6 フロアボス1
ダンジョン内には、その階を支配するボスキャラみたいなモンスターがいることがある。
それを『フロアボス』と呼んでいるが……基本的に下層に行けば行くほど、フロアボスも強くなることが多い。
で、こいつは最下層のフロアボスだ。
「その強さは推して知るべし――だな」
俺はゴクリと息を飲み、そいつを見据えた。
岩でできた顔面だから――『ロックフェイス』とでも呼ぼうか。
そのロックフェイスは空中をゆっくりと動きながら、ふたたび光線を放った。
「全員、出ろ!」
俺は後退して避けつつ、しもべを総動員する。
ソードウルフ13体に加え、道中で倒したモンスターも軒並みしもべにしていた。
ちなみに【ネクロマンサー】の主なスキル効果は『アンデッドを服従させ、使役させること』だ。
この『アンデッド』というのはゴーストのようなアンデッド系だけじゃなく、ソードウルフのように元々はアンデッドじゃないモンスターが死んだ場合もカウントされる。
つまり通常のモンスターの場合、殺してしまえば、『アンデッド』認定され、俺のしもべにできるということだ。
厳密には『アンデッドモンスター』ではなく、どうも『モンスターの霊体』がスキルの対象になるようだ。
……と、細かい考察はここを出てからやるとしよう。
今は――ロックフェイスを倒すことに集中だ。
カッ!
ロックフェイスがみたび光線を放った。
「俺とミラージュを守れ!」
しもべたちに命令する。
最初の光線で俺もミラージュも盾を失っているため、他のしもべを前に出し、『壁役』をさせることにしたのだ。
なんとか耐えてくれよ――。
その願いも空しく、
ばしゅっ……!
一撃でミラージュを除くすべてのしもべが蒸発した。
「全滅――」
ゾッとなった。
思った以上に、とんでもない破壊力だ。
「防御は無理だな。攻めに転じるしかない」
俺は腹をくくった。
まずは――あらためて考えを整理しておく。
次の段階に進んだスキル【ネクロマンサー】の効果の一つに、しもべにしたアンデッドの力の一部が俺のステータスに上乗せされる、というものがある。
そのため、ミラージュやソードウルフたちをしもべにしたことで、俺の筋力や反応などの各ステータスが大幅に上がったわけだが――。
「ステータスオープン」
***
名前:時雨
筋力:51→59
速度:66→75
耐久:39→45
魔力:128→141
追加スキル
【斬撃】【シールド】
【マッピング・初級】
***
「あれ? 前に見たときより上がってる――」
怪訝に思った後、すぐにその理由に気づいた。
そっか、ダンジョンワームをしもべにしたときに、俺のステータスがさらに上がってたんだ。
あのとき、すぐにステータスを確認するのを忘れてたもんな。
そう考えると、しもべが敵に撃破された場合でも、俺のステータスはそのままってことか……。
ダンジョンワームやソードウルフたちが全滅したにもかかわらず、俺のステータス数値に変化はないからな。
「そこは不幸中の幸いとはいえ、ピンチには変わりない」
俺は気持ちを引き締めた。
「このまま防戦しても押し切られそうだ。攻めた方がいいな」
「なら、私がオトリになろう」
ミラージュが言った。
「私がフロアボスの攻撃を引き付ける。その間に主が奴を倒してくれ」
「俺が――」
ごくりと息を飲む。
急に緊張感がこみ上げてきた。
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