第3話 ギルドへ

「そうだったのですか……。それならば、是非とも私の商会で、全力でサポートさせていただきます」


エリザが語った話を鵜呑みにしたオーキスは、マオとエリザのサポートをする事にした。命の恩人であり、これからの活躍が見込める冒険者。つまり、完全な善意だけではなく下心もあるというのが商人らしい。けれども、マオもエリザもその辺は全く気にしていない。


「そろそろ見えてきますぞ」


馬車の外からは、立派な城壁が見えた。その高さは、優に十メートルは越すだろう。単純に登って入り込むことは不可能だ。さらに、飛行して入り込もうにも、一定間隔ごとに見張り台と弩級が配置されているので見つかったら撃ち落される。


「あそこが王都なのね」

「はい。王都ハイドラでございます」

「結構厳重なのね?」


エリザは、王都へ入る長い列を見てうんざりした顔をする。先頭の馬車を、兵士がじっくりと調べていた。これではまだまだ王都へは入れそうにない。


「ご存じないかもしれませんが、今は魔王と勇者が戦っており、怪しい人物が入り込まないようにチェックしているという情報がありまして」

「魔王! 勇者! やっぱりいるのね!」


エリザはテンプレの予感がして喜んでいる。オーキスは、その様子を「よほど情報の無い山で修業をしていたんだなぁ」と生暖かい目で見ていた。そこでオーキスは、王都へと入るまでに時間があるので、最近の簡単な情報や、常識的な事も丁寧に教える事にした。


「ありがとう」


オーキスの馬車は問題なく通された。盗賊たちは、先に兵士たちへと引き渡された。ここまで来たら、悪あがきに逃げ出そうという盗賊も居なかった。逃げようとした瞬間、殺されるからだ。


長い間待たされはしたが、オーキスの話でそれほど苦には無からなかった。さすがは商人、人を退屈にさせないトーク術は見事なものである。


「冒険者ギルドへ着きました。それでは、後程宿の方へとお礼に伺います。それでは」

「ありがと、また後で」

「俺達も着いて行ってやろうか? その方が、変な奴らに絡まれる事も無いぞ?」

「せっかくですけど、お断りします! 絡まれたいので!」

「そ、そうか……。まあ、あんたらの実力なら大丈夫だと思うが」


ケビンは、エリザの言葉に疑問を覚えたが、実力を知っているため流す事にした。ケビンはオーキスを送り届けた後、どちらにしろクエスト終了の報告にギルドへ向かうため、何かあっても駆けつけられると思っている。


エリザとマオは、オーキスの馬車を見送った後、ギルドの扉を開けるのだった。

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