤用のバイク買うな、かったりいからよ。おまえは何買うんだよ?」


僕「え、僕ですか、僕は家賃を滞納しているので、それに当てたいと思います」


パ「夢がねーなー」


二人は笑っている。僕にとっては家賃は夢なのに。


そこで黙って座ってモニターチェックしていたPが「うーん、アウトだな〜」と言い出した。


Pがアウトと言うはほんとうにアウトな時なのだ。


僕らの顔は青ざめた。もう番組を納めなくはいけないリミットも近いので返事する時間もない。


P「こんな海の真ん中にあんなの映り込むかねー」


スポンサー的にアウトみたいだ。


まるまるカットだと数字は取れない。家賃が……


そしたらチーフとパイセンが僕に言った。


「リスケしろよ」


人に言われてするのもうちょっとあれだけど、家賃のためだから頑張ってリスケした。


省略)✨👸🪄



するとどうだろう。画面の中の海がモーゼの十戒のあれみたいに海が割れてスポンサー敵にアウトな全てを飲み込んでくれた。


Pは扇子をペシっ。「いけるねー、いただきで」


解決。


僕は家に帰ってボロアパートにバミった。

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