第3話:レプリスはあんたのもの。

なんで見ず知らずのガイノイドの面倒見なきゃいけないんだろ?

しかも声だけと脳みそだけと生活してもつまんないだろ・・・。


ってことでレプリスが連絡を取ってくれた、一宮 金次郎いちみや きんじろうさんが俺と会ってもいいけどって言ってくれた。


彼に相談するのはレプリスの脳殻に合うガイノイドの体を探してもらうこと。

つまり脳殻が入っていても入ってなくてもいいからちゃんとした女性の体が

あればいいんだ。


だけど、そのために費用がどのくらいいるのかも分からない。

まずは話を聞いてもらってから今後のことを決めようと思った。


休みの日、一宮さんの行きつけのラーメン屋で昼飯どきに合うことになった。


ラーメン屋の暖簾をくぐったら数人の客がカウンターに座っててその中の

ひとりがレプリスが言ってたとおり髪の毛がもじゃもじゃでメガネをかけた、

若そうな男がすでにラーメンを食べていた。


俺はその人に近ずくと声をかけた。


「あの、一宮さんでしょうか?」


そのもじゃもじゃ頭の男は俺のほうを見ないで、うんうんうなずいた。


この人か・・・。


「横に座っても?」


「どうぞ?」


「すいません・・・僕も味噌ラーメン」


「あの一宮さん、だいたいのことはレプリスから聞いてると思うんですけど」


「金さえ払ってくれたら、協力してあげてもいいけど」

「とりあえずラーメン食ってから、すぐ先に公園があるんでそこで話しましょう」


「あ、はい分かりました」


《将暉?・・・将暉・・・どうなった?》


いきなりスマホからレプリスの声がした。


「まだ早いよ・・・話が終わったら知らせてやるから待ってろ」

「レプリスが割り込んでくるとややこしくなるからしばらく黙ってな」

「あとでな・・・切るぞ」


ラーメンを食べ終わった僕たちは代金を払って外へ出た。

当然のように一宮さんの分のラーメン代も払わされた。

頼みごとがあるほうが、なにかと立場が弱くなるもんだ。


ラーメン屋からしばらく歩くと一宮さんが言ったとおり小さな公園があった。

その公園で僕たちは今にも壊れそうなベンチに座って話した。

昼間の公園は閑散としていて幸いにも周りに話を聞かれるような人もいなかった。


「その君んちにいるレプリスっていう子は僕が勤めてるラボにいた子でしょ」

「脳殻だけ残ってるって聞いたけど・・・」


「そうなんです、なんかですね」

「本当は脳の中身は消されて破棄されるはずだったみたいですけど手違いで、

データ残したまま捨てられたみたいで・・・」


「で、僕のスマホに侵入してきて助けに来てくれっていうから・・・」

「悪いとは思ったんですけどオタクの会社に潜り込んでアプリの脳殻

を回収して来たって訳です・・・」


「それってやっぱりダメなんでしょうかね・・・会社の所有物ならレプリス

の脳殻は返さなきゃいけないんじゃないですかね?」


「持っててもいいんじゃないの、別に・・・脳殻はもうあんたのもんだよ」


「元ガイノイドだったレプリスの脳が新しい脳に入れ替わった時点で脳殻が

破棄された時点で会社のメインコンピューターから彼女の登録データは

すべて抹消されてると思うからね」


「だから彼女はもう会社のものでもないし・・・誰のものでもないと思うよ」


つづく。


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