第二十六話「皆で楽しむ」
迎えた自然散策当日。私達がやって来たのは広くて自然豊かな公園だった。モルックをやるスペースは確保できそうで、ひとまず安堵する。
先生から一時解散を告げられ、私達生徒はグループごとの自由行動に移る。
読書や野鳥観察、中にはお茶会を開き出すグループまである。
私はグループの面々を引き連れ彼女達の邪魔にならないよう移動した。
「こんなところまでわざわざ移動するなんて」
「ちゃんと理由があるんですよ」
やや不機嫌な顔をして言うステイミーをティーナが宥める。
「い、いったい何をするんですか?」
ファルナ様が不安げに尋ねてきた。それに対し私は鞄から必要なものを取り出して宣言する。
「私達のグループはモルックをしようと思います!」
「モルック、ですか?」
「存じませんわね」
「わたくしもはじめて聞きました」
ヴァレッタ、ステイミー、そしてファルナ様が口々に言う。そんな彼女達に向かってティーナが喋り出した。
「私もカルロ様に教えていただくまで知らなかったんですけど、結構楽しそうなんですよぉ!私早くやってみたいです!」
「それはちょっと気になりますわね」
ティーナの意欲に釣られたらしきステイミーの横でファルナ様も数回頷く。
「カルロ様、説明をお願いできますか?」
「もちろんよ、ヴァレッタ」
私は頷くと、モルックの下準備を始めた。
スキットルを並べ、モルックとモルッカーリを手に少し離れた所へ移動する。地面にモルッカーリを置いて準備完了だ。
「まずここからあちらのスキットルに向けてこのモルックを下から投げます。こんな風に」
口で説明をしつつモルックを放り投げる。すると三本のスキットルが倒れた。
「今三本倒れました。スキットルが複数倒れた場合は倒れた本数が得点になります」
「倒れたのが一本の場合はどうなるんでしたっけ?」
ティーナが確認してくる。
「その場合はスキットルに書いてある数字がそのまま得点になります。これを交代で行って、先に50ポイントになったら勝利です」
「確か50ポイントを越えちゃったら、25ポイントからやり直しになるんでしたよね?」
「その通りです」
私はティーナの言葉を肯定し、さらに続けた。
「とりあえずやってみましょう。私は審判役になるので二組に別れてください」
「私ヴァレッタさんと組みたいです!」
真っ先にそう言ったのはティーナだった。予想と違う展開に私は唖然とする。
「どうかしました?カルロ様」
平然とした様子で聞いてきた彼女に、私は慌てて首を振った。
「いえ、なんでもありませんわ。皆さんもよろしくて?」
誰からも異論はなかった。強いて言うならほぼ初対面でペアを組むことになってしまったステイミーとファルナ様の表情が固いくらいか。
「ではステイミーさんからどうぞ」
「私からですの?まぁ、よろしいですけど」
ステイミーはモルッカーリの方へ移動する。その間に私はスキットルを並べ直した。そして伝え忘れていたことを口にする。
「あ、そうそう。ちなみにそれ、モルッカーリって名前なんですけど、それを踏み越えて投げた場合は0ポイントとなりますのでご注意を」
「わ、わかりましたわ」
ステイミーは戸惑いぎみに承知した。
「準備ができましたのでどうぞ!」
「い、行きますわよ。それっ!」
彼女の投げたモルックは綺麗な弧を描き、五本倒すことに成功する。
「五ポイントですね。ステイミーさん、筋がよろしいですこと」
「あ、あら、それは嬉しいですわね」
褒められたステイミーは満更でもなさそうな顔をした。
続いて投げるのはティーナ。
「えーいっ!」
得点は三。まずまずだ。
その次はファルナ様。
「行きます……えいっ」
彼女の投げたモルックは『10』のスキットル一本を倒した。思わず拍手する。
「すっ、すごいです!」
「そ、そうですか……?」
ファルナ様は頬を赤く染め、穏やかな笑みを浮かべた。
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